決戦前.12
明日クッソ忙しくて投稿できないので
今投稿!!!
近くの森に移動する。
「これから貴方を攻撃します。方法は明かしませんが、私が納得するまで魔法を防ぎ続けてください。まぁ、多分難しいですよ?何せ、私は遣いの中でも古株で優秀なツーの名を持ってますから。いくら 拒絶、四方に戸を立て目も耳も強く塞ぎ、身も心も固く閉ざし、外敵から姿を隠せ《 外壁 》。逃げられます?」
「!!!?」
流れるように混ぜられた詠唱に一瞬ビビったが、すぐさまその場から飛び退くと、一瞬遅れて今までいた場所に箱形の結界が構築された。
危ない。
こういう使われ方が一番危ない。
「まぁ、避けられますよね。これで捕まったら流石に呆れますけど。どんどんいきます。言っておきますけど詠唱だけではありませんよ」
言っている間にアーリャの姿がぶれ、突然ドラゴンになって襲い掛かってくる。
それをすぐさま粒子の目に切り替え意識から消去して対応。
目眩ましだ。惑わされるな。
『ネコが目を担当するよ!!ライハは魔方陣をお願い!!』
「分かった!!」
魔力を繋げて、粒子の目をネコに変わって貰った瞬間、半透明の風の矢が複数飛んできていた。
目の前でライハが次々に繰り出される魔法を防いでいた。
そのあまりにも高度な戦いにユイは驚いた。
この一年近く、ユイは戦い通しだった。
魔法を使っての戦いもあったが、ライハのような領域までは達していなかった。
いや、むしろ届かないだろう。
どんな生活をしていれば、あそこまで強くなれるのか。
現に、至近距離で展開された魔方陣を、なんとライハは発動する前に魔方陣自体を解除するというとんでもない技術を披露した。
あんなの、出来るものなのか?
そもそも、やろうとも思ったことも無い。
食い入るように見ていれば、アンノーンが笑う。
「凄いよな、あいつ。神から訊いたんだが、此処に来る前はちょっと足の速いだけが取り柄の一般人だったんだと」
え。と、ユイはアンノーンを見る。
「喧嘩もしたことない、そんな一般人が、たまたま呪いの装備品を手に入れただけで巻き込まれた。ある意味不運な奴だよ」
「……どうりで」
剣の扱い方も、立ち回りも、素人じみていたはずだ。
本番に強い方だったからかシンゴ相手に戦えたが、下手をすればアレで重傷を負ってもおかしくは無かったのだ。
「勇者選抜の条件は、居なくなっても構わない人物。もしくは逃げたい、消えたいと思っている人物だと聞いた。お前は?」
「俺は、次の日に特攻隊行きだったので前者でしょうね。死んでも構わない人物と思われてたんじゃないですか?」
殺される覚悟で意見したから、悔いはなかったが。
俺がいなくなったことで後輩や同僚がどうなったのかは気になっているが。確かめようもない。
そもそも帰れるのかも分からない。
「あいつはそのどちらでも無いんだと。たまたま呪いの装備品の魔力の波長が合ってしまったから、なんて、笑えてくるね。そもそもなんでそんな所にあるのかって話だが。所で」
アンノーンがこちらを見る。
「疑問に思ったことはないか?」
「何をです?」
意味深な笑顔が怖い。
「なぜ、神様なのに、直接助けてくれないのか?って」
首を傾ける。
意味がわからなかった。
「おや?お前さんもしかして世界にそーいうの無かった系?」
「……統べる者の子孫はいましたが、そんなのは要の役割だけです。手など差し伸べてくれる筈もない」
見守ってこそくれるだろうが、基本は己の努力でしか何とかならない。
「………、ほう、そんな世界もあるのか。なるほど」
そんな返答にアンノーンは面白がっていた。
「じゃあ、神にすがる世界では、人は何故こんなにも辛いのに救ってくださらないのかと思ってしまうんだ。現に、神は居り、こうして俺達みたいなのもいる。手も差し伸べてくれる。初代勇者は神がやったから」
「そうなのですか!!!?」
「報連相が脆弱だな。後で何を知らないのか確認しないと」
衝撃的な事実に驚く。
それと同時にようやく疑問が浮かんだ。
なるほど。
昔は神が助けてくれたのに、何故今はしてくれないのか。
そういうことか。
「意味がわかりました」
「わかったか。実は、理由があってな。これはあっちの勇者にもまだ言ってない事なんだが、神は魔族達に人質を取られてしまっているんだ」
神なのに?
「突っ込みたい気持ちもわかるが、そうさなぁ。それだけ悪魔も必死だったってことだ。結果、拗れに拗れ、神は裏方からしか支援ができず、魔族は人質の力で好き勝手できている」
アンノーンの溜め息。
「一応、観測者はその人質奪還を任されているんだが。能力剥奪中のポンコツ観測者だからな。一つお前さんに頼みたいことがあるんだが、いいか?」
真剣な声音。
いつもふざけているのかと思うほどのユルユルと話すアンノーンだが、今は違っていた。
「俺に出来ることならば」
ありがとな。
そう言って、アンノーンはユイへと頼みを託すべく口を開いた。
呼吸が荒い。
時間が長い。
ゼーハーゼーハーと、地味に削れていく魔力に疲弊しながらも集中力を維持していれば、限界だったらしいアーリャが髪を掻き上げた。肌が汗ばんでる。
「分かりました。……ちっ、ここまで完璧に防がれるとは思ってませんでしたけど。合格です。認めましょう」
「!」
周りにパァァー!と効果音が付きそうなくらいに嬉しかった。
「やったぜ!!」
『やったー!!やったー!!』
ネコの手を取り回るほど嬉しい。
これで計画が遂行できる!!
「たーだーし!」
「?」
途中でアーリャの声が割り込んだ。
「私一人では流石に辛いですから、途中で弟子に手伝ってもらいます。救出の人数が増えますけど、大丈夫ですよね?」
「任せてください!!」
作戦遂行のためなら一人増えようが二人増えようが、成功出来るのならば大歓迎だ。
「じゃ、細かい段取り話し合いますよ。一旦街に戻りましょう。アンノーン!!帰りますよ!!」
こうして、協力者が増え、ようやく作戦成功の要を手に入れたのだった。