第三の門番.11
キンキンと甲高い音を立てて切っ先が唸る。
シラギクの魔力が渦を巻きながら二振りの刀へと纏わりつき、次第に回転数を上げていく。
さながらドリルのようだ。
激しく魔力が弾けて電流のようになった時、シラギクが声をあげた。
「ネコさん!今です!!」
『ニャーッ!!』
体に圧が掛かり一気に加速する。
一陣の風。または光の槍となって結界へと突き刺さった。
シラギクを中心に衝撃波が駆け抜けた。
刃先からは波紋の形をした魔力の弛みが生まれ、それにともない発生した魔力の雷に似たエネルギーがシラギクを襲った。
服を裂け、頬には赤い筋が入っても力を緩めることはしない。
それどころか、益々シラギクの魔力は増していく。
「シラギクさん!無茶は──」
「ええ、ええ!!解っています!!」
シラギクが言う。
「ですが!!このままでは道を開いてくれた彼らに顔向けが出来ません!自己満足で身勝手な理由ではありますが、ここでやらねば煌和の男の名が廃ると言うもの!!なので!!」
着物の色はいよいよ真っ白に近付き、シラギクの額には赤く丸い紋様が浮かび上がった。
「意地でも通らせていただきます!!!」
ビシリと結界に一本の筋が走る。
次の瞬間盛大な音を立てて結界が崩壊した。
「うわああーーーー!!!!」
オレ達はそのままの勢いで落下した。結界の欠片はキラキラと光ながら同じく穴へと落ちていき、突然辺り一面がはちみつ色に染まった。
壁一面すべてが黄金色で、その全てが膨大な魔力の塊だった。
光が壁に吸い込まれていく。
そうか、鏡に閉じ込められた魔法は、最終的に此処に辿り着き、溜まるのか。
幾重にも重なり、乱雑に生えた柱の間を潜り抜けていく。
すると、突然床が現れた。
「ネコ急停止!!!」
『!!?』
床に気が付いていなかったネコがオレの声ですぐさまブレーキを掛けた。尾を柱に巻き付けて、何とか間に合った。
腹に巻かれた尾が解かれ、着地を果たす。
顔をあげ──
「!!」
──言葉を失った。
「ニックさんッ!!」
シラギクの悲痛の叫び。アレックスがグリップを強く握り締めた音。絶句するアウソとユイ。キリコすら息を飲んだ。
目の前にあったのは、大量の腐った木の根に似たモノに拘束され、その一部がニックの右目から体内へと入り込んでいる姿であった。




