剣を奮え.3
斧が埋まった壁に、先ほどの悪魔も同じようにめり込んでいた。
見た目的にとんでもないパワー極振りの悪魔かと思って、初激から全力で、纏威発動の上に柄に盾の魔方陣をくっ付けて襲い掛かってきた悪魔をぶん殴ったら、こうなった。
どうしよう。生きてるかな、これ。
とりあえず襟首つかんで引き抜いてみると、予想外に血の一つも出ておらず、オレの殴った衝撃で牙が折れて、次いで壁にめり込んだ時に真ん中の角が折れていた位だった。白目向いて気絶しているけど、あんなに全力で殴ったのにこれだけのダメージしか負っていないのは逆にスゲーなと思った。
「ネコー」
『あいあーい』
ネコが悪魔を尻尾で爪先までみのむしにして拘束した。
指先に電気を溜めて、首に当てると、ビクンと大きく体が痙攣し、目を覚ました。
『はっ!え!!?な、痛ぇっ!!!』
あまりにも一瞬の出来事だったんで混乱しているらしい。
取り敢えず腹を膝で踏んで固定する。
「いくつか質問をする。それに答えろ」
『ふ、ふざけんなよ!!!このーー…人間?じゃないなこのやろう!!!騙しやがったな!!こんなことして許させると思うなよ!!!』
「そんなことどうでも良いんだよ。お前は悪魔か?」
『ハァ!?見りゃーわかんだろ!!頭沸いてんのかテメェ、さっさとこれをほどきやがーーゴブッ!!』
柄で頭を殴った。
「では次。なんでここを襲った?あと、誰か指揮しているやつでもいるのか?他にも命令を受けたのか?」
『なんで答えないといけねーんだよ!答えるわきゃねーいてててててて!!!!』
柄をグリグリと額に押し付ける。
このさ、眉間の間って痛いよね。ちょうどこいつ壁に突っ込んでタンコブ出来てるし。
『わかった!言う!言うからやめろ!!俺らは偉いやつらに唆されて来たんだ!!人間を思う存分楽に殺すことができるってよお!!!』
「その偉いやつらってのは?」
『それは……』
一瞬、視線がオレとは違う所を向いた。
『言うわけねーだろうが、バーーーカ!!!後ろを見てみろや』
「……」
柄をさんざん押し付けた所に当ててから振り返ると、ラビが見知らぬ悪魔に捕まっていた。こいつはやべえ。
首に腕を回して持ち上げているからラビの爪先は宙に浮いていて、刃物を顔に当てている。
『おーい、動くなよー。動けばグサーといくぜ。確か人間にはヒトジチってのが有効なんだよな』
息が出来てないのかラビが悪魔の腕に爪を立てているけど、効いていない。
『うわしまった』
意識がこっちに集中していたせいで、やっちまった。
『ゲハハハハ。さぁ、俺を解放しろ。そうすれば誰か一人は見逃してやる』
柄を当てたままの悪魔が冷や汗を流しながら言う。
ラビの顔色は良くない。仕方ない。
ネコに頷きかけ拘束を解く。
『なぁんて嘘に決まってんだろ!!!両方纏めて死ねえええ!!!』
すぐさま起き上がりオレの首を鷲掴み押し倒す悪魔、黒剣を奪い取り切っ先を向けて振り下ろしてきた。
迫る刃。
だけど。
「想定内なんだよなぁ」
胸元で悪魔に向けていた人差し指から電流が迸る。
ボンと音を立てて、悪魔の胴体を雷が穿ち、穴を開けた。
『が…』
目がグリンと上を向き、血を吐き出して倒れる。
黒剣が地面に音を立てて転がる。悪魔の体を退かして立ち上がり黒剣を拾い上げると、あちらも片が付いていた。ラビが「うええ、嫌なもん蹴った」と言いながら踵から突き出した血塗れの刃を仕舞う。その横で首の無い悪魔の体が転がっている。
「首大丈夫?」
「一応、でもびっくりした」
赤くなってる首に回復の魔方陣札を貼り付け治療をするラビ。
「でもそのせいで駿馬達ビックリしてどっか行っちゃって…」
見渡してみると灰馬もラビの駿馬もいない。
「多分、大丈夫だろう。後で探そう」
「ごめん」
「いいよ、仕方ない。こっちもそんなに情報をとれなかったし」
こいつらは悪魔だと言うことしか分からなかった。
「次行こう。もっと強いのがいるかもしれない」