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虚空を見る.15

ああ、神よ。

どうか慈悲を。


不意にそういう言葉が頭の中に浮かんだ。


眼前に迫る純白の光は、聖なる雨となって降り注いでくる。

小さいときに見た絵本のような光景にただただ見入った。逃げる所など無い。防ぐ手段もない。


隣にあるこの盾車でさえ、きっと防ぐことは出来ないのだろう。


ならば、残されたこの数瞬を祈るしか出来ない。


剣を手放し、天に向かって祈ろうとしたとき、視界の端に、氷のドームとは違う大型の結界を展開しようとしている者達が見えた。

先ほどから集中攻撃を受けているのにも関わらず、びくともしない。


そうか、彼らはまだ諦めないのか。

きっと彼らのような者が、英雄と言われるのだろう。


組んだ手を天へ掲げずに、彼らへと捧げた。


どうか。私は助からないかもしれないけれど、我が神よ、彼らを守りたまえ。



言い切ることができただろうか?

意識は白い光に溶けて消えた。














敵の攻撃を崩壊間近の結界で受け止めきれたのは奇跡に近い。圧倒的な力を耐えきって、視界の端に違和感を覚えて横を見てしまった。


「~~~~~っ!!!!」


標的がオレ達だからと油断していた。


「……そんな…」


誰かが力なく呟くのが聞こえる。

見渡す限りの範囲で地面は焼け、動くものは何一つ無くなっていた。

空には燃え滓の白い灰が舞い、雪のように積もり始めている。


かつて、それが人だったのか、悪魔だったのかも判別も出来ない。


今見ている景色が現実なのかもわからなくなっているオレをネコが叱咤した。


『横を見るな!!』


「!!」


我に返って天を睨み付ける。


── すまん。攻撃範囲が広かったのを見てできうる限り、近くにいた部隊も救いたいと思ったが、間に合わなかった。


エルファラの声が聞こえる。


そうか、当たる寸前に展開されたあの結界はエルファラのものだったのか。もっともその結界も砕け散ってしまっている。


「落ち着け!今は集中するんだ」

「くそっ!くそっ!くそっ!」


生き残ったのはオレ達だけか。


すぐさま次に備えていたが、次が来る気配がない。


『…魔力が尽きた?』


ネコが首を傾けながら言う。


「魔力は尽きないんじゃなかったか?」


『最大攻撃したから、少し疲れているのか、もしくは生き残ったから吃驚してるとか?』


「チャンス?」


『いや、まだ───!!!』


ネコが突然横を向き、オレもつられて横を向く。

気配もなく大きな爪が迫っていた。


「っ!?」


黒剣の刃が爪と交差し、踏ん張る事なく吹っ飛ばされた。


「ぐわっ!!」

「ガス!!」


地面を転がるもすぐさま立ち上がり頭をあげた。


『ガルルルルル!!!!』


大型化したネコがそれの更に二回りは大きいグリフォンに襲い掛かっていた。だが、グリフォンの方が早くネコが押されている。

早く加勢しないと。


『行かせないよ』


目の前に炎に包まれた人が現れ、翼を広げた。

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