総力戦、開始.5
明日の投稿怪しいです
明後日の投稿になるかも
腕だけ吹っ飛ばした位じゃ再生される。上顎ごと破壊した目はまだ再生されてない。
試すチャンスだ。
「ふぅぅ……」
ビキビキと剣から音が鳴る。吐く息が白く、剣から冷気が漂ってくる。練習はしていたが、この剣で本番は初めてだ。柄は熱いのに、刃の方から冷気がやって来るのは不思議な感じだ。
いけるか?
いや、いかねばならない!!
「しっ!!!」
地面を踏み締め、目標へと向けて剣を振った。
剣先から飛ばされた斬激は、魔力に混じって氷の粒が光を反射しながら蛇女の腕を切り飛ばし、冷気によって欠片が凍り付いた。
「うぉおお……、なにあれコッワ」
ただ、予想外だったのは。
ユイとナリータ共同魔法であるエケネイスが、オレの魔法で強化されたのか、蛇女の腕に含まれていた僅かな水分すらも凍り付かせ、まるで無数の棘に貫かれたようになった。範囲は切り飛ばした腕と、エケネイスが侵入しようとしていた胸の半分程まで。
ギシギシと嫌な音を立てながら、胴体に無数のヒビを入れている。
「危ない!!!」
高速で何かが飛んでくる音が聞こえた。振り返り、視界に飛び込んできたのは、火の玉。
防御を──
──ドォゴオオオオオオンンンンッ!!!!
視界を遮る壁が突如として出現し、火の玉は壁にぶつかって破裂。熱風が襲う。
氷は!?
振り替えるが、遠くに冷凍されて転がった腕も、拘束完了した胴体も無事だった。それにユイとナリータが今だとばかりに次なるエケネイスを生成し、胴体に食い付かせていた。
『ライハ無事!?』
「ネコ!」
限界まで広げた尻尾を盾にして、攻撃を防いだのか。また強くなってるな。
『あいつら、来たよ』
「!」
──ザワリ…
冷気を放っていた剣が燃えるように熱くなっていく。ざわざわとしたものが体を駆け巡る。この気配、忘れるものか。
視線の先にいるのは、かつて仲間を焼き付くした悪魔。大事な奴を殺し尽くした悪魔。
何度も何度も甦り、夢の中でオレを苦しめた記憶が、再びオレの中で鮮明に再生され、心を憎悪に染め尽くす。その間に繰り返される言葉。
──ぶっ殺してやる。
剣に怒りを憎しみを込めていけば、小さくビイイイと音を立てながら細かく震動する。憎い憎い憎い、殺す殺す殺す殺す。だが、その感情は瞬く間に剣へと流れて力を増大させる。
地面がひび割れ、盛り上がる。
「ネコ、いくぞ」
『うん』
ネコが肩に乗り、踵に魔方陣を二つの配置した。あの二人はここで仕留める。
向かってくる悪魔の攻撃を、銃弾によって相殺している。
属性は“火焔”。このジャスティスによって打ち出される炎の塊は、城壁に大きなヒビを入れるほども威力がある。なのに、それを相殺するなんて、なんて魔法弾なんだ。
それに。
「ずいぶん余裕そうなんだぞ」
炎の翼の者に、運ばれている奴はまだ攻撃をしてこない。だが、この二人組の話ならライハから聞いた。サラドラとフォルテ。ラビを殺った奴だ。
許せない。
後ろではまだ蛇の対応に追われている。
ここで出来るだけ食い止めないと。
だが。
「!?」
黒い棒状のものが飛んできた。
火の玉ではない。なんだあれ!?
『当たっちゃダメ!!』
「!!」
ネコの声で、棒状のものを弾こうと撃ったが、信じられないことに弾が呑み込まれ、そのまま突っ込んできた。
必死に飛び退く。間一髪で避けることに成功した棒状の物は地面に突き刺さり、勢い余って回転しつつ後方へと跳ねていく。
地面に叩き付けられる体に、土塊が降り注ぐ。
その視界の向こう側に、相殺漏れした火の玉が風を切って、皆の元へと飛んでいく。
着弾地点を見て、叫んだ。
「危ない!!!」
ライハが振り返り様に防御しようとするが、間に合わない。
だが、一瞬のうちに現れたネコが尻尾を広げ炎の玉を防御した。
鳴り響く轟音に、ライハの後ろにいたニック達も驚きに目を開いていた。その中で、レーニォだけがすぐさま立ち上がり、何故か切り飛ばされた蛇女の腕へと走っていく。
ビキビキと、地面にヒビが入っていく。なんだと見れば、ライハから恐ろしい程の殺意と魔力が漏れ出していた。次の瞬間、爆音と共にライハの姿が消え、俺の前に現れた。
気付かなかった。
すぐそばまで魔物が来ていて、武器を振り上げていたなんて。
それをライハは、既に回転蹴りの姿勢をとっており。脚に纏わせた蹴りにて、魔物をサラドラの方へと力一杯蹴り飛ばした。
鳴ってはならない音を立てながら魔物は飛んでいく。
次いで、またしてもライハの足元が輝くと、爆音を上げて空高くへと舞い上がっていた。
見えなかった……。
「痛いっ!」
援護をと、立ち上がろうとした時、足に痛みが走って転倒した。見てみれば、ズボンから大量の血が滲んでいる。さっきの攻撃を避けたときに、弾かれてきた何かで深く斬ったのか。
きちんと怪我をするのも久し振りで、注意が行き届かなかった。
「怪我したのか!?看せろ!!」
ニックが走って来ている。
頭上からけたたましい音と光が鳴り響く。
ライハはあの頃よりも禍々しい気配を纏って剣を奮っていた。