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虚空を見る.10

「あーーーーーーーー……、辛い」


地面に座り込み、砲弾用の防壁に背をもたれさせながら空を見上げて呟く。


夜空は煌めく星がどこまでも広がり、絶景である。しかしそれはこんな血生臭い場所よりも、草木の甘い臭いが広がる場所で眺めたかった。


手元にある食料も大分減った。あと医療品も。


「なんであんなに魔剣あるんだよ。いや、シンゴのと比べたらカスだけど、しかも所有者が斬った奴の魔力吸収して強化されるとかムリゲー過ぎるっつの」


なので、せめて皆の食料を確保するためにオレとネコは「さっきつまみ食いした」と言って、コソコソと倒した魔物を食べて持たせている。勿論調理なんて出来ないのでほぼ生なのは仕方がない。

それにしても気のせいかも知れないけど、魔物の肉をそのまま食べると魔力が回復する気がする。


呪いが何か作用してるのか?


『はーあ!食った食った!』


「お腹一杯?」


『うん』


ネコは連日の戦闘で、わざわざ小さくなるのは時間のロスだといって、予め大きな姿でいる。

あの虎みたいな大きさのやつだ。


だけど、仕草はネコのままだから可愛いな。

一生懸命毛繕いしてる姿とか。


この戦場で唯一の癒しだ。


皆もネコを癒しだと判断しているらしく、こんな過酷な戦場での発狂者はまだいない。他の部隊だとちらほらと発生していると聞いているから、ネコがいて良かったと思える。

じゃなかったらどうなっていたことか。


「夜襲の波も引いたし、一旦戻るか」


『うん!あ、なんかラビが探してたよ』


「え!?……なんだろう何かやらかしたかな?」


最近ラビからしょっちゅうお説教されている。

母親かな?ってツッコミ入れたくなるけど入れたら「アアン!!?」って言われて悪化するから言わないけど。


今ではラビがオレを探している=オレがなんかやらかしたの方程式が成り立ちつつあるの嫌だ。


『あれじゃない?また剣折ったの隠してたじゃん』


「………それか」


前のオレの愛用の黒剣が初期化してしまって、応急措置で魔力流し込んでなんとか復元したは良いが、やはり魔力の量が足りないのか知らないけど、ポッキーの如くポキポキ折れてしまう。


かといって煌和刀はなんだか振ってみての違和感が気になるし、仕方なく折れたら敵のを取って代用したりしているけど、今度はオレの魔力に耐えられないのかなにもしてないのに突然ヒビが入って折れる。


お陰で隊員達から「剣食い」との有りがたくない称号を頂いた。


いやー、ラビにいい加減ちゃんとした武器普及されているんだからそっちを使えって言われてはいるんだけどねぇ。なかなか。


『ネコも一緒にお説教聞いて上げるよ!ネコお説教聞くの上手いし慣れているんだよ!』


「へぇー、それは心強い」


『なんてったって、あのぐっさんに毎日ガーガー言われてたからね!』


ぐっさんって誰だ?と、訊ねようとして、ネコが首を傾けていた。そしてオレを見て一言。


『ぐっさんって誰?』


「いやそれオレの台詞だから」



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