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フリーダン ~ ノノハラ ~

フリーダンの話を訝しげに聞くノノハラだったが、次第に肩の力を抜き始めた。そして一言。


「この世界は、私の思ってた以上に大きく、深いのだな…」


コマがノノハラにすり寄る。撫でてやれば千切れるんじゃないかと思うほど尻尾を振った。


「私は…、前居た所でもジャラルという一つの国の中に収まり、外を見ようとはしなかった。戦争でも周囲の二三か国ほどで収まるもので、なんというか、とても狭い場所で完結していたんだなと思う」


それを聞いてフリーダンは驚いた。神から聞いた情報とはまるで違う人のようだった。


「それは悪いことではないわ。この世界にも一つの場所に留まる者もいるもの。ただ、あなたはこの世界の人間ではなく、呼ばれて来たもの。それも勇者として、最低限の情報を得て選択した方がいいでしょう」


「ええ、そうね。思えば私は反発するばかりで周りに耳を傾けなかった。一つの事に集中すれば周りが見えなくなるし、頑固だからなかなか変われなかった。コマが側にいるようになって初めて助け合いの意味がわかった」







ノノハラには家族が居なかった。

先の戦争ですべてを失ったノノハラは親戚の家に引き取られ、そこで女としてではなく男として育てられた。女として育てれば金がかかり、家を背負って権力の繋ぎとしての役目を背負わせる。女は使える道具だ。使える道具には金をかけなければならない。

だが、ノノハラには金を使いたくなかった親戚は、男として訓練寮にいれ、放任した。

訓練は厳しい。

男なら堪えられるものの、女では耐えられまい。早々に死ぬだろうと思っての事だった。

だが、ノノハラは耐え抜いた。

戦争でも活躍し、階級が上がり異例のスピードで、女の身でありながら王国の騎士という役職を得た。

男が優遇される世界では本来無いはずの事で、王と関係があるのではと疑われ有りもしない噂を流されたりもして、元々親戚の叔父に対して良い印象が無かったノノハラの男嫌いが加速していった。







優しい目をしてコマを撫でるノノハラは、美しい女性そのものだった。本来はきっと誰よりも優しい人だったろうに、環境が彼女を変えてしまったのだ。


そこでふと、フリーダンはノノハラの体に隷属呪いが無くなっているのに気が付いた。


いくら魔力が濃いリューセ山脈といえど、拘束系魔法が自然と解けることはない。現に上でユイが苦しんでいたのだから。


(と、するなら)


フリーダンは治療を終え、横たえた男の周りでレンと遊んでいる歪な精霊を見た。

あの男性が解いたのか。

精神系の魔法が使えるものは隷属の首輪に詳しい。何故ならあれは人を操るものの中でも最も有名な魔法だからだ。


心変わりで解いたのか、それとも故意に解いたのか。

どちらにせよ、起きたら質問をしないと。


「コノンにも謝らないと。あの子はわたしが思ってた異常に強かったのに。そして、ライハにも」


「ライハ?」


「そう。私があまりにも小さかったから、男と嫌な奴と似ているという理由で毛嫌いしていた。あいつには何の非も無かったのに。悪いことをした」


「謝りたい?」


「できることなら」


ノノハラの目は真剣だった。


「私彼の居場所知ってるわよ」


「え!本当か!?」


身を乗り出してくるノノハラ。しっかり抱いているコマがノノハラに合わせて『わん』と鳴いた。


「ただし条件があるわ」


「条件?」


「そう」


先にこれを言っておかないと後々混乱を引き起こしそうになるだろうから。


「彼は今、中身も見た目もだいぶ変わっているから、あまり質問攻めにはしないで上げて」


「………………へ?」


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