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押し込め!!.1

報告書をエドワードに提出して、女性達はギルドの人達と自警隊に任せて、オレ達は悪魔達を追って南下。

ヤテベオの変異体が壁のように橋から橋に弓なりに並んでいる。幹や枝、蔓からも黒い刺が無数に突き出ている。

当たると痛そう。


「燃やしますか?」


「止めろ。見てみろアレ」


ヤテベオは木だ。燃やせば問題ない。が、トビアスが首を振った。


「枝に火矢をくくりつけてある。燃やせばこっちに飛んでくるぞ、矢も本体もな」


「……そいつは嫌ですね」


下手すれば某忍者学園映画みたいに木が飛んでくるんですね分かります。


「それにしても邪魔だな……」


ヤテベオのせいで裏側の様子が分からない。熱や臭いで感知して拘束するヤテベオはこういうときに大活躍だ。まったく嬉しくないけどな。現にたった今ヤテベオの上を飛び越えようとした鳥があっという間に捕まった。


睨み合いが続いて一週間。


冬の寒さも和らぎ始め、春の兆しを感じさせるが、出来ることなら春が来てほしくない。

ヤテベオは植物だ。冬には動きが鈍るヤテベオは春になれば活発に動き始める。

本格的に気温が上がる前に何とかしたい。


遊撃隊と何処か侵入できないかとヤテベオ沿いに走ってみても、悪魔は用心深く海まで囲んでいるようだ。

ならばネコで飛び越えようとしたが、重力系の魔方陣がヤテベオの後ろに設置してるのか危うく墜落しかけた。

その時に見えたのは白い集団だった。何だったんだろうアレ。






「皆さんにお伝えしたいことがあります」


ギリスから派遣された魔術師達の代表が隊長達を集めた。現在の隊長クラスはオレ含め7人。そして正式にハンターを纏める偵察隊の隊長になったエミリアナで8人がここにいる。


「こちらをご覧ください」


魔術師が羊皮紙に描かれた魔方陣を発動させる。形状からして光彩魔法の遠くを写し撮る魔方陣だ。


「なんだこれ…」


「うわ、嘘だろ」


「気持ち悪い」


魔方陣の中心が揺らめき、映像が浮かび上がる。

白骨が蠢いていた。


「…………骨が勝手に動くことってあるんか?」


ファンタジーの世界では確かにスケルトンとかいた気がするが、この世界はファンタジーっぽいけど、オレの知っているものとは違うから、これがスケルトンと断定することは出来ないだろう。


ギルド職員のエリオットに視線が集まるが、エリオットは難しい顔をして首を傾けていた。なお、首の傾きは徐々に増している。


「……ギルドにある資料にはありません、が、昔の文献にこれに似たものならあった気がします」


「似たものですか?」


「これを見てください。ここの眼窩(がんか)から蔓のようなものが伸びているのが見えませんか?」


「あ」


「本当ですね」


エリオットが指差す所を注視すれば、確かに眼窩から紐みたいなのが動いている。


「これが(くく)り草の一種なら、やりにくい相手ですが手がないわけではありません」


(くく)り草、ヤテベオやマタンゴ、トゥロントのような自力で動くことが出来る植動物に分類され、時たまヤテベオに寄生しているが、手頃な骨があれば眼窩から頭蓋骨内に入り込み、そこから骨の隙間を縫って自由に動いて、良い環境を見付けるとそこで種を作り、またヤテベオを見付けると種を植え付け枯れる。

自生数が少なく、骨もネズミ程のものしか操れないので、他の魔物に踏み潰されたり遊ばれたりして人間の目につく事は少ない。更に危険はないので討伐対象でもない。


「一種って事は、違うかも知れないって事だよな」


「人骨を操ること事態、本来ならあり得ないことです。それが可能な種類は野狩人や木狩人の報告でも上がってないので、恐らくヤテベオと同じく」


「変異体…」


「ええ、そういう事だと思います」


野狩人や木狩人は植物の専門家だ。いうならば植物研究家のようなもので、新種を見付ける為に年中目を皿にして探し回っている彼らが見付けられてないって事は変異体という事なのだろう。前にノカリュードかボッカリュードと疑われた事があったが、彼らは植物の事になると半狂乱で奇声を上げたりする事から、ギリスの魔術師の次にヤバい奴と思われている。


「これどうやって倒すんですか?」


しかしオレは倒し方を知らない。

質問をすれば周りの隊長クラスも頷いている。


「野狩人や木狩人の話ですと──」


(くく)り草は野狩人と木狩人の討伐対象なのか……。


「──頸椎をこう、ズバッとやれば動けなくなるようです。その後目の中に火を放てば討伐完了です」



「わりと本当に討伐してる」


「やはり火か……」


「うーーん……」


皆が腕を組んで皆して唸っていれば、恐る恐るといった感じで一人の男性が手を上げた。紺色の髪に紫の瞳で、すぐにウォルタリカ出身だと分かった。


「あのー~~」


「どうぞ、キリク隊長」


「火がダメならいっそ凍らせて、投石機で薙ぎ倒すというのはどうでしょう?植物なら、凍らせれば動かなくなりますし、それなら投げた石を投げ返したりはしないでしょう」


「確かにそうだ!でも凍らせるのはどうする?ギリスの魔術師だって五人だ。それに比べヤテベオの壁は長い」


「何もギリスの魔術師達だけとは言いません。要はそれ専用の魔方陣が描ける人がたくさんいれば済む話です」


「………ん?」


なんだか視線が集まりだした。


「ねぇ?魔方陣をマスターまでさせた遊撃隊の隊長殿」


キリクの清々しいまでの笑顔に、他の隊長達も「成程!!」と納得した顔でこちらに視線を寄越していた。

あー、そういうこと。

つまりうちの連中が大活躍って事か。


「描くのは良いですけど、その後の事は手伝って下さいよ」

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