隊長!.3
軍施設はこの世界にしてはギルドに並ぶ大きさだ。しかしギルドが役場のような感じなのに比べ、軍施設はある意味大学のようにも見える。とても広いグラウンドに寮付き。いわゆる軍学校だ。
此処には世界中のギルドから集められた悪魔の現在の情報をまとめ、国内の各軍と本ギルドに発信する。
国を守るのが軍で、統率の取れた軍人を貸し出し武器や団体戦の知恵を与え、世界で各地にあるギルドはリアルタイムで世界の魔物の様子をデータ化し、素早く現地にハンターを派遣する。ただし、団体戦や武器のばらつきがあるし個人戦が向いているので、軍が来るまでの体力を削っていったりパターンを見いだしたりする。
ちなみに本ギルドは此処から斜め前に見える。
前回の戦争の反省を踏まえて素早く行動出来るようにしているのだ。
「大きいな…」
「制服は三階だってさ」
『ハイバ達は?』
「先に預ける。確か裏あったはずだ」
灰馬達を預け、受付を済ませると三階まで上がっていく。螺旋階段を登りながら懐かしいと思う。確かホールデン以来だったか。指定された部屋に着くと、大部屋に人がたくさん集まっていた。部屋に仕切りがいくつもあり、そのなかで採寸をしている。
番号札を渡され、名前とエドワードの名前を出すと、奥の方に連れていかれた。
採寸をしてラビを待ちながら辺りを見回すと、こういうところに慣れていないガチガチに緊張しているのを見かける。
オレも昨日は少し緊張したが、日本のを思い出したら慣れた。
「あああー、キンチョーしたぁ」
腕を擦りながらラビが戻ってきた。
来るときはそこまで緊張していなかったのに。
「めっさ美人さんだった」
そっちか。
「良いなぁ。オレんところはお婆ちゃんだったよ」
「そういう場合はな、この人の若いときに思いを馳せるんだよ」
「お前のそういうところ高度すぎて着いていけん。ネコも思うだろ?」
『にゃー』
施設内で喋れない鬱憤を猫の鳴き声で参加することを思い付いたらしい。しかしその行動が面白すぎて二人して笑いを堪えていると怒ったネコに尻尾で叩かれた。
「出来上がりは二日後です。先に滞在中の住居への移動と、ライハ様には今回の戦況のデータをお渡しいたしますので目を通しておいてください。食事は朝7時と昼12時に夜18時の3回。基本の勉強会はこの紙に記載されています。先に基本的な能力測定がありますので、こちらに荷物を下ろして着替えたらグラウンドに集まってください」
首都に住居を持つものは少ない。
特にハンター達は普段は宿泊まりだが、今回は戦力を集めるという事で国から宿にお金が払われ解放されている。その中でも軍施設の量はそれなりの地位の人が住まう所だ。
だが、それは寮の二階部分で、一階部分は見習いが使う。
まだ隊長になるとなっても、必要な知識も何もないので見習い部屋だ。四人部屋で、ラビとあと二人入る。誰だろうな。
「いいからさっさと着替えようぜ」
ラビに言われ着替える。
グラウンドにはおよそ100人以上。女性もいる。まぁ、ハンターだし。
この中にハンター出身の隊長クラスもいるらしい。皆強そうだが、何人かえらい魔力を持っているのが分かる。
(まずは皆見習いってのがな)
軍のやり方は知らないが、ハンター達は権力が無い分実力主義の所があるから分かりやすいっちゃあ分かりやすいか。
「えー、諸君!!よく集まってくれた!!私の声が届くところに集まってくれ!!…………あー…これ喉がいたいわァ……」
ぼそりと何か聞こえた。
ラビと顔を見合わせながら、朝礼台に集まった。
立っているのはゴツいおっさん。いかにも軍人という風貌のおっさんであった。
「えー、皆ももう知っているとは思うが、今世界は悪魔の驚異に晒されている。南から、北から、悪魔は突然やって来て我々に襲い掛かってくる!!しかーーーし!!!我々軍ではとても補いきれない!!世界は広い!!!今南の方でハンターの連合軍が食い止めてくれているが、その間にも悪魔は隙をついてやって来る!!!よって!!世界防衛軍を立ち上げ、全ての国の軍、そしてハンター達が協力し、全人類一丸となって悪魔を混沌の向こう側へと押し戻そうではないか!!!皆のもの!!!今こそ人の力を知らしめてやろうではないか!!!」
「…………」
「やろうではないか!!!」
「……お、おおー!」
ハンター達のテンションが軒並み低い。
だろうな、基本ハンター達は作戦実行の時は静かに短く伝えるので、こういう場合どうしたらいいのか分からず戸惑っているのだ。
そして軍の人達もいつもと反応が違うのか首を捻っている。この違いが軋みを生まなければいいけど。
「では、能力診断を始める。項目は、長距離走、短距離走、剣術、弓術、馬術、魔術、体術、障害物走など、それを見て希望隊の配属を見る。皆のハンターランクも見るが、俺達はハンターランクがどのくらいのレベルなのかが分からない。なので、今日は全力で諸君の優れた身体能力を見せてほしい」
「それでは一列に並んでください。回る順番を決めていきます」
手渡された紙を見るとオレは魔術→体術→障害物走→短距離走→剣術→弓術→馬術→長距離走となってた。そして最後、使い魔となってる。
「ラビは?」
「ん」
障害物走→短距離走→剣術→弓術→魔術→体術→馬術→長距離走だった。
「馬術と長距離は後ろなんだな」
「場所使うからかな?この使い魔は?」
「さぁ?なんだろ」
『(ネコの出番もあるの?)』
「(あるみたいだね)」
影の中に隠れているネコが喜んでいた。
「じゃあまたあとでな」
「うーす」
手を振って別れる。さて、魔術頑張るぞ。