山之都.6
杉てっぺん近くから先程の場所を探すが、枝を登るときにグルグル回ってたから方向がわからなくなった。
「どっちだ……!」
どこを向いても同じ景色。
「何が?」
「どしたの?にーちゃん」
そんなオレを見て天狗の子供がネコとのお喋りを止めて訪ねてきてくれた。
「裂目……っていうか、竹の梯子の方向」
「もしかして魔物が沸いてた所?」
「それです」
「あっちー!」
反対方向を指差す。
逆だったか。
くるりと方向転換をして再度訊ねて、ようやく飛ぶ方向が決まった。後はネコにちょっと頑張って貰えばオーケーだ。
『ライハ!ライハ!ネコ良い飛び方教えてもらったよ!』
「うん」
知ってる。全部聞いてた。
『止まり方も教わったよ!』
「うん」
それも知ってる。
『だからオオブネに乗ったつもりで任せとけ!!』
ドニャ顔でいるだろうネコの頭を撫でてやった。翼はもう出ているらしく、視界の端にチラチラ見える。
「さすがネコだ。じゃあよろしく頼む」
『頼まれた!!』
長い尻尾が胴に巻き付き、体を固定する。
羽も更に大きく、視界にしっかり入るようになった。
てか、あれ、オレは大きくなったネコに乗るつもりでいたのにまさかのぶら下がり?
『いくぞ!』
「ちょっと待って心の準備が──」
耳元で風が巻き起こり、体が枝から落ちた。
「ーーーーー!!!」
一瞬肝が冷えたが、次の瞬間にはネコの翼は風を捕らえ、羽ばたくごとに高く高く飛翔した。
『スッゴい!ネコちゃんと飛んでる!!』
思わず恐怖で叫びそうになったが、その後の景色で恐怖は霧散した。前を向くと、青々とした山が連なり、雲が形を変えながらゆっくりと進んでいく。別の方向には大きな湖のような海があり、その上を滑るように帆船が走っている。反対側にはウォーローと、頂上が雲に隠れた大山脈が。そして、後ろにはエルトゥフの森が広がっていた。
いつまでも空を散歩していたいとは思ったが、オレも用事を済ませないといけない。
足元をみれば、木々の間に竹の梯子が見える。
そして、そこから少し離れた所に、今まで見た中で最大級の魔方陣が見付かった。半径約15mの巨大な魔方陣。それが木の色を変えて作り出されていた。
ニックさん。
こんなん普通に探して見付かるわけ無いじゃないですか。
そんなツッコミを心の中に入れつつ、雷の矢に反転の呪いを込めて、魔方陣を解除していった。
ネコと共に亀裂の所へ降りると、すぐそばに、二つの装飾品が置いてあった。一つは細かく装飾された金色の箱。もう一つは、飾り玉のついた飾り紐みたいな物。そして、古びた本。
箱を拾い上げると、箱は真っ二つに割れ、中から白の玉が転がりだしてきた。
「……これ、呪いの装備か?」
『仲間?仲間?』
「そうだな、呪いの装備ジャンル的には仲間だな」
既に道連れ系の呪いの装備は装着済みだが。
スマホを取り出し一覧表を見ると、やはり呪いの装備で、二つの項目の色が変わっていた。
【忘却の幸玉】
効果・身に付けると、装着者の記憶を少しずつ変えたり、消していく。宿主を選ぶ。
【暴食の主】
効果・装着者のあらたに入手した装備を食べ破壊する。紐の届く範囲に限られる。
「要らねええええええええ!!!!」
嫌がらせかよ!!!
オレは思いきりその二つの装備を地面に叩き付けた。




