表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
407/745

押し込め!!.4

「う……ぐうっ……!!」


足元の地面に深くヒビが入る。耐えきった。


この重圧は久しぶりだな、エルトゥフの森以来か。

ネコの無事を確認する。触手を切られた事に怒ってネコの敵意識が一時的に逸れたのか攻撃が止んでいる。その隙に尻尾の形状を更に鋭利に、更に硬く変化させている。


「へへ…」


こいつが発する重力は自分を対象外に、ドーナツ状で限られた範囲にしか作用しない。それは敵と決めた範囲内。リューシュは相手を対象に攻撃を引き寄せたりしていたが、カミキリケムシはそういう器用なことは出来ない。


重力の威力だって距離に比例する。範囲が狭ければ強く、広ければ弱くなる。今は地面にヒビが入る程の強さということは、距離を取っているラビは敵認定の範囲外だ。


ケムシは重力によって地面に押し付けられているオレに向かって突進してくる。引き殺す気か、それとも毒棘を刺すつもりか。

どちらにしても、確実に仕留める為に、近付くたびに重力範囲が狭まり、威力が大きくなっていく。骨が軋み、剣が重い。


だが、オレはその場を動かず、突進してくるケムシを見ていれば、顔の全面にギザギザの切れ込みが入り、大きく開いた。五層に連なるノコギリに似た歯が迫ってくる。

引き殺すつもりも刺すつもりも無かった。食うつもりだこいつ。


もうすぐ食われるという瞬間、ケムシの頭上から大きな岩が落ちてきて勢いよくぶつかった。


空には座標指定された魔方陣。そこから発射された岩がケムシの重力の巻き添えになり、大砲並みの速度で衝突したのだ。


折れたケムシの歯が舞う。


凄い音がした。痛そうだ。実際痛いのだろうな。なんせ、落下した岩が少し体にめり込んでいたのだから。ネコの方を見れば、今の衝撃と同時に尻尾を殻に突き刺せていた。


ここまで来れば勝利は確定したようなものだ。


後方のラビは敵認定されないよう光彩属性魔法によって、オレの灰馬ごと姿を隠して行動している。


重力が緩む。

その瞬間黒剣をケムシに振るった。岩によってへこみ、ヒビが入ったケムシの甲殻だが、黒剣は関係ないとばかりに次々に切り込みを入れていく。吹き出す体液。

流石に命の危機を感じ始めたらしく、今度は浮遊の魔法を発動してきた。


これは対象の重力の無効化という、昔ホールデンで捕獲の際に使われた魔法と同じものだ。ふわりと足が地面から離れて体が宙に浮く。


こうなってしまえばオレはどうやってもこの場から動けない。そう思っているケムシは、体を回転させて、無事な尾を叩き付けてきた。

ネコが回転で吹っ飛ばされそうになっているが、既に殻に突き立てた尻尾で飛ばされずに済んでいる。それを確認しつつ、その尾に向かって、纏威プラス反発結界を発動して殴りかかる。

毒の棘が皮膚を裂き血が滲むが関係なく拳がケムシの甲殻に当たれば、爆発でもしたのかと思うほどの音を響かせ尾が折れ曲がった。

甲殻は剥がれ、殴られた箇所が大きくへこむ。

無重力が消えて無事着地した。


「大丈夫か!?毒は!?」


まさか殴るとは思ってなかったらしいラビが慌ててやってくる。


「……なんか大丈夫っぽい」


剣闘士時代に嫌というほど毒を食らった為か、耐性がついているっぽい。傷はいたいが、気持ち悪くもならないし、毒が聞いている様子もない。

以前食らったことのある毒だったか。


食らっても何とか治す気でいたので儲けた。


『バカア!!!ネコがいるの考えて殴ってよ!!!』


あとネコに怒られた。


そんなに怒らないでくれよ。一応動けなくはさせたんだから。

既に満身創痍であるが、魔力が尽きてはいない。再びなにかを発動させた瞬間、殻全体にヒビが入り、黒い棘が一斉に突き出して殻を破壊した。


殻から大量の魔力が吹き出して霧散していく。

あの殻は魔力の貯蔵庫で、あれが有る限りケムシは魔法を使うことが出来るし、少しずつではあるが細切れにされても再生することが出来る。

鉄よりも硬い殻を破壊した尻尾の硬度はどのくらいなんだろうなと考えていたら、ケムシは『ぴぃ……』と鳴き声を発して倒れ動けなくなった。


ケムシって、鳴くのか。


ネコが尾を殻から抜いて戻ってきた。


『めっさ硬かったぁ』


「ネコよくやった」


『もっと誉めて』


「さすがはネコだ素晴らしい」


『ふへへへへぇ』


誉めたことによってさっきの怒りは消えたのか、機嫌よろしく肩に乗ってきた。


後ろを見れば、他の変異体も数を減らしている。

だが、代わりにケムシを倒してしまったから別の変異体がこちらの方にもやって来ていた。


「もう一踏ん張りだ。行くぞ!」


灰馬に跨がり、残りの変異体を蹴散らしに行く。







その後、減った変異体の報告をすれば、突撃部隊が一斉に雪崩れ込んできた。

変異体の壁の後ろに隠れていた悪魔達と遭遇し一時乱戦になったものの、向こうの指揮系統が甘いのが、徐々に後退していった。

もちろんこちらも無事ではない。

例の機関銃によっての被害が多く、オレの遊撃隊の連中も避けきれずに被弾した。


それでもギリスの魔術師達がめげずに防壁を張り、それを盾にしながらも追い詰めていく。


じりじりと怪我人が増える。


だが、確実にオレ達は悪魔達を海側へと押し出していっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ