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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第七章 力を持つモノ
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総力戦、開始.18

なんとか書けた!!

でも2日更新停止!

全力を出す。

拳を濁り締め、今持てる限りの力を集中させる。


視界は白に染まり上がっている。

揺らめく光は全て炎だ。もはや炎なのか?

何処かの宗教では、神は白い光でもってあの世へと(いざな)うという。


白い太陽の下でゆっくり羽ばたきながら浮遊するサラドラの色が赤からオレンジ、黄色、青とクルクル変わっている。なるほど、何も知らず、これだけを見れば、確かに天の使いだと思うだろう。


ヂリヂリとした熱が、表皮表面に張り巡らされている冷気の層を破らんと揺らしていた。正直、サラドラのこの魔法に敵うのかと不安ではあったが、耳元でブリーギットの温かい気配で安堵する。


余計なことは考えない。

今は、ただ、全力で潰すことを考える。


心が冷える。透き通る。

だけど奥の方で燻るものを確実に感じとり、それを解放していく。


少しずつ。少しずつ。


「カリアッハ、だめよ。それまで出しては貴女もただでは済まない」


ブリーギットが止めるが。


「分かっている。どうなるかも、だけど、これまで使わないと確実に競り勝てないのも知ってる」


カリアは理解をしていた。


“今のままでは、力は拮抗し、負ける可能性もある”と。


「これが何なのかも理解してるし、自分がどういう無茶をしようとしているのかも理解してる」


そうだ。

これは、ブリーギットでさえ無茶と口を出すものだ。


下ろした(概念)は、本来なら形のないものだ。何故なら、物が下に落ちる(重力)という概念。水が熱に温められて(蒸発)煙になるという概念。ブリーギット(夏と再生の象徴)という概念。カリアッハ(冬と破壊の象徴)という概念だから。


その概念のみを身に宿し、魔力自体の性質をそういうものへと変貌させる。


だが、下ろした(概念)はカリアの魔力によって形を得、意識を持った。

本物ではない。偽物ではないが、所詮は(概念)の欠片。

できることは限られている。


越えることも、成長すらも出来ない。


出来るとするならば、それは人間の“概念の解釈が変わるとき”くらいだろう。


ゆえに、他の概念に干渉することもできず、侵略されることもない。







だが、それは(概念)だけの話である。









「あああああああああ!!!!!」










腕の封印が解かれる。

バキンと音を立てて楔が千切れ、消えた。

途端に腕から押さえ込んでいた呪いが駆け上がってきた。


百の虫に咬み千切られる痛みを、千の針に串刺しにされる痛みを耐え、カリアはその呪いを 飲み込んだ。



腕から炎が吹き出す。



呪いは、火炎に破壊と風化。そして死だ。

破壊と死の象徴としてのカリアッハ、重なる部分を使い無理やり繋ぎ合わせた。



「ふーーーっ!!」



細胞が焼かれて壊れていく音が聞こえる気がする。

人の身では持たないこの荒業の為に作られたようなカリアの体でも、調和できる時間は長くはない。


ブリーギットが静かに驚愕している気配を感じる。




カリアは、人間であった。




感情に左右され、人を憎み、哀れみ、慈しみ、許す事の出来た。

とても憐れで、不完全で、不安定で、揺れ動き、とても弱く、愚かな決断をする。

だけども、それ以上にもがき、耐え、乗り越えようとする力を持っていた。



カリアは、冬に存在する炎を取り込んだ。


記憶にある冬の炎は、焚き火だった。

寒さに耐えるために師匠に作ってもらい、寄り添って熱を分けあった。

だが同時に大きな山火事も見た。

何が原因だったのか。

不始末か、それとも雷か、精霊の悪戯による失敗か。


空気が乾燥した国での山火事は幾日も続いて燃え盛り、全てを地に還した。


そして、自分の手で消した家族。


館が、館だったものが燃えていた。

そうだ。あれは自分の手で燃やしたのだ。



「ブリーギット」


「…わかった。最後まで一緒にいる」



暖かい気配が背中側から体内に入り込み、溶ける。

ブリーギットが苦しむ気配。カリアッハと融合するということは、ブリーギットも同じく呪いを受けるということ。


だが、ブリーギットが融合したことによって腕の暴れる炎が更に勢いを増した。


ブリーギットは夏の女神。そして、熱と炎にも縁がある鍛治の女神あった。

杖を持ち直して構える。


杖が触れている所から銀色へと変わっていった。


作り変わっていく。


杖は斧であり、大鎌であり、ハンマーだった。しかし、それでいてそれは、杖以外の何者でもなかった。

赤い筋が走る。緑の曲線が走る。青の螺旋が走る。


恐らくこの武器は、これで砕けるだろう。

もう、杖にも戻らず、斧にも大鎌にもハンマーにも成れない。


己の力に耐えられず自壊する事を予感した。



それは勿論己の身にも言えることだが。












白い太陽はもう空を覆い尽くすほどに巨大化していた。



サラドラは支えるのもギリギリな様子。


来るな。








『お前との喧嘩はなかなか楽しかったよ。でも、最後に勝つのはサラドラだ。ばいばい、変な人間』











サラドラが白い太陽を落とした。








迫る白い光に、カリアは溜め込んでいた力を解放した。


カリアを中心に世界が色付く。

踏みしめ、蹴ったところからは草が芽吹き、木が伸びる。

武器を持って走る度に前方に風が巻き起こり、雪の結晶が舞う。

高速で繰り広げられる生と死。風を受けて腕の炎が広がり、武器に巻き付く。


視界にとらえるのはサラドラだ。


空気が振動する。

音が悲鳴をあげている。


死が落ちてくる。


だが、カリアは止まらない。

サラドラはその場から動けず、一歩一歩近付いてくるカリアから目を逸らせない。




















白い太陽が地面に接触し、弾けた。

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