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悪夢.12

包みを広げて中を見てみると、意外な物が入っていた。

なくしたとばかり思っていたそれは、貰ったときの状態のままでそこにあった。


「うっわぁ、懐かしい…」


手に取ればしっくり来る重さ。手触り。

日の光に当ててみれば鈍く銀色に輝き返す。


「それ知ってるのか?」


「知ってるもなにも、なくしたかと思ってたんだよ。何処にあったんだよこれ」


オレの手の中にあるのは短刀だった。片刃で滑り止めが柄にある。タゴスから貰った短刀だった。シルカで穴の空いた鞄の中にも無かったから、てっきりもう見付からないかと。


そんなオレの様子とは裏腹に顔を見合わせる三人。


「それ、お前の剣な」


モントルドが言う。


「……?」


首を捻る。どういう事?


「正確に言うと、剣の方に蓄積されていた魔力を流し終えたら、これになった」


まだわからない。

分からなさすぎて助けを求めてラビを見ると、もう少し噛み砕いて説明してくれた。


どうやら、オレの魔力を戻すためにネックレスの魔宝石を使ったらしい。首もとを見ると、灰色に変色した物が。腕のも灰色になっていたので訊ねたら、こちらは身代わりになってくれたそうだ。


それでも足りなくて、ユエの指示に従い 剣をオレにぶっ刺し 無理やり注入したらしい。その為オレの隊員達はユエ達の事をよく思っていないらしく、今も隠れてあちこちからこちらを監視しているような視線を感じる。変な魔法を身に付けるな。


全て注入し終えて空になるとこの短刀が出てきたらしい。


「まさか、これも魔法具だったのか」


「いんや」


ユエが首を横に振った。


「これは人が作ったものじゃない。作れるものではない。特殊な鉱物を加工して作ったものだ。これを何処で手に入れたんだい?」


「これは、こちらに来た時に出来た友達に貰ったんです」


「それは何処の?」


「ホールデンです。神聖魔法で浄められた武器が使えないなら、お下がりやるって」


あの頃はろくに剣も振れなくて、筋トレばかりやっていた気がする。


「その子は本当に人間だったかい?」


「え」


ユエの唐突すぎる言葉に思考が止まった。


「人間…だったと思います…けど」


思い出そうとして、瞳の色がどんなだったのか思い出せなかった。髪は緑だ。ニックの若葉のような色ではなく、深い緑。


「その子の出身は何処だい?」


「えと、確かずっと南だって、言ってました」


「サーザ?」


「………では、無いです」


前に遠征で行ったサーザとの国境付近の話のついでにサーザの人達の事を聞いたことがある。浅黒い肌を持ち、大きな布を体に巻き付け、砂の大地を旅する人。でも、話を聞く限りでは、タゴスはサーザ人ではなかった。


そこで、疑問が浮かんだ。


この大陸に、ホールデンの南にある国はサーザしかない。なのにタゴスはそこの人ではない。


じゃあ、何処の?


「もう分かってるだろう?その子は人間ではない。いつからホールデンにいるのか?味方なのか敵なのか?引き入れた者なのかもわからない」


タゴスが敵?

剣の振り方を教えてくれた。愚痴を聞いてくれた。短い間だが、少なくとも彼は味方だと思っていた。


「……でも、オレはこの剣で救われてます」


マテラから此処まで武器としてオレを助け、今回もこれがなかったら。


「ええ、だからこそ。どちらかわからないから、一応用心しておきなさい。敵ならば、情に流されぬように。味方なら、捕らわれている可能性もある」


ニコリとユエが笑む。


「味方なら良いねぇ」

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