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魔宝石を手に入れた

「ニックさん、ここはどうするんですか?」


「ああ、そこはそれらと、あとこの印に左回りの順で刺していって」


「わかりました」



 ニックの指示に従い針を言われた通りに指していく。

 思った以上に集中力を消費し、刺す度に流れ込んでくる冷たいモノのせいで体が冷えてきている。現に、直に流れてくる右腕は見事に冷えきり感覚が鈍くなってきていた。


「おい、お前大丈夫か?顔色悪いぞ」


「まだ平気です。ニックさんこそ、汗酷いですよ」


「はっ、こんなデカイ魔法陣解除なんて久し振りだからな。途中で倒れられても困る、無理はすんなよ」


「……」


 猫被りがオレの事労いよった。


「ありがとうございます」


 意外だなと思いながら言われた箇所全てに針を突き刺すと、ようやくガラスが割れるような音をさせていくつかの魔法陣が消えた。ニック曰く、これで自己防御と魔力吸収の魔法陣が機能しなくなったらしい。それと連動していくつかの魔法陣が色を薄くし機能停止したのだが、こういう魔法陣は魔力の供給が途絶えても時間がたつと復活するものがあるらしいので完全に壊した方がいいと言っていた。


 サズとノルベルトは魔法陣解除の手伝いどころか近付くことすら出来ないため通路の離れたところからこちらを見守りつつ、警戒をしてくれている。


 しかし今のところ敵が近くにいない為か、それとも来た道が崩れないかが心配なのかしきりに後ろの方を気にしていた。


(生き埋めにされてたらどうやって脱出するんだろうな)


 その時はその時なんだが、不安ではある。


「ウニャーウ」


 猫が飽きたのか肩から降り、部屋の端に行くと毛繕いを始めた。ついでに欠伸。猫はこんな状況でも呑気なもんだ。


「ふぅ、あとは座標固定だけだ」


「よーし!さっさと破壊してさっさと地上に戻りましょう!」


「どうしたお前テンションおかしいぞ」


「多分徹夜明けとおんなじやつですよ」


 もしくはテスト前のハイテンション。

 ぶっちゃけもう右腕が冷たすぎて擦っても感覚が鈍いので、諦めて左手に針を持ち変えてぶっ刺す。


 さすがに12個目ともなればニックの助言なしでもスムーズに作業が進む。

 ニックもニックで問題なしと判断したのかチラリとこちらを見るだけで小声で魔法陣解除の詠唱をしている。


 部屋の大部分を占める大きさなので時間はかかったが、ようやく最後の魔法陣にヒビが入り砕けた。


 その途端光が消え、辺りが暗闇に包まれるがすぐさまニックが灯りをつけてくれた。


「あー!疲れた!なんか目が痛い…」


 眼精疲労かな。眉間を揉むと血が通う感覚がした。ついでに腰を捻ると折れたんじゃないかって心配するほど骨が鳴る。


「俺ももうそろそろヤバいな。足にキてる」


「ほんとだ。生まれたての鹿みたいですね」


「笑うんじゃねぇ、ブッ飛ばすぞ」


 はたして本当にブッ飛ばせるのか。

 今だって杖に全体重乗せているのはバレバレなのだ。


「ほら支えてやる。腕どっちか貸せ」


 ノルベルトがやって来てニックの腕を肩に回して支えていた。しかし身長差が大分あるので支えられているというよりも吊るされているようにも見える。


(これでサズも参加したら、有名な連行される宇宙人が完成)


 そんな事を思っているとサズがこちらにやって来た。魔法陣が無くなったため、だいぶ顔色が良くなっている。


「お前は歩けるか?」


「軽く痺れてますが問題ないです」


 こちらは長い時間座ってたせいで痺れているだけなので、その場で軽く足踏みしてみるが普通に歩けそうだ。


「ニャー」


「おかえり」


 毛繕いを終えた猫を回収。なんだが…、前足が濡れて冷たい気がするが、どんだけ足を舐め尽くしたんだろうか。

 気になるので裾で拭こうとしたら猫パンチされた。


「ほら、これやる」


「なんすか?」


「魔宝石だ」


 手渡された袋の中には、拳大程の魔宝石が5個も入っていた。


「いいんですか、こんなに。っていうか、持っていっていいんですか?」


「ここに置いても魔物が沸いてくるだけだし、かといって魔法が使えない奴が持っていても意味はない。だいぶ解除に魔力使ったからな、後でそれで補給すれば楽になるはずだ」


「ありがとうございます」


 試しに一つ掴んで取り出すと、温かいものが流れ込んできた。あ、良いわこれ。元気出る。

 なんだなんだと袋を覗き込んできた猫が臭いを嗅ぎ始め、ペロリと舐めた。


「食べ物じゃねーぞー」


 案の定美味しくなかったらしく、しきりに変な顔してペロペロ舌を出し入れしていた。

 言わんこっちゃない。


「お、俺にもくれんのか」


「魔力の蓄積率は低いですが、形が良いのを選びましたので高く売れるはずです」


「おお!グルァシアス!いや、センキ・ユゥな!」


「ヨウ・ウォウカン。では上がりましょうか」


「なぁ、クラウス、俺のは?」


「ねぇよ、ばーか」


 サズとニックの会話を聞きながら、そう言えば前スイが魔宝石の原石が高く売れるって話をしていたと思い出した。


(……、二個残して後は売るか)

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