魔力操作.8
ニックに教えてもらっているギリス式無描魔方陣術(以下無描術と記載)を練習し始め、分かったことがある。
これ、魔力消費量めっちゃ少なくて済む。
その形を覚えるまでが一苦労だけど。
「ほらまだ作りが甘いぞ」
「うぐ…」
今は必要な魔方陣の形を目に焼き付け、脳裏にすぐさま浮き上がらせる練習をさせられている。初級は描きまくったおかげで余裕でクリアできたのだが、中級になると複雑になってきて、細かいところが曖昧になる。それを地面に立て膝をついて座り、膝のところに肘を着け、人差し指を上に向けた状態で魔力を出して脳裏に浮かぶイメージとリンクさせるのだが、細部が曖昧だとそこだけ靄が変わらないからすぐバレる。
もう一度魔方陣を目ながら10回繰り返し目を瞑って再挑戦。
例えるならば、初級では『ばら』を片仮名で書けと言われてすぐさま『バラ』と思い浮かべるのに対して、中級では漢字で書けと言われて『薔薇』の下の方がどんなだったかと頭を捻るくらいの難易度だ。
「……………なんで上級一歩手前の保温の魔方陣ができるのに、中級の中でもそれほどじゃない魔方陣が何故描けないんだ」
「人間って、必要なものは死ぬ気で覚えるよね」
雪山でお世話になった魔方陣。
あまりにも活用し過ぎて、何にも考えなくても描けるようになったくらい。
今んところ覚えることができたのは保温の魔方陣、盾の魔方陣の二つだけ。杖がないので代わりに剣を使おうとしたが、杖の役割はあくまでも魔力の出力調整なので、それができていたオレは別に要らないと言われた。
それにしても、ほんと今さらだが上級も難なく使いこなすニック凄いよな。
「……まぁ、人間得手不得手はある。盾の魔方陣を覚えることができたから、とりあえずそれを限界まで精度を上げよう」
「保温のは?」
「文句なしだよ。完璧だわ」
「いえーい」
そっからはニックと一緒に撃ち合いをしまくった。
まずはオレがニックに言われた通りの場所に盾の魔方陣を張り、そこにニックが同じ中級の飛石の魔方陣をぶつける。ただ石が飛んでるだけ。ただし石は高速回転して凄い速さで飛ぶので威力は弾丸並み。
それを割れないように魔力の密度を上げていく。
通常ならこれくらいは止められる。
ニックに持ってる能力も使って全力で殴ってみろと言われて、纏威も使って言われた通り遠慮なしに殴ったら、盾は支えがないので凄い勢いで飛んでいったけど割れてなかった。
本来はこれに衝撃逃しの魔方陣を重ね掛けするらしい、そうすることで吹っ飛ばされなくなる。ただし、その後の重さや諸々の衝撃は本人の力量によって変わるらしいが。
「なんだその技、スゲーな」
しかし、予想外な事にニックは纏威に興味を示し、ザラキの事を話したらいつか語り合いたいと瞳を輝かせていた。
その後、纏威があるなら無理に攻撃魔方陣覚えなくてもいいなとなり、オレは盾の魔方陣にこの日は全ての集中力を費やした。
結果。
「これ、いいな。俺も今度からこっちの使い方にしよう」
ニックが感心するほどの精度に仕上がったのであった。