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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第七章 力を持つモノ
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総力戦、開始.8

薄暗いトンネル。どこまでも続く暗闇。

空気が薄い。こんな閉鎖的な空間で全力で走っているのだ。苦しくないわけない。


それでも、長らく使ってないからか空気がとても淀んでいる。


吸っても吸っても、足りない。


「大丈夫ですか?デアさん」


私達のパーティー副リーダーのシラギクが心配そうにこちらを伺う。シラギクも小さい体なのによく頑張っていると思う。現にシラギクは、現在進行形で凍結属の結界魔法を発動してこの通路を守っているのだ。


負けてられない。こんなところでへたれていられない。


「大丈夫!役目はきちんと果たすわよ!」


小さな揺れが足元から感じる。

地震とは違う。大きなモノが通過していくような揺れかただった。


アーリャが、厭そうに腕を擦った。

何かが見えているのか。


光彩魔法を極めたものは、光の波というものを見ることができようになるらしい。そもそも光に波があるなんて全く理解が及ばないけど、その波を利用して見えないものを視認出来るんだそうだ。


「でっかいミミズみたいですね。きもちわるい。さっさと行きましょう」


ワームのことだろうか?

確かにここの近くにはワームの巣があったはずだけど、其処から此処まではだいぶ距離がある。はぐれワーム?


「……揚げると美味しいんだよネ。あれ……」


ぼそりとビキンがとんでもないことを言う。

食べるの?ミミズを?


「…、あ!」


地上にいるシェルムから連絡が来た。

脳内に地上の様子が映し出された。


初めの丘から見える光景によると、なんと地面が盛り上がり、巨大な土の蛇女姿が現れていた。シェルムの解説によると、あれは召喚された勇者の一人らしい。


さっきの生き物が動くような震動はこれか。


「どうした?シェルムからなんか来た?」


「うん。地上に土属性の魔法を操る勇者が現れたって。さっきの揺れの正体かな?おっきな蛇みたいな姿している」


ニックから渡された魔法具と、アレックスからの神具と呼ばれるらしい遺跡から発掘した遺物を組み合わせることによって、脳内に映像と音声を渡すことができる。

ニックはそれを高度魔法によって出来るらしいが、生憎魔術師ではないのでこういった道具を使ってでしか出来ないのが悔しいが、それによって離れた所でも連携が取れる。


でもその為に、中継役で一人戦闘不能状態で状況を監視していないといけないのが痛いけど。


シェルムが選ばれた理由は、感情的にならず、淡々と起きている出来事を事細かに教えてくれるからだ。後は、中継中に襲われても一人でなんとか出来るから。

うん。流石はうちのパーティーの柱。


「さっきの揺れの正体ですかね?戻ってこられたら、いくらシラギクさんの結界があったとしても、崩れるかもしれませんね」


スイが顎に手を宛ながら言えば、シラギクが困った顔。


「私の結界、耐久時間が脆弱ですからね…」


その他もろもろは優秀なのだが、そればかりはどうしようもない。


「ではさっさと結界近くまで行きましょう。そうすれば負担も減るんじゃないですか?」


「そうですね」


結界は、というか全ての魔法に関して言えることであるけれど、範囲が狭ければ狭いほど耐久性や効果が上がるという。それは人に掛けるものにも言える事で、人数が増えれば増えるほど効果が薄まり、失敗率も上がっていく。


要は、五人用のコーヒーで三人分淹れると完璧なのに、七人淹れると不味いみたいな感じ。ん?ちょっと違うかな?


戦闘を走っていたアーリャが突然止まり、ストップと合図を出す。


しばらくキョロキョロと辺りを見回して、溜め息を吐いた。


「あーあ。やっぱりですね」


「結界、やはり地中にも伸びてましたね」


シラギクが残念そうに言う。

目の前に結界があるようなのだが、透明で何も見えない。


「地中だから手が抜かれていますけど、大人数で入ったら感知されそうですね。残念ですけど、ここでまた二手に分かれましょう。城の案内でスイを借りていきますね。あと、デア」


「?」


私の名前が出たことに驚いた。


「結界が剥がれるまで此処で中継役お願いして良いですか?」


「良いですけど、魔道具…とかは…?」


「ふふ」


アーリャが近付き、耳と頭を覆う魔道具に手を翳す。すると、一瞬光を灯し、脳内に己の姿が流れた。


「私、得意なのは光彩魔法ですけど、他のもなかなかのレベルなんですよ」


参りましたと、言うべきか。


「では、行ってきますね」

「気を付けて」


シラギクが結界介入で解れを大きくしたところからアーリャとスイが入っていく。すると、二人の姿が薄い膜越しに見ているかのようにボヤけ、遠ざかると消えてしまった。


「さて」


シラギクが壁に背中を預け、座り込んだ。両ひざを抱え込み、顔を埋める。


「私は少し結界に集中します。私の守り、お願い…しま……す……」


すやすやと寝息が聞こえる。

こうすると、シラギクの結界の精度が跳ね上がる。何度か揺れていた廊下も、シラギクが眠ると共に揺れが無くなった。


「デアも座ってて、何かあってもビキンと何とかするから」


「ありがとう」


シラギクの隣に腰掛け、デアも目をつぶる。

脳裏に流れる三つの映像を監視しながら、ニックの方でちらりと移った空に滲み出てきた赤黒い点の事を伝えた。




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