第二の門番.9
オレに、いや、エルファラにやられた怒りでノルベルトに猛攻。右手だけで大剣を振り回し、アラクネ・トスの攻撃を全ていなす。
ユイが隙をついて水を放つが、効果が薄い。
この蜘蛛野郎、防御固い。
観察しているだけでも炎、水、斬激に耐性がある。
『ナァ!!』
ネコの放った雷が、うまいこと糸の鎧の表面を伝い、後方へと流されたのを確認した。
雷にも耐性か。
これで氷にも耐性があったら本気で泣く。
あれ?でもエルファラの放った斎主の攻撃は効いたよな。なんでだ?
「そっちいったぞ!!気を付けろ!!」
「!」
ラビの声で反射的に示された方向を見ると、先程とは違う虫の群れが。
粒子の目で改めて見ると、虫が羽の根本から何かの粉を噴出していた。
「~~っ、撃ちたいけど、撃ったらまた大爆発…」
「お前さっきからそんなパターンだよな。とりあえずここは大人しくしておけ。シラギクお願いできるか?」
「はい!」
シラギクが前方へと駆け、一瞬上を見ると、羽虫へと手をかざして結界を発動した。
階段状に展開された結界。
それが何十枚も。
結界を張れるからこそ、その腕前が分かる。
同じ範囲に水平に複数張るのは出来る。だが、札もなしにこんなに綺麗にずらして展開するのはとても難しいものだ。
思わず感嘆の声が漏れる。
羽虫は結界を避けるように上へ上へと上昇し、突然結界が突き上がる形で羽虫達を弾き飛ばした。
爆発するかと思われたが、羽虫達は一瞬光った後、上にあった蜘蛛の巣へと突っ込んだ。
次の瞬間。
太陽が落ちたかのような閃光が辺りを包み込んだ。
「おえ、きもちわる」
その爆発によって、木の上に居た子蜘蛛全てが巻き込まれ、炎に揉まれながら雨のように落ちていった。
だが、粒子の目ではっきりと蜘蛛の姿を認識してなかったからか、少し平気だった。
もしかして、粒子の目で蜘蛛をみると、蜘蛛と認識をしない?
アラクネ・トスへと目を向ける。
すると、まるで影絵で見ているかのように、嫌悪感が減少していた。
これは、予想外だった。
「あれ?」
相変わらずアラクネ・トスは扉へと向かう通路を塞いでいる。
そんな中、姿を消した人達が三人ほど。
何処にいった?
安心して踏める部分が限られている以上、遠くへは行けないと思うんだが。
「あ!!」
アウソが驚きの声をあげた。
そちらへと目を向けると、なんと姿を消していたキリコが鉄糸を大量に抱えてアラクネ・トスへと襲い掛かっていた。