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戦場へ.11

人間突然意味不明な出来事に遭遇すると頭が停止するものだ。つまり今。


「は?」


オレの目の前にはもう一人のオレがいた。鏡かと思う程の精度で、違うところを探し出すことの方が難しいだろう。


「うわっと!!」


目の前のオレが突然剣を振るい襲ってきた。回避した頭上を風が抜けていき、すぐさま返しの刃が胴を目掛けてやってくる。咄嗟に刃に合わせて跳びつつ体を回転させると、すぐ下を通過していく。


『ふーん、なかなか良い能力持っているじゃん』


ソンヤの声がもう一人のオレから飛び出してきた。凄い違和感。


「………そんな能力あり?」


今まで色んな悪魔の力を見てきたが、擬態の能力は初めてだ。それにしても、何で今擬態したんだ?そういう能力は普通周りに大勢いる時、その場を混乱させるのに有効な能力だ。なのに一対一で使って何になるというのだろうか?

精神攻撃か?


けれど生憎オレには効き目はない。

仲間の姿を出されれば少しは躊躇したかも知れないが自分の姿ではただただ気分が悪い、もしくは胸くそ悪いだけ。


だけど、一つ気掛かりかある。それはこの剣の振るい方だ。まるで本当にもう一人の自分と対峙しているかのように立ち振舞い方も、剣の軌道も、速度も、回避するタイミングまで同じ。カウンターを仕掛けようとすると、思考が読まれているかのごとく剣の軌道をずらされ、ならばとフェイントを入れても通じない。少し厄介だ。


「姿形だけの真似って訳じゃ無さそうだな」


その言葉を聞いてソンヤが口許をニィィと歪ませた。


『そうだよ。勿論コレも真似できるさ』


剣を上に弾き上げながら、ソンヤの右手がこちらへと突き出される。次の瞬間。


「!!」


首を捻りながら体制を低くした瞬間、轟音と共にソンヤの右手から光が発射された。左耳がチリチリと焼ける痛みを感じる。詠唱も予備動作もなしに放たれたのは青白い閃光。もといオレの得意な電撃魔法だった。


上から降ってくる剣を弾きつつ距離をとればソンヤが剣を肩に担ぎながら笑う。全く同じ顔の癖してこんなにも凶悪な笑い方が出来るのかと感心した。


『お前の能力スッゲー!!何でこんな力を持ってるのに初っぱなで撃たなかったんだ?駄目だなぁ、宝の持ち腐れって言うんだぜ?』


「余計なお世話だ」


『せっかくだからこのソンヤがお前の姿を貰って有効活用してやるよ!』


再度放たれた電撃。だが、オレはすぐさま明後日の方向へと向けて雷の塊を飛ばした。すると電撃は雷の塊に引っ張られて大きく逸れていった。それを見てソンヤがピュウと口笛を吹く。


「へぇ、これってそういう使い方ができるのか。じゃあコレは!?」


ソンヤの周りに透き通るような青色の塊がいくつも生成される。まるで氷でできた大砲の弾だ。それが一斉に飛んでくる。


大胆な使い方をするものだと思った。オレは基本的に地中の水分を凍らせ、水の膨張を利用して標的の足を固めて拘束に使ったり、魔力自体を直接変化させて弾にするのだが、ソンヤはマウンテンタートーによって舞い上がった細かい塵を核に、空気中の水分を集めて固めたものを作った。


氷塊が次々に地面に突き刺さり、土を捲り上げては砕けていく。そして砕けた破片が凶器となって、遠巻きに様子見をしていた悪魔に降り注ぎ阿鼻叫喚の嵐となっていてもソンヤはお構いなしに、オレが行くところ目掛けて発射していく。


『うわわ止めろ来るな!!』


それを見ていた悪魔がオレが迫ってくるのを見て慌てて遠ざけようと機関銃を放つが、銃口目掛けて高電圧の雷を放てば弾は溶け、銃口も歪んで暴発する。一機であれば簡単なのだ。それが複数はどうしようもないが。


『なーに逃げ回っているんだよ!』


幸運なことにソンヤはあまり頭が働く方ではないらしい。確実に相手側を巻き添えするルートを通って回避するが、目論み通りソンヤは見事氷塊を落としてくれるので、地道に悪魔どもを混乱に陥らせることに成功している。


しばらく観察していて思ったのだが、ソンヤは魔方陣は放ってこない。隙を見て電撃を放ったりしているが、先ほどオレがやって見せた誘導によって無効化するだけで、盾の魔方陣を作り出したりはない。


出せないのか?それともあえて出さないのか?


ふっと突然視界に影が掛かる。


『ライハー!!倒れるよ避けてー!!』


「!」


見開ければマウンテンタートーがゆっくりとこちらに向かって倒れ込んできた。


『ほぉー、あいつスゲーな。でも』


鼻で笑うソンヤがマウンテンタートーに向けて掌を向ける。


『俺のがもっとすげえ』


ボンッと音を立ててマウンテンタートーの胴体に丸い穴が開き、曇り空が覗く。少し間を置いて空が赤く染まり血が雨のように降ってきた。


ソンヤの油断した顔を見て、オレは勝機を見付けた。


瞬時に魔力を練り上げると、血の雨に向かって放出。あっという間に血が凍り付き、血の刃になった雨が重力に伴い落下していった。


『!?』


その事にソンヤは驚き逃げようとするも、すでに足元は凍らせて拘束済みで、慌てて電撃で壊そうとするも即座に誘導して逸らす。ならばと氷で応戦しようとするも、空気中の水分はオレが先ほど全て凍らせた。知ってるか?血液凍らせるの通常の2~3倍の魔力を使うんだぜ。


『え!!まってまってうそだろ!?』


「オレの擬態なんだろ?なら自分自身の弱点くらい知ってるわ」


魔法での大規模攻撃ならなんとかできるが、物理だと雷で壊すか氷で壊すか、じゃなければ使う様子のない纏威か魔方陣で頑張るしかない。そのうち使える雷と氷を封じれば詰みだ。


大量の刃と、残されたマウンテンタートーが降ってくる。


「さて、せっかくだしチキンレースしようぜ」


『ひっーーー』















ズズンと大きな音を立ててマウンテンタートーらしき物体が地に落ちて砂埃を立てたのをラビが黙ってみていた。


「隊長大丈夫ですかね?」


「大丈夫だろ。人の心配をする前にやることやれ」


「は、はい!!」

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