決戦前.5
「ユイさん!!」
お久しぶりです!!と、握手を交わす。
雪焼けか、肌が大分焼け、あちこちに傷が治った痕が残っていた。
「君も元気そうだ。そこのが、話に聞いていた君の使い魔のネコ君かな?はじめまして」
『え!ネコの事知ってるの?初めまして!!』
すぐさまネコも握手をしようと前足を伸ばす。
それを見て、ユイは微笑ましい物を見たという風な笑顔で、ネコの前肢を優しく掴んで握手をした。
「喋る獣は知ってるが、ネコはことさら可愛いな。後で撫でても?」
「勿論!」
『もちろん!』
あらかじめユイにネコの話をしていた。良かった、ユイともネコは仲良くなれそうだ。
そして。
「お久しぶりです、ライハ様」
「スイさん」
ユイ同様、あの時に別れてからしばらく消息を経っていたらしいスイ。
最近まで何処かに拘束されていたと聞いていたが。
「様付けはやめてください。そんな柄じゃないです」
苦笑しながら言えば、申し訳なさげに眉を下げた。
最後見たときよりも痩せてしまっていた。
「じゃあ、どうしようか…。……ライハ…くん?とか」
「あ、じゃあそれで」
『こっちもよろしくー』
「ああ、よろしく」
ナチュラルにネコ握手。
「ちょっとちょっと、地味にスルーは悲しいんだけど」
と、間に割って入って、スイの代わりに見知らぬ男がネコ握手。
戸惑うネコ。
忘れてた。
「えーと、じゃあ各々自己紹介は後にするとして、まずは!俺を紹介させて!!初めまして!! 俺はアンノーン。アンノーン・パーソンと申します。言いにくかったら別にナナシとかでも良いんだけど、ナナハチ君と被ってる気がするので気軽にアンノーン、もしくはパーソンと呼んでくれると嬉しいな!」
テンション高いな。
「こんなんでも、フリーダンとは同業者でね。観測者って仕事をやってます」
ざわめく。
特にニックが驚きすぎてこっちにやって来た。
「……証拠は?前に教えられた話だと、管理人と同様、一世界に一人だと聞いた。二人目がいるなんて話は知らない」
「ん?ああ、そーか、連絡がまだ行ってなかったか。ふむ、じゃあ」
アンノーンがオレ達を見回す。
「元観測者、ユエから出された作戦と、この世界の状況を教えてあげよう。そうだ、多分、そこの勇者も知らない事もあるからな」
オレが知らないこと?
少し考えて、神のメール全部見てない事を思い出した。
いや、見ようとしていたんだけど、最近スマホ見てなさすぎて件数がヤバいのと、長時間見てると目が痛くて。
……はい、言い訳です。
「では、宿にご案内します。こちらへ」
「お!よろしく頼む!」
呆気に取られていたシラギクが我に返り、アンノーンを案内する。こういうときに、シラギクは心強い。
「ごめんなぁ、今の俺の上司なんだが、目茶苦茶で。でも強いから安心してくれ」
「そうなんですか」
目茶苦茶と良いながらも、何処かユイは楽しそうな顔だった。
「ほら、行くよ」
ポンとカリアが肩を軽く叩いていく。
「行きましょう」