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腹の虫

この距離ならすぐに狙える。

弓を取り出し五人いる中の後ろの鞭男の腕を目掛けて射った。


──カンッ!


矢は勢いよく発射され、男の腕を掠めた。しまった、勘付かれて動かれたか。しかし、それでも突然の攻撃に驚いた鞭男は傷付いた腕を押さえ込み、その間に他の男達がこちらに矢を向けて射ってきた。


次々に矢がこちら目掛けて飛んでくるが、既に体制を低くして離れており、少し回り込んで更に鞭男の腕を狙う。


「ぐわっ!」


矢が突き刺さり鞭を取り零す。


「ユジン!」


「くそっ!複数いるのか!?」


金髪青年を捕らえている奴が保身のために後ろへと下がった。それを確認しつつ矢を避けながら移動し、今度は別の男の耳すれすれを狙った。


「おい!早く仕留めろ!」


「移動音もしやがらねえ!なんだこいつら!」


「直接ぶった斬ってやる!!」


三人ほどが矢で仕止めるのを諦め腰の剣を抜いてやって来る。


今だ!


『グルオゥゥゥッ!!!』


虎ほどの大きさになったネコが大鷲の翼を広げて空から金髪青年を狙う。


「!!?」


突然の襲撃に動きが止まり、ネコが鳥の足に変化させた手で青年を鷲掴みにすると再び空へと飛び去っていく。風圧で転がる奴がいるなか、踏ん張ることが出来た奴が剣を投げたが届くはずもない。それに余所見は禁物だ。


さかさず雷の矢を射つ。矢は地面へと突き刺さり、地面を伝って周りの男達を感電させた。しかし今回はこんな森の中で気絶させるのも悪い気がして、短時間痺れさせる事にした。


バタバタと倒れる男達を確認して、オレはずっと気になっていた男へと走っていき、顔を見る。こいつ前オレの事暗殺しようとしたヤツじゃないか。


「げふぅっ!?」


ムカついたので背中を思い切り踏んづけてから、どう見ても男達の物ではない鞄を回収してすぐさま撤退した。












『ライハー!』


ネコが翼を広げて戻ってくる。しかし大きさは普通の猫の戻っていた。


「ネコおかえり、どうだった?」


『ちゃんとライハの罠に嵌まって全然違うところを探してるよ』


「付け焼き刃だったけど、効くもんだな」


カツキから教わった肉食動物や人間を騙す痕跡の残し方。わざと荒れた方へ足跡を微かにつけて、途中で根をや石を踏んで足跡を消し木に登って元の道へと戻っていく。そうすることによって、余程の熟練者じゃない限りはやり過ごせるらしい。なんでそんな技を知っているというと、リトービットも拐い屋の標的なんだと。なんで前会ったリトービットが拐い屋をしているのか謎だが、何か事情があるのだろう。


伏せしている灰馬にうつ伏せで寝かしている金髪青年は衰弱に負けて寝ていた。目元に隈があるから長い間寝ていないと思われる。


「これは当分起きないな。どうしよう」


『街に運ぶ?』


「そうだなぁ。でも証明とか、入ってるかな?」


この青年がハンターなら登録証ですぐなんだが。村ならともかくも街はホイホイ人を入れてはくれない。何か入っていてくれと探していると、盛大な腹の音が鳴った。


思わずネコを見ると首を横に振ってる。

違うのか。

じゃあ誰が、と、思った瞬間、肩に手が置かれた。


「!?」


驚いて振り替えると、灰馬に寝かせている青年の手だった。青年は青白い顔を上げ、泣きそうな顔でこう言った。


「すまないが、君、食べ物とか持ってないだろうか…?」


盛大な腹の音が青年から鳴り響いた。


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