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同じ穴の狢.12

全ての攻撃を掻い潜る。時おり操られている人の悲鳴が耳に入り、その度に胸が引き裂かれる感覚を味わいながら心の中で謝った。


強くなったと思ったが、それは間違いだ。


オレは周りにいる人間、誰一人として助けることが出来てないじゃないか。


「ジョウジョーーーー!!!」


襲い掛かってきた剣を弾き、周りにいる人達を突き飛ばしながら、オレは黒剣をジョウジョの首へと滑らせた。


飛ぶ首、しかしそこから噴き出したのは血ではなく、ただの透明な水だった。これは本体では無かった?


「しまった!!」


「悪魔め、よくもっ!!!」


「!!」


右手首に冷たい物が巻き付き、強く後ろに引かれた。


「! ぐああああああっっ!!!」


次いで襲ってきたのは激しい熱と激痛、そして頭痛と吐き気だった。目を向ければそれは神聖属性魔法が付加された刺付きの鎖で、皮膚に接地した部分が切り刻まれるような激痛が走り、それを外そうとしても刺が皮膚に食い込み、また鉄の環に引っ掛かって外れない。


目の前がチカチカと眩み、力が抜けそうになる。


「今だ!!捕縛しろ!!」


次々に投げられる神聖魔法付きの鎖が体中に巻き付いていく。


その度に激痛と脱力感で呼吸すら苦しくなって大きくふらつき、膝を地に着いてしまった。それを好機と見て人々は更に鎖を投げ、地に引き摺り倒し、剣を突き刺す。


それを見てアレックスが絶叫し激しく暴れるが、そちらも錯乱していると屈強な男三人に取り押さえられていた。ジャスティスは撃てない。何故なら、この人達は悪魔の能力によってジョウジョが見えていないだけで、元凶の悪魔オレを倒そうとしているに過ぎないからだ。


誰も悪くない。


悪人ではない人に撃てば、その弾は自分に返ってくる。








気が付けば、既に体の自由は利かなくなっており、常に激痛が走る体では呼吸もままならず血の固まりを吐き出すだけになっていた。

いや、神聖魔法の激痛のせいでわからなくなっているだけだが、一体オレの体にはどれ程の剣や矢が刺さっているのか。むしろ腕ちゃんと付いてる?取れてない?


「…………ネ…コ……、……ァ……ックス…」


くそ、声がでない。


また救えないのか。


頭の中に過るのは楽しかった記憶。次々に甦っては消えていく。


視界が片方しかないのは血が入り込んだからか。それとも傷が付いたのか分からないが、残された方の目から熱いものが流れ出ている。


「見てみろよ、悪魔が涙を流してやがる」


「痛みの生理現象じゃね? それにしてもどうやって入り込んだんだか。拷問して吐かせるか?」


「悪魔は平気で嘘つくってあっただろ。信用できん情報なんて引き出してどうすんだ」


「おい、そろそろ止めを刺そう。剣に聖水をたっぷり掛けてくれ」


「ついでに魔法も魔方陣も付けとくよ。年には念を入れないと」


肩を踏みつけられる。

男がオレの首に狙いをつけているらしい。剣からは今まで見た中で最高濃度の清らかな白い光と靄が纒わりついていた。

あんだけの濃度の神聖魔法喰らったら、死ぬのかな。でももう魔力も操れないし抵抗も出来ない。


「犠牲になった奴等の恨みだ。せいぜい地の底で苦しめ」


剣が振り下ろされる。


結局何にも成し遂げられなかった人生だった。


そう諦めて、目を閉じた。






















「諦めるんじゃねぇ!!!!」






ガキィンッ!

すぐ側で金属同士が接触した音が聞こえた。男の剣は大きく跳ね上げられ、何もなかった空間からベールが剥がれるようにして双剣を振り切った体制の桃色の髪の青年が現れた。


「恩も返せてねぇ内に死なれたら困るんだよ!!」


ラヴィーノが怒りをあらわにした顔で、オレの体に魔方陣の札を貼り付けた。次の瞬間、剣や矢がオレの体から反発するようにして全て抜け落ち、鎖さえも浮遊してオレの戒めがほどけた。


「!? お前も犠牲者か!!」


「うるっせええええ!!!その言葉そのままそっくり返してやるわああああ!!!! 行け!!ライハ!! 奴は死体の山の中だ!!」


ラビの言葉で弾かれるように起き上がり、蹴り飛ばされていた黒剣を掴むと、死体の山へと向かい最大電圧の雷付きの黒剣を突き刺した。


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