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隊長!.9

「全員、整列!!」


足並み揃え、敬礼。男達の顔は凛々しく希望に満ちている。だが、彼等は知らなかった。遊撃隊隊長のライハは普通から少しズレているという事を。









さて、急遽出来た防衛軍は完成までにとにかくスピードが求められる。何故なら悪魔は待ってくれないからだ。という事はだ、更に下の人達はもっとスピードが求められるわけで。なんと2ヶ月の間に隊員達を使えるように出来ないかとの指示が来た。


ちょっと待ってくれエドワードさん。いくらなんでも用意できる時間が2ヶ月しかないってどういう事だ。学校の運動会でもそんなに短くないぞと抗議すれば、なんと戦場がいつの間にかリオンスシャーレ南部にも発生していた。なんでもルツァが大量発生していると報告があって、ハンターが偵察しにいったら、後方で悪魔と思わしき連中が檻からルツァを解き放っていたという話だ。命辛々なんとか逃げ切ることが出来たらしいが。

まさかマテラで暴れてたルツァの群れはソレ絡みなのだろうか。


「ということです。頼む」


ポンとエドワードの手が肩に置かれた。今まで数多くの「頼む」を聞いてきたが、こんなに嬉しくない「頼む」は初めてだった。


「吐きそう」


ストレスで。


『食べ過ぎ?』


「だったらどんなに良かったか」


「今度は何言われたんだ?」


オレよりも制服を着こなし、隊員の為の資料を作成しているラビが作業をしながら訊ねてきた。


「二ヶ月で皆を使い物に出来る様にしろだと」


「……無理すんなよ」


『疲れてるならネコの肉あげるよ』


ネコが肉をあげると言うなんて。そこまで疲れた顔しているのか。


「ありがとう、ありがたく頂きます」


気軽に受けるもんじゃなかったなと思いつつ、両頬を叩いて活を入れる。考え方を変えるんだ。今オレが頑張っているのは未来のオレが楽をする為だ。

皆を育て上げればオレの負担が減り、尚且つ戦争をさっさと終わらせるために世界中を走り回れる。

終われば元の生活に戻れる。


よし!やる気が出てきた!


「二ヶ月で鍛え上げるには、やっぱりこれしかないよなぁ」


何だかんだと落選したのを復活戦で拾っていれば、48人になっていた隊だが、あの試験でもめげなかった彼等だ。きっとやり遂げてくれるに違いない。











何度目だろうか、死んだと思ったのは。しかしまだ生きている所を見ると、神はまだフィランダーが死ぬことを許していないらしい。



「シンプソン先輩無事ですか!?」


「ガス・クロフツか?ああ、自分はまだ夜の女神イナヒにそっぽを向かれている様だ……」


「何笑えない冗談を言っているんですか!?行きますよ!!」


試験の時、後ろで転倒して半泣きしていた後輩が頼もしく見える。



事の始まりは一月前、我等が隊長がいつになく真剣な顔をしていた。


「諸君!!大変な話がある!!実は上からの命令で、なんと二ヶ月で、たった二ヶ月で君達を完成させなければいけないらしい!!何度も確認した!抗議もしたが、それでも二ヶ月しか猶予をくれなかった。ので!!腹をくくるしかありません!!無事に戦争を生き延び、その先を見るために、オレも全力で君達を鍛え上げるつもりなので、しっかりついてきてほしい!!」


隊長からの本気な訴えであった。


(これ、隊長の為にも頑張らんとなぁ)


そう隊員全員、心の中で思った。

翌日から、やっちまったなぁ、と激しく後悔した。既に手遅れだったが。


山中サバイバルから始まり、防御魔方陣を延々描かされ、魔力のある者は魔力操作集中で訓練し、医療知識をラビ副隊長に叩き込まれ、魔力で魔方陣を描けるようにするなどとトチ狂ったとしか言いようがない訓練にまみれた日々。


しかしそれはまだ序の口である。


隊長が空に放って落下させていく氷塊を二日間に渡り森の中に身を隠しながら目標地点まで移動すること。

その後草原で同じく氷塊投下。だが、草原の場合身を隠すところは一切無い。なので塹壕を自ら掘り、担当別にチームを素早く作ると必要最低限の氷塊を凌ぐ為に延々描かされ束になった魔方陣を用いて防御。防御!防御!!

そして山の中をひたすら走る!走る!!走る!!!

崖を登り、放り投げられ、川を泳ぎ、体を限界まで追い詰める。


文句?言えません!!何故なら隊長自ら実戦しているから。


後半になってくるといよいよ戦闘訓練。隊長の使い魔、ネコさんに毎日挑んでは軽くあしらわれ、チームを組んで挑んで転がされ、それでもめげず。隊長に挑んで投げ飛ばされ、闇討ち狙って返り討ちでぶん殴られる。

移動魔法は使用頻度が減っていき、代わりに駿馬をかっ飛ばす。意識朦朧としながらも隊長の背中を追い掛けて戦い抜いた。






二ヶ月後。

ライハ率いる遊撃隊は軍の中で最も狂った部隊というありがたくない称号を手に入れた。





完成した遊撃隊を見たエドワードはこう溢した。


「誰がここまでやれといった……」

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