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山脈越え.8

考え付いた作戦、気付かれる前に開いて入れる作戦。


「オレ一人だとこう言う作戦しか思い付かないんだよな」


基本、仲間に丸投げ状態だったし、ネコの助けがあってこその成功する作戦とか多かったし。あれ、これオレ一人で遂行する作戦初じゃない?


足で氷雹岩を蹴ったり転がしたりしながらベストの力加減を調べ、頭の中で何度もシュミレーション。


「よし、よし、いくぞ。オレは出来る出来る大丈夫だ!」


大きく深呼吸をして、タイミングを計る。

いち、に、さんっ!!!!


素早くドアを開き、氷雹岩を蹴り入れようとしたところで中のハチ三匹と目があった。お邪魔します。顎をチキチキ言わせながらこちらへ突っ込んできたので急いで氷雹岩を蹴り入れて扉を閉めた。


次の瞬間ドアに固いものが勢いよくぶつかる音が二つ。


「うぇぇ、こえー……」


ただでさえスズメバチで怖いのに、あれ完全にロックオンされた。次やったら倍の数こっち来るよ。


「おー、できたかー?」


そうすると丁度カツキが次の氷雹岩を持ってやってきた。


「じゃあこれも頼むわ」


ゴロリと足元に転がる氷雹岩。

流れてくる冷気を感じながら、ソッと覗き窓から見てみたら、五匹のハチがこっちを見てた。


これ無理だわ。どうにかして気をそらさないと。


氷雹岩の欠片を手に取る。一応手が凍るか調べるが、少しならまだ大丈夫だが、長く持っていると危ない。ちなみにカツキは車に座って頑張れと手を振っている。


蹴ってドア前まで持ってくると、欠片を左手、ノブを右手に持ち、勢いよく開くと同時に欠片を中に投げ入れた。欠片は弧を描きながら奥の方へ落ちていく、ハチが欠片に気をとられ後ろを向いた瞬間、氷雹岩を蹴り入れようとしたところで、先程蹴り入れた氷雹岩にぶつかって中に入らない。


「うそだろ!?ヤバイヤバイヤバイ」


どんなに蹴っても入らない。しかも氷雹石がつっかえてドアも閉まらない。


そうしているうちに、欠片に興味をなくしたハチがこちらを向いた。こいつはやべえ。


キチキチキチキチと、警戒音を放ちながらこちらにハチが飛んできた。


これはもうこの扉を利用して迎え撃つしかないのかと魔法を発動させようとしたところ、頭上をオレンジ色の物体が複数飛んでいった。それは欠片と同じ所へと落下して、ハチがそこへと群がっていく。


チャンスだ!!


「うぉりやああああああ!!!!!」


蹴り入れ作戦はダメだと、馬鹿みたいに重い氷雹岩を抱え上げ、部屋の中へと投げた。

よく投げれたと思うよ。火事場の馬鹿力だったんだね。


部屋の床にぶつかって氷雹岩が割れると同時にドアを全力で閉めて鍵を閉めた。


「はぁーはぁー、怖かった…」


未だに心臓が早鐘を打っている。実際終わったと思った。

それにしても、あのオレンジ色の物体はなんだったんだ?ふと、後ろを振り向くとカツキがオレンジ色の物体を食べていた。


「けっこー危なかったな。おつかれ、まあこれでも食って待とうや」


そう言って差し出されたのは干し柿だった。これか。さっき飛んでいったのは。


「あ、これ美味いですね」


「だろ?貴重な糖分だぞ」


車に腰掛け干し柿をもりもり齧りながらしばらく待ち、食べ終わったところで覗き窓を開けると、ハチの動きがだいぶ鈍くなっていた。体に霜も付始めているから、あと少し待とう。


二個目の干し柿を食べ終わる頃にまた覗くと、ハチが見事に凍り付いていた。


これで作業が出来る。


「どうだ?」


「完璧ですわ」


ドアを開け、近くのハチから順に感電させていき、奥の亀裂の様子を見ると、ヒビが広がり掛けていた。これはよくない。早速亀裂を塞ぐ魔方陣を魔力を乗せた指で描いていき、対価のハチを三匹設置した。

ここのところニックの魔方陣を練習しているからか、描くスピードが早くなっていた。やったぜ。


早速発動させて亀裂を閉じると、他にも亀裂が無いかを確認してから戻ると、カツキがオオヤンバスズメバチを見て何やら考え込んでいた。


もしかしてどうやって処分するかとか考えてるのか。


「これ、うまそうだな」


違った。


「確かにスズメバチは美味しいよ。少し甘いし」


「オメ、食ったことあんのか!?」


「違う種類だったけど、同じスズメバチの名前だったし。多分それも美味いはず」


マテラの小動物(魔物)に苦戦していた頃、これ美味いんよとカリアに言われ、針を抜いて丸焼きで食べたことがある。外側固いのに中がホクホクして不思議な食感だった。

話しているうちにカツキの目がキラキラ輝き出した。


「ダンゴムシはあるけどハチは初めてだな!じゃあこれを夕食に出そう!運ぶの手伝え!」


そうして、夜ご飯のメニューはオオヤンバスズメバチの焼肉となったのであった。

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