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一人と一匹.4

「紅葉がある」


『ライハ!ライハ!あっちに青い葉っぱあったぞ!アレは何て言うんだ?』


「え、分かんない。青葉じゃ意味違うし、蒼葉(そうよう)とか?」


『そーよーか!』


「適当だからな!誰かに言いふらすんじゃ無いぞ!」


山道を登り始め、視界は鮮やかになっていく。まさしく秋って感じだ。勿論あちらではないのでわけの分からない色の変化をするものもいるが。坂道は険しいが、まだ道があるだけましだろう。だが、そのうち道すらも怪しい所へと変わっていく。


スマホの地図と、買った地図を見比べながら何とか進める所を行き、大きな岩を灰馬をネコと協力して引き上げながら越えると、遂にそれらしい洞窟を発見した。


「これが、ヤマネ洞窟?」


『えー、なんか気持ち悪くない?』


「ネコもそう思うか。オレもだ」


何故か洞窟の周りには玉ねぎが杭に串刺しになった物がたくさん設置されていた。何のためにこんなことをするのか。意味が分からない。

しかも杭だけじゃなく筒状の細い串も、何の恨みかと思うほど刺さってる。


「……呪われた土地じゃないだろうな」


『魔力見てみたら?』


「異常なし」


『体調は?』


「変化なし」


『じゃあ大丈夫じゃない?』


オレの能力と呪いをセンサー代わりか。

確かに呪い関係だと(すこぶ)る体調良くなるからあながち間違いではないか。

一応念の為洞窟の中に石を投げたが、何の反応も無かった。


なので、オレはこの可哀想な玉ねぎを前衛的な芸術だと思うようにした。


「行くか。一応玉ねぎには触るなよ。後翼も仕舞え」


『あいあいさー!』


灰馬にもアレは食べてはいけないと教え込んでから進む。群集地へ踏み入れても変化なし。本当にただの飾りだったのか。玉葱臭凄いけど。そう、ほっと息を吐いた。だが。


『ねぇ、なんかすっごく目が痛い』


「え」


ネコが突然、目の痛みを訴え始めた。

まさか、罠だったのか!?


「あ、やばいオレも目があああああ!!!!」


涙が止まらない!

そういえば忘れてたけど玉葱切った時は必ず目が痛くなるのを今更ながら思い出した。やはりこれは罠だったのだ!!


『ヒヒヒヒィーーーン!!』


「うわああああ!!!」


突然灰馬が竿立(さおだ)ちになり、猛ダッシュ!しまった!灰馬も目がやられたのか!


「止まれぇ!止まれぇ!」


痛みと涙で前が見えない!灰馬を(ぎょ)そうとするも、玉葱のせいでパニックを起こしているのか全然言うことを聞いてくれない!


それどころかしがみついてないとあっという間に振り落とされる!!


そして何よりマズいのが、すぐに左に曲がるのを直線し、その後はグニャグニャと曲がりまくっていて、既にオレの頭の中の地図はお役目御免状態になり、今一体どの方向を向いているのかすらも分からない!何か踏んだような感触もあったけど確かめられてない!


このままでは確実に迷子になる!雪が乗っかる山脈の中で迷子は嫌だ!!


「お願いですから止まってくださあああいい!!!!」













水筒の水で顔を洗う。それだけでも痛みがだいぶマシになった。ネコも顔を拭ってやり、灰馬の目元も同様に。まぁ、もう手遅れなんだけどね。


辺りを見回すが何も見えない。


ホヅキで照らしても岩壁しか分からない。方向も、位置も、入口さえ分からない。


「前途多難すぎる」


そうです。迷子になりました。


『ネコ玉葱嫌い』


「ああ、オレも玉葱嫌いになりそうだ」


ただし過熱されたのは除く。

これからは玉葱刺しを見掛けたら全力で避けよう。


「ネコこれ持ってて」


『んー』


「灰馬は伏せ!」


『ブルルフ……』


ネコにホヅキを持って貰い、炭を取り出す。そしてニックの本を見ながら、裂いた布に指先に魔力を集めながら魔方陣を描いた。火の魔方陣。基本級だ。それを炭に巻き付けてカイロの中に入れる。

しっかり蓋をしてから魔力を流し込むと、中で火が生まれ、炭に燃え移る。しばらくしてから、通気孔から息を思い切り吹き込むと表面の火は消え、炭の中の火だけが残った。これでとうぶん温かい。


ネコの分と灰馬の分のカイロも準備してから、ホヅキの明かりをネコから受け取りスマホの地図を開いた。


現在地を確認すると、目的だった通路は随分遠くになってしまっていた。


引き返そうかと思いながら地図を収縮して近道を探すと、何と今いる通路の遥か先で合流できる地点を発見した。良かった、時間の無駄にならずに済みそう。


『引き返すの?』


「いや、このまま進もう。先の方で合流できるらしいから」


『わかった!』


言われた通り伏せをしていた灰馬を立たせ、跨がると、暗い洞窟の中をネコと歌を歌いながら進んでいった。

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