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『対話』.3

着いたところは何とも不思議な所だった。洞窟のような岩壁であるが、キチンと滑らかに削られており、床も大理石が敷き詰められたのかと思うほど光沢がある。


そして、壁の天井近くに設置された蝋燭に次々に火が灯る。


「…これ、蝋燭かと思ったら装飾か」


近付いてみると蝋燭の部分は金属でできた作り物だった。


「ここ面白いですね、何処ですか?」


「ナナハチあんまりあちこち触るな」


「ここは神がかつてこの地に留まっていたときに作った空間。この世界の次元と少しずらしているから誰も関知することはできない。それが例えあちらにいる力を持つ者でも。だから思う存分出来るわ。さて、打ち合わせ通り始めましょう」













部屋の巨大な魔方陣が描かれる。


シンプルなのに複雑なそれは、何処かの応接間で重大な会談が行われるような緊張を魔力事態が孕んでいた。


「絶対に成功させろよ。さもないとネコとお前はもう一人の悪魔に飲まれ、消える。そうしたら俺達はお前を全力で消さないといけない」


「分かってる」


「気を付けてね」


魔方陣の中心にネコと腰掛け、大きく息を吸い、吐いた。気分は剣闘士時代の殺し合いだ。


殴り合う訳ではないが、一歩間違えれば命がとられる。


魔方陣が輝き出す。

赤に青に白に黒に、クルクルと不規則に色を変え魔方陣が膨張し、体全体に厚が掛かる。それが突然、消えた。











真っ暗だった。

眼を開けているのか閉じているのか。

だけど、感覚的には瞼は開けていて、胡座をかいて座っている。


──ぺた ぺた ぺた


幼い子供の足音を耳が拾い上げた。

その音はどんどん近付いてきて、そこでようやくオレは気が付いた。


「これ、夢の中と同じ…」


『夢? 夢じゃない』


「!」


すぐ目の前で足音が止まる。


『現実だよ』


さらさらと音がして、まるで砂が風に吹かれて飛んでいくように闇が崩れていく。そして、目の前にいる者を見て絶句した。


「………なんで?」


そこにはとても懐かしい幼いオレの姿があった。すっぽんぽんで。

確かに違うところもちゃんとある。瞳は真っ赤で、頭には小さいながらも黒く捻れた角、手足と頬の一部には甲殻があって、爪も人のものよりも爬虫類に近い。何よりも異様なのが肌の白さだ。陶器かよと突っ込みたくなる程の白さに、髪の毛は鋼色をしていて、髪よりもメタリックな印象を与える。見方によっては幻想的な光景なのだ。


しかし、すっぽんぽんのせいで、すべてが台無しである。


『どう?驚いた?』


「いろんな意味でな。それ、本当の姿?」


『元々のボクの形を忘れちゃったからね。角と甲殻、色彩は何となく覚えているんだけど、細かいところがどうしても駄目だったから君の記憶を借りた。いけない?』


コテンと首を傾けられても、姿は子供のオレなので可愛くない。


「次からは許可を取ってからにして。あと、服を着てほしい。姿が似てるから恥ずかしいんだよ」


『じゃあ思い出すまで借りる。あと、服か…うーん、これか?』


姿がボヤけ、戻ると服を着ていた。何故か体操着にランドセル。いや、確かに小学校時代、体育の後着替えるのめんどいってそのスタイル多かったけど、違和感凄い。


「せめてこっちの世界のを…」


『お前ワガママだな』


さっきまで泣いてたくせにコノヤロウ。

その後ようやく違和感が無い格好になって貰い、ようやく双方向き合って座った。


『ではお互い自己紹介をしよう。ボクは先の魔王、エルファラだ』

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