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兄弟

景色が切り替わる。無事に移動できたようだ、ただ、何故藁の中に現れたのか不思議だが。


「よし、みんな着いたようだな…」


と、息切れを起こしているニックが人数確認を始めた。というか、何故みんな藁を体にくっ付けているのか。


『ブルルル』


灰馬が藁を食む。

うん、本物の藁だ。


「んーっ!はぁ、なんか眠くなってきたわ。夜誰かに蹴り起こされたせいよ。寝てきていい?」


「どーぞ」


カミーユが欠伸をしながら部屋を出ていく。

まだ髪の毛に藁をくっ付けてるのに良いのかな。


「ライハさんお久しぶりです!」


一心不乱に体にくっついている藁を取っていると突然声を掛けられた。振り替えるとシラギクさんだった。


「お久しぶりです。お元気そうで」


「シラギクさんこそ。また会えるなんて」


なんだろう心がホワホワする。

分かった。久しぶりに日本人っぽいこと出来るからだ。お辞儀も気兼ねなく出来るし。


『ふんふん。こんにちわー!』


「わあ!喋れるようになったんですね!」


シラギクがネコを抱き抱え喉を擽るとゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らし始めた。手慣れてる。しばらく堪能して、満足したのか「ありがとうございました」とお礼の言葉つきで返された。


『やばいよライハ。めっちゃ気持ちよかった』


喉のゴロゴロが止まらないらしい。

良いなぁ。オレもネコに言われたい。後で教えてもらおう。


「すぐに宿の主人に追加でお部屋をとってもらうよう頼んできますね」


ぱたぱたと軽い足音をさせてシラギクが去っていった。ネコ以外で癒されたの久しぶりだ。

そう思ってると灰馬がオレの服を噛んで引っ張り出した。

違うんだ灰馬くん。君は癒しよりも頼もしさが勝るんだよ。


「ニック!帰ってきたんやな!今カミーユと擦れ違ってん……」


突然ドアが開かれ、誰かが入ってくる。


そして、こちらを見るなり固まった。


「………………、え」


「……兄貴?なんで此処にいんの」


ラビがその人物を見て目を丸くさせた。それは此処にいるとは思わなかった人物だったからだ。そしてオレも。


「……ラビ、ラビイイイイイイイ!!!!」


「うわっ!!止めろよ!!!はずいわ!!!」


ラビに抱き付いてきた人物はレーニォだった。レーニォは涙やら鼻水やらを垂れ流しながらラビにしがみつき泣いた。


「ごめん!ごめんなぁ!間に合わなくてごめんなぁ!!」


「泣くなよ兄貴…、ほんとに、俺までヤバイだろうが…」


ラビの声が震え、目からは大量の涙が零れ落ち始めた。そして二人は強く抱き締めながら泣いた。












「グルァシアス。…グズ…、まさか保護してくれてたなんて、どうやって礼を言えばいいか…」


鼻水をかみ、涙をぬぐったレーニォの顔は悲惨なことになっていたが、それでも最後に見たときよりも晴れやかで、逞しい顔付きだった。

仲間達は気を利かせてくれ、積もる話もあるだろうと灰馬と爬竜馬レックスを連れて出てくれた。


「そんな礼なんていらないです。オレもたくさんラビには助けられてましたし。それよりもレーニォさんがこんなところにいるなんて驚きましたよ。しかもニックさん達と」


「それ、俺も聞きたい」


「ああ、それな」


もう一度鼻をかみ座り直した。


「君がチクセから経つ時、会いに来てくれたやろ?そんときに言った言葉覚えてる?」


「はい、覚えてます」


今になって思えば、なんにも知らないくせに言う言葉じゃなかったな。でも、あの時は本当にそれしか言えなかった。


「あの後、実は君のこと少し恨んだ。他人事だと思ってって、他人事なのにな。それでも、諦めたらそこまでって言葉が嫌に頭ん中ずーっとグルグル回ってて、考えて考えて、やっと気付いたんや。言葉の意味が、俺がやらなきゃ誰がやるって」


ふっとレーニォが笑った。


「そう思ったら、いてもたってもいられんくて、気付いたらここまで来とった。君のおかげや。ほんに、グルァシアス」


レーニォは深く頭を下げた。


「シラギクに教えてもらってん。コーワ人は深い感謝を示すときはこうするって」


「レーニォさん」


「兄貴…」


またラビの声が震え掛けてる。


頭を上げてもらい、そこからオレ達は色んな事を話始めた。それぞれの旅の話を。見てきた事を。そして、これからの事を話し合ったのだった。

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