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前線予想地へと.6

フォックスイヤーといわれる地域がある。由来は、キツネの顔に似た形の葉っぱが付く植物が多く自生するから。ちなみにそれの名前がフォックスイヤー。秋になると見事な紅葉でますますキツネにそっくりだ。


今回はそのフォックスイヤーでの亀裂塞ぎをしに行く。


駿馬で飛ばして3日ほど。ややホールデン寄りのフォックスイヤーはリューセ山脈の端っこがある。だが、ちょうどホールデンの雨を降らせる場所の裏側にあるせいなのかちょっと乾燥をしている。剥き出しの岩からはちょびちょびと草がまだらに生え、小動物は岩の隙間に隠れて様子を伺っていた。


「………なんか、あれだな。思ってたのと違うな」


ラビが言う。


確かに、亀裂があるにしては割りと平和な感じだ。それどころか岩場のヒビが多くてどれが亀裂なのかちょっと分からない。


あとワケわかんない建造物があちこちに乱立している。

建造物といっても主に柱だが。

トーテムポールみたいに動物の顔が彫られていて少し怖い。


スマホで確認を取ると、此処ではないらしい。もう少し奥だ。だけどもこんなところを駿馬を歩かせれば脚を取られて骨折する可能性がある。なので。


「ええええ!!!?俺達も行きたいです!!!!」


「なんでですか!!!?」


駿馬の番をしてもらうために班でじゃん拳をして貰った。

結果、第3班がお留守番になった。


「ごめんなさい…。僕が弱かったばかりに…」


第3班の班長であるピノが泣きそうな顔をして自らの左手を見詰めていた。そのあまりにも悲しそうな顔と落ち込み具合で仲間がそれ以上言えず、ピノの背中を擦って。


「班長、後でみんなでじゃん拳の練習しましょう」


と慰めていた。

じゃん拳の練習して上手くなるのかは分からないが、オレは頑張れよとしか言えなかった。












ひび割れた所に注意しながら進んでいく。穴は暗くてよく見えないが、石を落としても底に落ちるまでの音が恐ろしく長く、落ちたら終わりだろうなと思う。


訳のわかんない柱も増えてきて、ようやく此処が遺跡と呼ばれる所なのだと分かった。


朽ちた建築物に、割れた板には文字が書かれていた。

読めそうで読めない。色々劣化しているからだと思うが、元々ピラミッドの謎とか好きなオレにしては堪らないもので、帰り際時間があったら紙に写しとりたいとか思った。


『あそこの穴、変な臭いしない?』


しばらく歩き、指定場所に近付くとネコがそんなことを言い出した。


「そうか?」


ラビは首をかしげる。

オレはネコに習い空中を嗅いでみたところ、確かに何か匂う。こう、魚が腐ったような、野菜が腐ったような。とにかく何か腐った臭い。


人の腐臭ではないことは明らかなのでホッとしたが、それと共に妙に甘い臭いも漂ってきて混乱した。


「あ、ハチミツの臭いが」


フィランダーが甘い臭いに気が付いた。


「ほんとだ」


「どちらかって言えば香水じゃない?」


すると隊員達が次々に気が付く。だが、腐臭の事を言うやつがいない。


「腐った臭いは?」


「え?」


「え?」


『え?』


頭にはてなを浮かべる隊員達。ラビでさえ「腐臭?」と言っている。


これまさかオレとネコしか感じてない?

なんで?ネコは動物だから人よりも優れた嗅覚持ってるからで済ませられるが、オレはーー……そういやマテラん時動物してたしネコと魔力融合してるからその影響か。


突然フィランダーがハッとした顔をした。


「腐臭って、まかさ人間の!?」


その一言でざわつく隊員達。ほぼ無意識に柄や魔方陣札に手が伸ばしている者もいる。


「いや、なんか草とか、魚が腐ったような感じ……、!」


ズズズと足元の小石が振動で小さく音を鳴らしていた。次第に大きくなる揺れに、体勢を低くして堪えていると、突然目指していた場所が盛り上がり、地面が爆発した。正確には、大きな角ミミズが突き出してきた。

ヌラヌラとテカる体から粘りけのある分泌物が滴り落ち、体躯には似合わないたくさんの小さな手をバタバタと動かしながらバランスを取るとこちらを向いて目の無い顔がぱっくり上下に裂けてノコギリのような歯を覗かせた。


その瞬間、蒸せるような臭気にラビがうっと顔をしかめた。


「これの臭いか」


「これの臭いですね」


ラビが納得した瞬間、変異体となったジャイアントワームが襲い掛かってきた。

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