合流祝い
食事に行きましょうとシラギクが迎えに来た。そこで話し合いは一旦中断して食事を摂ることにした。てっきり宿屋の食堂でとるのかと思いきや、外へと連れ出された。息が白い。本格的に冷えてきた。
「すみません、なんせ人数が多いもんで、宿屋じゃ賄えないからと言われてしまって」
「何人くらいいるんですかね?」
「えーと」
シラギクが指折り数え、両手全て折り、頷いた。
「11人です」
「大所帯ですね!!」
そりゃ宿屋じゃ賄えない筈だと納得した。
団体さまだよ。あちらでのバイト先じゃあ絶対宴会するような人数だよ。
「一応広いところをとったので、そこまで狭くはないと思います」
シラギクの後に続きながら始めてみるパルジューナの街並みを眺める。流石は魔法具の国と呼ばれることはある。軽く見渡すだけでも数えきれないほどの魔法具が夜の街を照らし、雪を溶かし、足元を温めてくれる。
窓枠はカラフルで、どの家も花を飾っている。
建築はドルイプチェと大差無いのに、少しの差でこんなにも印象が変わるとは。
店につき中に入ると既にみんな揃っていた。
驚くことに皆既に見たことのある顔ばかりで驚いた。というか、広いところをとったのでって、店を貸切状態にしたってことかよ。
そして、それはあちらも同じらしく、オレの顔を確認するなり一瞬ざわついた。
「おおおお!!!!あん時の良い奴じゃねーか!!!久しぶりだな!!!!」
「ノルベルトさん!」
机から飛び出しそうな勢いで席を立ち、両手を広げた人がいて目を向けると、チクセで世話になったノルベルトさんだった。興奮しているノルベルトを机に上がらないように服を引っ張るガルネットもこちらを見て「お久しぶりです」と手を降った。
「あ!あん時の剣闘士の子じゃない!え、じゃあ今キリコ近くにいるの!?」
その隣でこれまた見たことのある美女が腰を浮かせて辺りを見回し始めた。それをムキムキが抑えている。
「すみません、キリコさん達はルキオの援護に回ってて、今別行動しているんです」
「そうなの。でもよかった。心配してたのよ、あの奇襲攻撃でやられてないか恐かったから。無事なら良かった」
腰を落ち着け、嬉しそうな顔でブドウを摘まんだ。
「ささ、座りましょう!今日は無事合流できたことを存分に祝って乾杯しましょう!!」
その日は存分に食べて飲んで騒いだ。
たくさん笑ってたくさん話して、ニックが預かってたネコがピートンのニファと友達になったと嬉しそうに報告してきて、オレも嬉しかったし、何よりレーニォさんとラビさんが楽しそうにしているのを見てオレも楽しくなった。
そうして夜は更け、朝になった。
アレックスを送り届けたのでお役目ごめんと言う感じでルキオに戻ろうと思ったのだが、早朝、神から通知が入った。
曰く、リオンスシャーレに不穏な魔力の動きがあるから様子を見てきてくれという事だった。
リオンスシャーレって、大陸の左側を占領しているめっちゃでかい国じゃん。ルキオと真逆じゃん。
どうやら神様はオレと仲間を合流させる気は無いらしい。
「ライハァー…、もっと飲もぉーぜー」
「ノルベルトさん一旦水飲みましょう。水」
グデングデンになったノルベルトを椅子に向かって引き摺っていると、突然ムキムキの腕が伸びてきてノルベルトをひょいと持ち上げた。
「兄さん、全くもう、迷惑をかけちゃダメじゃないか。ほら、あっちにうまーい水瓶があるぞ」
「俺は酒が飲みたいんだよぉ」
シェルムだった。ノルベルトは襟をシェルムに鷲掴みにされて連れていかれていた。力強いな。それにしても、と、辺りを見回す。
「こいつは酷い」
「だろ」
外で気分転換をしていたアレックスが隣に来て言った。そういえば酒飲めないんだった。
店の中は死屍累々で、今動けているのはオレとアレックスとラビくらいである。うーん、どうしようこれ。
元々酒に強かったらしいオレは二日酔いもなく目覚めが良い。酒を飲んでない二人は昨日の惨事にゲンナリしていた。
「とりあえず片付けをしようか」
「…そうだな」