南方戦線.2
此処で指揮を執っているのはルキオの海軍の大将のセンドウとハンターの統率を執るリオンスシャーレのギルド本部から派遣されたジョージ、そしてプローセルンの飛行部隊を仕切る隊長のルーデルの三人だ。
今ハンターや軍が集まっているのは王都シュリュウ。元は人が賑わい笑顔が絶えなかったこの王都も、もはや住人は残らず避難し、今は王族の一部とその部下、そして戦うことを選んだもの達の体を休め、計画を立てる場所となっていた。
「カリアさん!来てくれたんですか!」
王都に辿り着き、駿馬を預ける場所を探していると、突然声をかけられた。見てみると、ルキオでの知り合いの海軍の一人だった。確か名前はツギシだったか。
「ああ、久しぶりよ。遅れてしまってすまないね。状況はどうなってる?」
「ええ、あまり良くない状況です。既に国土の二分の一が奴等の手に渡ってしまって…。海の方も頑張ってくれてはいるのですが、何せ数が多すぎて。まるで水平線から沸き上がってくる入道雲のように途切れる間もなく襲ってくるんですよ」
お陰で村は消えました。大事なものも含めて。
と、ツギシは最後に付け加えた。
彼の村は海の近くにあった。
最初の攻撃で村の半分が住人ごとやられ、もう半分は悔し涙を流しながら逃げるしかなかったそうだ。
「…もしかして、嫁は…」
「……。死にました…、最初の攻撃で…体の一部も残らずに…」
「………そう」
最後に会ったのは三年前か。ルキオ内を回っているときに知り合い紹介された。とても可愛らしい人だったのを覚えている。
カリアはツギシの肩に手を置く。
「嫁さんの為にも、心から愛したこの国を取り戻さないとね」
「…はい!!!」
瞳に溜まった涙を強く拭い、ツギシは隊長にカリアが来たことを報告しに去っていった。
「…………」
ふとアウソを見ると、眉間にこれでもかと皺が寄っている。
「アウソ、その感情は後に取っとくよ。今はしまって、冷静にならないと」
「……わかってます」
「師匠、その前にアウソを一旦連れていかないと」
「そうだった。ほら、深呼吸。国王様の前でそんな顔してると悲しませるよ」
カリアに言われ、アウソは頬を両手で叩き大きく深呼吸した。
「さすがに国王様の前でこんな顔は駄目だわ。落ち着かんと」
眉間の皺を消し、出来るだけ元の状態へと近付けると、ちょうどカリアが戻ってきた事を伝えにいった門兵がやって来た。
「アウソ様。国王様がお呼びです」
それにアウソは頷く。
「分かりました」
「じゃあ、また後で」
「国王様によろしくね」
センドウの部下に案内され、入ったテントの中で、褐色の肌の彫りの深い顔の女性がカリアを見て瞳を輝かせた。
「キャーッ!!カリア!!久しぶり!!」
「センドウも、生きていて良かったよ」
二人は強く抱擁を交わし、背中を叩く。
「来てくれたんだね!凄くうれしい!キリコも元気そうでよかった!」
「センドウもね。旦那は元気?」
「元気よ!今船に新しい武器を設置してくれてるわ!ところで」
スッとセンドウの顔から明るい笑顔が消えた。
「うちの坊っちゃんは元気?」
「元気よ。今国王様の所へ行ってるよ」
「そうか、元気なら良いんだ。元気なら」
センドウはカリアから少し離れ、腕に巻いていたバンダナを頭に巻き直す。センドウの顔つきが変わった。
「さて、感動の再会はここまでにして、意見交換を始めよう。カリア、今回の旅の途中で、アレと同じものと出会わなかった?もし出会っているのなら、少しでも情報が欲しいんだけど」