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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第七章 力を持つモノ
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隠密.10

異形。まさにその言葉が相応しい。

体格の良い男の体が埋め込まれた、紺と黒が混ざった色の一角馬。いや、生えている位置から察するに二本あっただろう角の一本は、見事根元から折れてしまっていた。


馬が嘶き暴れる。


鎖の刺が食い込み、人の部分が悲鳴を上げた。


「どうどうどう、ごめんよーバイコーン。混ざってしまってはもう私達にはどうすることもできない…」


ウコヨがバイコーンと呼んだ馬の部分に触れた。

そうすると、苦しげに暴れていたバイコーンがみるみる大人しくなり、ウコヨの胸に顔を擦り付けた。

サコネもとても悲しそうで、今にも泣き出してしまいそうになりながらもバイコーンに触れた。


「再契約も出来ないようにするなんて酷い……、ごめんね。それにしても、まさかドワソ卿と混ぜられるなんて……」


「その人知ってるんですか?」


ウコヨが頷く。そして、ドワソ卿と呼ばれた男を見た。

だが、その視線はあまりにも冷たく、思わず鳥肌が立ちそうになった。


「かつてのシクス・ガディアン。この国の六大貴族だった愚かな男よ。気付いたら姿が消えてて、悪魔に喰われたのかと思ってたけど。私達の可愛い子と混ぜられてたなんて吐き気が出る」

「ええ。そうね。最後まで醜い。一人で自滅すれば良かったのに、よりにもよってうちの子を巻き添えにするなんて」


サコネも同じく冷酷な瞳を向ける。


そう言えば、使い魔契約をすると、契約主にとって使い魔は己の身内、子供のような愛情が沸くときがある。一般的にはお互いが裏切らぬようにそういう風に術が構築されているという見解だが、個人的には絆が深ければ深いほどに使い魔の力を最大限に引き出せるものなのだと思っている。


ライハとネコの在り方を見ても、あればもはや契約主と使い魔というよりは、相棒、もしくは兄弟のように見えていた。


しかし、この双子はそのどちらとも違う感じがした。


具体的に何処がとは分からないが、なんだろう。


「出来れば、此処から解き放ち、再契約したかったけど。こうなってしまってはもうちゃんと生きることも出来ない。楽にしてあげるね」


サコネがバイコーンの頭を優しく撫で、ウコヨがこちらを向いた。


「ラビ。この子の首を落として。そうすればこの城の結界の一部が崩壊する。すべての柱を破壊しないと人には辛いだろうけど、少しはマシになるはず」


「良いのか?」


この混ざった状態を戻すことは出来ないのか。


口には出していないが、言わんとした事を悟ったのか、ウコヨが首を横に振った。


「 魂同士が深く混ぜられた場合、無理に引き剥がすのはあまりにも難しい。此れを見て分かったよ。この結界は柱の苦痛を魔力にしている。……あの魔方陣と同じように。だからこの柱を楽にして上げれば魔力が薄まる。そうすればラビの知り合いも楽になると思う。こんな最後は無念だろうけど、利用され続けるよりは…」


剣を抜く。


「分かった」


「バイコーン。また、縁があったら」

「次こそはちゃんと散歩に行こうね」


呻くドワソ卿がこちらを見ている。

見開かれた瞳は血走り、何かを訴えていた。


口がハクハクと動く。


『……ァ………ケ…ェ……』


助けて。そう口が動いた。


「今、楽にします」


バイコーンがこちらに首を下げる。

剣を構え、勢いよく振り下ろした。


── キィィィィインン……


首を落とした瞬間、波紋のように音が広がって行った。その時に見えるはずもない不思議な黒い光が、弧を描いて、バイコーンを中心にして広がる。


「しまった!罠が仕掛けられていたか!」


「罠!?」


バキンと何処からか硝子のような物が砕ける音がした瞬間、風が巻き起こる。


それは強い圧を伴って、たくさんの気配が迫って来た。


「あ……」

「うそ……」


後ろで双子が何か言ってるが気を回している暇がない。


「前方に壁を張れ!!何でも良い!!!時間を稼ぐんだ!!!」


タゴスの言葉に反射的に多重結界を張る。次の瞬間、六つあるうちの一番外側の結界が一瞬のうちに破壊された。


破壊された瞬間に襲い掛かってきた殺気。

全ての結界を破られれば、終わる。


思い付く限りの結界をありったけ出入り口と、その先の廊下に張り巡らせる。

きっとすぐに破られるだろうが、少しでも時間を稼ぐ。


右手が痛い。痺れが酷い。


「ラビ、上がれ!!」


『急イデ!』


「!」


後ろを見れば既にタゴスと双子は天井裏へと戻っていた。

すぐさまラビも飛び上がると、タゴスが伸ばした手を掴み、引き上げた。


結界が全て破壊され、暴風が部屋の中に吹き荒れる。叩き付けられる殺気に脚がすくみ掛けるが、急いでその場から離れようと脚を動かす。


「見よ!!合わせたる双鏡は、閉じられたる異界の扉!!その世に住まう惑わせの魔物よ!永遠の夢へと誘え!!《ネバーワルド・クラウン》!!」


部屋へと降りた場所に通路を塞ぐ形で突如立て鏡が現れた。

不愉快な笑い声が聞こえた後、風の音が消える。


「?? え?」


「今のうちに!」

「はやく!」


双子が急かす。

今のは魔法? 封印が解けたのか?


疑問はあるが、ひとまず逃げるのを最優先に、全力で脚を動かした。

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