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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第七章 力を持つモノ
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総力戦、開始.4

砂埃が舞う。流石にヤバイかと思ったが、思ったよりも攻撃が大雑把で助かった。


周りの皆もちゃんと避けていた。流石に戦闘要因ではないカミーユは転倒して姿が見えていたが、ネコが尻尾で掴まえて攻撃から守ってくれていた。


「───」


砂埃で何も見えないが、遥か後方で声が聞こえる。

なんか聞いたことあるような声だ。誰だったか。


地面が揺れる。

この揺れは知ってる。軍が突撃してくるときの地鳴りだ。


コノンが叫び声を上げ、氷の砕ける音が激しいものとなってきた。


「あぁああああーーーッッ!!!!』


バキバキと音を立てて、ナリータの支配下に置かれた氷の化け物。エケネイスの胴体が引きちぎられていく。


もう一方の腕も再生が完了し、エケネイスの胴体を掴んで握り潰そうとしているが、ユイとナリータがそうはさせるかと更に魔力を送り込んで深く氷を食い込ませている。

事前に水を吸い込んだのが仇になった。


目的は動きを封じること。体に網目状に氷が食い込むことによって、その役割は十分に発揮されていた。


「キリコォ!!!!」


すぐ近くでカリアが急停止しつつ方向転換し、手を組んで、人を飛ばす姿勢に移った。

カリアの視線の先には走ってくるキリコとノルベルト。

良く見てみれば、周りを囲っていた筈の魔物の群れは一匹残らず殲滅されていた。少し見なかっただけなのに、なんという…。

向こうの方ではまだ戦っている音がするが、砂埃で分からないが、軍があちら側の魔物と戦ってくれているのか。


「ふっ」


とん、軽く跳んでキリコの足がカリアの組んだ掌に納まった。

キリコがこちらを向く。


「道作ったげるから、最後頼んだわよ」


口元に笑みを浮かべたキリコ。上空を向き、膝を落とす。


次の瞬間。


「せやあああ!!!」


カリアが全力でキリコを跳ね上げた。

人が出してはならない音を立てて、人が打ち上げられた。カリアの馬鹿力と、キリコの半竜人特有の瞬発力が合わさった事によって、キリコがまるでペットボトルロケットのように飛んでいく。


挿絵(By みてみん)


オレもキリコを打ち上げた事はあるが、ああはならなかったな。

恐ろしい。


「頼んます!!」


「?」


そして遅れて走ってきたノルベルトが自らの大剣をカリアに手渡していた。なんだと思ってると、カリアはその大剣もキリコと同じく投げ飛ばした。


上空に投げ飛ばされたキリコは、あっという間に蛇女の頭近くまでやって来て、それに気付いたコノンが蛇女の髪を地面から引き抜き攻撃を仕掛ける。だが、キリコはそれをスルスルと避け、更に足掛けにしてさらに頭へと近付くと、遅れて飛ばされてきた大剣の柄を捕らえた。


「遅いよ、ノロマ」


くるんと上空で一回転すると、大剣を蛇女の閉じられた目へと振るった。


「キャアアア!!!!』


ノルベルトの大剣の切っ先が左目へと届き、深く抉った。コノンが顔を押さえて悲鳴を上げる。

その途端に沸き上がる殺気。


「!! キリコさん!!」


バチンッ。

蛇の右目が開かれた。


「あ、ッ」


キリコが視線の直撃を受けた。

雲の巣に引っ掛かった虫のようにキリコの体が硬直する。

何故だ。目が開かれるまでもう少し掛かる筈なのに。


「死ね!悪魔!!』


エケネイスを握り潰そうとしていた手を離し、キリコを叩き落とそうと動かした。キリコはそれを確認。体は呪いを直に受けた。だが、キリコはそれでも動いた。

出ぬ声を上げ、大剣を開かれた右目へと突き刺したのだ。

コノンが再び絶叫を上げた。


それでも迫る腕は止まらない。


「ショット!!!」


光が飛んできて、当たる直前で蛇女の腕が弾き上げられた。腕はキリコの近くを通過し、蛇女の体勢さえも軽く崩す。

アレックスだ。


「撃て!!」


カリアの叱咤に理解した。そうか、道ってこれか。

目に刺さる金属、これならば避けられない。

雷の矢を放った。


雷の矢は瞳に突き刺さったノルベルトの大剣へと向けて飛んでいく。

被弾した瞬間、大剣の刺さった目を中心に円形状に顔が砕け散った。


落ちてくるキリコを、駆けてきたアウソが受け止める。


「───っ」


受け止められたキリコは喉元を押さえて、口を必死に開いていた。

呪いが効いていないわけではない。しかもユイやアレックスとは違い直撃だ。

呼吸が出来ておらず、いくら口を開けても横隔膜自体が機能していないようだった。


「ニック!!」


「今行くよ!!」


慌ててニックに声を掛けたのに何故かアレックスから返答。

韋駄天装備のアレックスにニックが抱えられて来ていた。

なるほど、確かにそっちのが早いもんな。


放り投げられるようにしてニックを渡された。ニックはすぐさまキリコの元へ向かうが、アレックスは即Uターン。


「向こうから影がいくつか飛んできてる!!多分敵の増援だよ!!」


アレックスの示す方向に視線を向ければ影が二つ。身に覚えのある気配に背筋がざわついた。それに釣られ、剣が熱を持ち始める。


「ヤバい、心臓まで止まり掛けてる。一旦下ろせ!!」


「!?」


なんだと。

振り替える。キリコが地面に下ろされ、ニックが素早く詠唱を唱る。


「偽りの衣を脱ぎ捨て、真の姿を取り戻せ!《リヴァイブ》!!」


胸に手を押し付け、魔力を注入するやキリコの体が跳ね、黒い光の塊が弾き出されるようにしてキリコの体から離れた。ようやく酸素を吸い込むことができたキリコが激しく咳き込む。


「ライハ!!こっちは良いから、アイツらに集中しろ!!」


ニックに怒られ、そうだと再びコノンに攻撃を仕掛けようとした瞬間、何かが折れる音が。


「外された!!!避けろお前ら!!」

「ノルベルト避けてえ!!!」


凄まじい音がしたかと思えば、エケネイスを引きちぎった腕が此方に向かって迫ってきてた。


どうする?魔力で弾けば向こう側にいるユイ達に当たる。

切断しても威力はそのままで突っ込んで来るだろう。


落下してきた大剣を受け止めたノルベルトが前へと出る。


「こっちは任せろ!!上は任せた!!」


魔力が溢れ出す。気合いの声を上げ、ノルベルトが魔法を纏わせながら大剣を迫る腕へと振り上げた。そしてノルベルトに言われた通り上を見ると、アレックスが弾き上げた筈の腕が振り下ろされていた。


なるほど。


剣を構え、迎え打とうとした瞬間、ノルベルトが弾き上げたらしい腕が振り下ろされていた腕の近くへと迫っていた。


すぐ側で、恐らくノルベルトだろう、おろろろと吐いてる音が聞こえる。素のままじゃ力が足りなかったのだろう。

無茶しやがって。


魔力を練り上げる。


せっかくだ。二つ揃って片付けてやる。




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