弔う
「アレックスは後方支援、ネコは状況に応じて、オレが接近戦と囮を担う。ラビは無理をしなくていい。でも出来るなら姿を消しながら接近して目でも潰してくれたら凄い助かる」
「お前普通の顔して凄い事要求してくるよな。いいよ、分かったよ、目とついでに鼻の穴に木の棒でも突っ込んでやるよ」
「ヘイ!俺の出番を取るなよ!やることがなくなっちゃうだろ!?」
「アレックスは最大戦力で切り札だから、ヤバイときは助けてくれないかな。ジャスティスの火力は凄いから頼りにしてる」
「なんだ、それならすぐに合図をしてくれよ!飛びっきりのをぶちこんでやる!」
『またライハに撃ったら咬むからな』
「撃たないって、君もそろそろ信頼してくれ!」
そんな感じで軽い作戦会議を済ませると、早速魔物の後を追う。足跡は犬に似ているが、少し違う。狸に近いかな、ただやたら大きいのと、時折地面に残る何かを引きずる跡が気になる。
「なぁ、あそこに変な山がある」
辺りを警戒していたラビが一点を指差しそう言った。ラビは長年の奴隷生活で生き延びる為に僅かな異変でも察知できるようになっていた。それは獲物の気配を感じられるオレや敵意の気配が分かるネコ、敵の隙を当てられるアレックスでさえも気が付かない物を見付けてくれるからとても役に立つ。
「どこ?」
ラビの指差す方向に目を向けてもよくわからない。
「あの木と木の間に…」
「あれか!」
「どれ!?」
『?』
いまだに見付けられないネコとアレックスも近付くとようやくソレが見えてきた。ソレは人骨と鎧の破片が積み上げられて出来た物で、ラビは目を逸らし、アレックスは「うわあ」と声を上げた。
「…肉片は残ってないのか。しゃぶり尽くされたのか?」
手に取りまじまじと見詰める。全ての骨が綺麗だった。
「よく手にできるな」
「最近慣れてきちゃって」
「その慣れはきっと慣れちゃいけないものだぞ」
「でもそのお陰でちゃんと弔ってやれるから。ネコ、その辺に良い枝落ちてない?」
『あいよ』
ネコが尻尾で良い感じの大枝と蔦を持ってきた。
その間みんなで骨を一ヶ所に集め、土寄せの魔方陣を描いた。魔力を黒剣を使って流し込むと、骨の山がズブズブと土の中に沈んでいき、沈んだ分の土が縁から盛り上がって骨を埋めていった。すっかり土の小山に成り果てたすぐそばに枝を使って墓標を作って突き立て、手を合わせた。
「君いつもそんなことしてるのかい?」
「余裕があったらだけど」
服の土を払いのけながらアレックスに答えた。
「ふーん。なんか知人のコーワ人に似てる」
「へぇ」
そうなのか。
コーワ人になんだか親近感が湧いた。
「にしてもここに集めてるってことは絶対活動範囲だろうな。気を引き締めねぇと」
『ねぇねぇ、なんだったらネコが上から見てる?足跡から結構大きそうじゃん』
「そうだね、じゃあお願い」
『おっけー!』
背中から翼が生えると、ネコは飛んでいった。
それを見てラビが一言。
「使い魔万能過ぎるだろ」
「実はオレもそう思ってる」