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フリーダン ~迷い子と変わり子~

リューセ山脈の地下はいわば大迷宮だ。

過去から現在に至るまでの地下水脈が隅々まで巡り、それが複雑に絡み合って地上とはまたちがう生態系を作り上げている。


迷宮は周囲の国にまで広く及び、国によっては浅い所を修練の洞窟と呼ばれ制限を掛けて解放されているところもあるが、道を間違えてしまえば戻れなくなる。


リューセ山脈は魔力が濃い、そして地下になると地軸が狂う。

リューセ山脈のあちらこちらで気温や魔力によって伸縮する鉱石が擦れ合い電気を産み出す。すると電気に反応して磁石が地場を産み出す。そうすることによって磁気が狂うのだ。


だが、リューセの迷宮が恐ろしいのはそれだけではない。


リューセの迷宮は層によって住まう魔物が異なり、また、山の中で収縮する鉱石や風の音が精霊の言葉に近いと、有り余る魔力が反応して魔法が発生してしまう。お陰で山の中で重力が上向きだったり、大きな岩が浮いてたり、森ができてたり、延々何もないところからお湯が流れていたりする。時間感覚すら狂っていく。


この世界の人達が地獄や混沌を指すとき下を指すのはこの為だ。昔は手に負えない魔物が住まう下層への穴へ、死刑として突き落としていたりしていた。だから魔物が溢れてくる亀裂が地面に走っているのを見て、混沌から魔物が這い上がってきたと考えていた。


今では全く違うことが分かったが、名残からか今でも亀裂の向こうを混沌と呼ぶ。









「───……だ…………」


「!」


声が聞こえる。


少し低いが女性の声。それと一緒に何かを引きずる音が聞こえる。


「!! 誰だ!!」


声がはっきりとこちらに向かって放たれた。

金属の音から察するに剣を持っているらしい。


フリーダンは驚かせないようゆっくりと姿を表した。


桜色の髪を纏め上げ、赤を貴重とした防具を身に付けている。剣は使い込んで所々に刃零れが目立ち、女性も怪我を負っていた。そして女性に支えられる全身血塗れの男性と付き添う歪な精霊。そして女性達を守るように尻尾が上向きに巻いた立派な犬がフリーダンの様子を伺っていた。


「こんにちは」


フリーダンが話し掛けると犬はフンフン鼻を鳴らし、フリーダンへと近付いていく。


「コマ!」


女性が呼び掛けるも、コマと呼ばれた犬は女性を向いて尻尾を振り、またフリーダンへと向かっていく。

手の届く位置まで来たコマの鼻先に手をやって嗅がせると、コマはフリーダンの手を舐めた。そのままコマの顔の横を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。


そんな様子をポカンとした表情で女性が見ていた。


「私に敵意は無いわ。怪我をしているんでしょう? 診せて」















「私はノノハラ。こっちはコマ」


「そっちは?」


「わからない。危なかったところを助けられたけど、代わりに大怪我をしてしまった。隣のはこれの仲間なのかなんなのか。離れないんだ」


ノノハラの治療を終え、男性の治療をしているときにノノハラが説明をしてくれた。どうやら謝って迷宮に迷い込み、中層付近で魔物に追い詰められたとき、突然割って入って囮になってくれたと言うのだ。


(見た目はホールデンの魔術師なのよね)


それもシクスガディエンの組織のひとつに洗脳が得意な部隊がある。男性の腕の腕章にはリンゴに巻き付いた尾の先に火を灯す蛇のマークがあった。


リューセの迷宮はその過酷さゆえに短期間で体質や性格が変わってしまうこともある。主に恐怖での発狂や魔力と共鳴して人では無くなってしまうものが多い。特に精神に干渉する術者は引き摺られ易い。


(でも今回は良い方向に転んだようね)


男性の側にいる歪な精霊は元々男に取り付いていた呪いだ。それがリューセの濃い魔力に引っ張られて形を得たらしい。今では使い魔契約を結ばなくても隣にいる。


「なんでここが分かったんですか?ホールデンの使者では無さそうだけど…」


フリーダンから少し距離を置いた所で様子を伺うノノハラが話し掛けてきた。敵意は無いが警戒をしている空気が流れてくる。


「私は魔法使いだから、精霊達が教えてくれたのよ」


「…魔術師…って事?」


「んー、少し違うわね。でもせっかく時間もあることだし、少しこの世界についてお話でもしましょうか」



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