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同じ穴の狢.1

ネコと通信をしつつ、進んでいき、ふと嫌な視線を感じて足を止めた。ヌメリとした何とも言えないような、まるで肉食獣が獲物の頬を舌で舐める時の不快感を感じる。近くにいる。


だけどネコからは連絡がない。


敵意がないのか?


「何かいんのか?」


沈黙に耐えられずラビが不安げに訊ねてくる。

アレックスは既にオレの獲物を察知すると慎重に動くのを分かっていて、ジャスティスを取り出し警戒している。


灰馬も何だかソワソワと落ち着かず、アレックスの爬竜馬のレックスは逃げたそうに首を後ろに逸らしていた。


灰馬は臆病じゃない。だけど自分の強さを分かっていて、強敵の前だと腑に落ちない顔をしつつも逃げようとする。


今回はそれだ。


「ラビ、獲物が近くにいる。結構強いかもしれないから、接近は止めた方が良さそうだ。灰馬とレックスを連れてここで待ってるか?」


「…………………、……様子を見てからじゃ遅いかな?」


「ルツァ級だと無理だね」


ラビの質問にアレックスが即答。

ルツァは敵の顔を覚えるから、危ない。しかも弱いものから仕留めようとする賢いのもいる。


「…わかった。ここで荷物持ちしてるよ。魔方陣本と、あと意識逸らしの魔方陣をいくつか欲しい」


光彩魔法だけじゃ完全に気配を消せない。

人には有効だが、それは人が目の情報を使って周りを把握しているからだ。しかし獣達はそうじゃない。主に鼻を使い、超音波や熱を感知するのもいる。


この意識逸らしの魔方陣は、そういった臭いや熱も含めてぼやかすのだ。それ知ったの最近だけどな。


魔方陣本と意識逸らしの魔方陣を描いた紙を数枚手渡し、戦闘に必要のない物を預けた。


「じゃあ、行ってくる」


「気を付けてな」


「何かあったら叫ぶんだぞ」


身を低くして進む。後ろを見ると、ラビの姿が駿馬やレックスごと消えていた。こういうの本当に上手いな。これで戦闘能力が高かったらきっと忍者のような活躍をしていた事だろう。


「(ネコ、ネコ)」


ネコに呼び掛けるが、返答がない。


上を見ても枝や葉が邪魔で見えないが、そんなに遠くないはずなのに返答のひとつも返さないのは不思議だった。何かあったのかと思ったが、それでもきっと何かしらの情報は送るはず。何せ魔力共有による心話なのだから、妨害されるようなものは無い筈なのだ。


あるとするなら恐らく魔力を干渉してくるやつだが、ネコやオレの呪いではそれが効かない。


「ネコから連絡来ないね」


「…うん。心配だ」


せめて無事かどうかの確認だけでもしたい。


「…!」


ゾロリと這う音。


左斜め下から、左にはアレックスがいる!


「アレックス!!足元ーー」


「っ!!!!?」


振り返った瞬間アレックスの体がひっくり返り、凄い勢いで上へと持っていかれる。急いで矢を射るが、それに当たってもアレックスの体は上昇を続ける。


左足首に植物の蔦が巻き付いていた。


「ショット!!!」


ズバンと、アレックスの銃口から火が放たれ、燃える弾は蔦に着弾して弾けとんだ。燃えながら散る破片と共にアレックスが落ちてくるが、アレックスは空中で何とか体制を整え無事着地をした。


「フォオオオオオ!!!超ビックリしたんだぞ!!!突然視界が回ったからどっちに引っ張られてるのか分かんなかったよ!!!」


「無事で良かった!!来るぞ!!」


上を見上げればたくさんの蔦が競ってオレ達を捕まえようと降ってくる。


「火事にはするなよ!」


「オーライ!!そっちもね!!」


二手に別れ、襲い掛かってくる蔦を黒剣で切断し、雷を飛ばして消し炭にする。アレックスは爆発属性の弾丸を次々に放ち、蔦を高いところから破壊していった。


「ラスト!」


最後の蔦をアレックスが切断し、本体は何処だと片目を粒子モードに切り替えて探していると、耳が嫌な音を拾い上げる。


目を向けると、一本の大木がこちらに向かって倒れてきていた。


「ハァ!?」


予想外の事態に一瞬固まるアレックスを掴み、外にぶん投げ、急いでそこから飛び退くと、大木が地面に接触した瞬間、大木が幾千もの青紫色の蝶に変わり視界の中を飛び交った。


何だこれは、幻術か!?

しかし幻術はオレには効かないはず。


『おやぁ?これはこれは珍しい』


「!」


耳元で艶やかな声と共に後ろから冷たいものが首を這い上がり顎を掴んで上を向かせる。


視界に入る焦げ茶色の髪がさらりと揺れる。

タレ目の目尻には紅の目弾き、女性?

赤い唇が弧を描き、赤紫色の瞳が嬉しそうに細められた。


『我ら魔族の裏切り者じゃないか』

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