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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第七章 力を持つモノ
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決戦前.9

翌日、灰馬連れて言われたところに行く。


別の宿に泊まったらしいアンノーン達はまだいない。

目的の人物の居るところは遠いらしく、連れてこいと言われた。


『……眠い』


「分かる」


あの後、これからの予定されている計画をざっくりと教えられたが、教えられたのはあくまで予定なので、もしかしたら前後、もしくは敵の出方によっては変わるかもしれないと言われた。


「彼らはわざわざ端から出向いてくれるからねー。文句を言える立場ではないし、お願いしてる側って言うか、向こうも頑張ってくれるわけだし」


と、いう感じ。


地図で見ても、大陸の端から来てくれるんだ。

来るだけでも大変なのに、その後に待ってるのは生死を掛けた戦いなのだ。


「にしても、作戦がざっくりし過ぎだと思うんだよ。いや、カリアさんの作戦も同じようなもんだけど、文章にしたら箇条書きできるよこれ」


『かじょーがき?』


「後で教えるよ」


ホントにそれくらい。

ただ、それが成功するかどうかは、これから会いに行く人物次第らしい。責任重大すぎて胃が痛くなりそう。


「お待たせー」


アンノーンの声。

振り返ると、乗馬したアンノーンと、何故か荷車に乗せられたユイ。

しかもどことなく乗り慣れてる感半端ない。


『ライハ、あの子見たこと無い?』


「どの子?」


『あの子』


ネコが尻尾で駿馬を指す。

何の変哲もない茶毛の駿馬だが、とまで思って、理解した。

見たことある。あいつ、前キリコが乗ってた駿馬だ。


茶毛の駿馬なんて山ほどいるじゃないかと思われるだろう。違うのだ。キリコの駿馬は、一見茶色一色だが、首もとの色が薄いところがあって、角度によってハートに見えるのだ。


そんな駿馬がたくさんいるか?いないだろう?


駿馬もこちらに気が付いて、少し尻尾を振った。

覚えてたのか。

てか、まさかアンノーンの元に渡っていたとは、世界は狭いな。


「どした?」


「いえ。あの、スイさんは?」


一緒ではないのか。


「スイはこの国の隠し通路をみんなに教えてる。せっかくだし、使えそうな情報はどんどん教えていかなきゃ」


「確かに」


緊急時に使うものを隠してても意味無いものな。


「さて、行きますかね。途中魔法使うけど、合図はするから冷静にね」


アンノーンが駿馬を歩かせ始める。その少し後ろに付けて着いていく。


荷台で寛ぐユイ。その傍らにはパンパンになった袋。中身は見えないが何だろうか。


「こんな姿で悪いね、本当は俺も駿馬が良いんだが、こっちのが慣れてしまって」


「正直、ちょっと楽しそうで羨ましいです」


子供の頃田舎に遊びにいったときに、荷車に乗せられて水を汲みに行ってたのを思い出す。あれは楽しかった。

そういうと、灰馬が小さく唸りだした。


「……でも乗馬のがたのしいなぁー」


唸りが止む。


嫉妬されたらしい。

それを見ていたユイが笑う。


『ネコもちょっと行ってみたい』


ひょいとジャンプして荷車に移ったネコ。

しばらく堪能したあと、戻ってきた。


「どうだった?」


『小さいモードだと酔うかも』


「なるほど」


ごとごとと、街が小さくなっていったところで、ようやくアンノーンが「そろそろだぞ」と合図を送ってきた。


目の前にあるのはただの木だ。それが、アンノーンが指を鳴らすとグニャリと歪んで、木の中にポッカリと穴が開き、景色が見えた。だが、周りの景色と違う。


「一瞬気持ち悪いけど我慢な」


木の中に一歩足を踏み入れた瞬間、微かな浮遊感が襲う。ついで、突然重力が戻り、景色が切り替わった。


「空気が」


森の中だ。

前方に見えるのは頑丈な壁。そこを沿いながら、門へと近付いていって、思わず体が強張った。

見覚えがある。


此処が何処かも知っている。


体が覚えている。


脳裏を掠めるのは、敵意をもってオレを討伐しようと向かってくる人達。ジョウジョの巧妙な罠に嵌まって、嫌と言うほどに味わった絶望。聖水の痛み、死の恐怖。


「おい、大丈夫か?」


「!」


ユイの声で我に返った。

落ち着け、もう終わった事だ。


今は角もない。


心臓が早鐘を打ってる。

ネコも身を強張らせており、撫でてやると、少し落ち着いた。


「大丈夫です」


深呼吸して、気持ちを切り替える。大丈夫、大丈夫だ。


「中に入るぞ。身分証を出しとけよ」


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