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山之都.5

クウカクに出掛けることを伝え、スコップ片手にまたあの元亀裂の元へと戻ってきた。確か半径15mとか言ってたな。あれ?12mだったか?まぁいい。取り合えず片っ端から調べまくってやるぜ!!


『探すって言ってもどんなヤツなのさ』


「わからん!」


『ええー』


こいつまじかよという顔でオレの事を見上げてきたが、知らないものは知らない。

そして、とうぜんアイツは楽に見付かるようにしていないはずだ。絶対。夕飯賭けても良い。


「けど多分あいつは絶対に何か細工をしている!それだけは確信をもって言える!意識逸らし以上の何かめんどくさいのをしていると勘が言ってるから、できるだけ集中して探って貰いたい!!」


『……ちょっとネコ腹痛が』


「肉三枚出たらお前に譲ろう」


『よーし任せとけ!』


尻尾をピンと伸ばして、半分スキップ混じりにネコは探索を開始した。


「さて、オレも全力で探さにゃー」


スコップを肩に担ぎ、全ての探索眼(魔力靄&色・風の帯・粒子モード)を発動させると、全力で魔方陣を探し始めるのであった。


意外と、見付からないものだ。


あれから木の上や土も掘り返してみたが無い。本当に吃驚するほど無い。何かを見逃したのかともう一周して見たが、それらしい物は見当たらず、ネコも肉の効力が切れてきてウダウダし始めていた。ここままじゃ肉損だ。なんとしても手に入れなければならない。


何かヒントでも無いかと手紙を読み返すがそれらしいものは書いてない。まさか火で炙ると浮き出てくるとかそんなんじゃ無いだろうなと思いながら裏面も目をやり、何か見えた。


見えたって言うか、浮き出てたって言うのが正しいか。


「なんで、さっき見たときは何もなかったぞ」


粒子の砂嵐が邪魔で読みにくいので解除すると、文字が一緒に消えた。


「…はい?」


もう一度粒子モード。文字が浮かび上がる。

解除。文字も消える。


なにこれ、超めんどくさい。


通常の粒子だと荒すぎで文字が見えないので、凄く頑張って粒子を小さなものにしていくと、ようやく文字が見えた。




── 灯台もと暗し。

この書き方は魔術師か同胞へ秘密の文を送るときに使うものだ。筆先にインクではなく魔力を乗せて書けばいい。見るときは掌に魔力を乗せて撫でれば数分浮かび上がる。お前には関係ないだろうが一応覚えておけ。今回オレは通伝針を使ったがな。


ああ、そうだ。

ここは翼を持つものにとってとても良い国だ。お前もたまには空を散歩してみるのも良いんじゃないか?






ヒント、か?これ。

いや、ヒントじゃないな、これ。


「んんんんーーーー~~?」


『ライハー、もう疲れたよー、帰りたいー』


声に混じってニャーニャーとした鳴き声を発しながらネコが茂みからやって来た。全身に葉っぱがついている。


「待って、あともう少しだから」


『もう見付からないよー、何時間探してると思ってんのさーぁ』


ネコが服をよじ登ってくる。そして、ようやくネコが紙を見た。


『……あいつ飛べたっけ?』


「! ネコこれ見えるの?」


『普通に見えるけど』


本当に思うけどネコチートだわ。さすが元二代目勇者やってただけあるわ。


「ネコって空飛べる」


『最近羽生やしてみる練習したけど』


「できるの!?」


『けど、ぶっちゃけ飛んでるよりは滑空してる感じ』


「でも一応飛べるんだな!?」


『うん、一応、ね』


「確かめたいことがあるから少し来てくれない?」


ネコを抱えて長い梯子を登り、更に近くの枝を使って更に上へ上へと上がる。亀裂のあるところを眺める。空を見上げ、もう少し高い所は無いかと見渡すと、あった。杉木だ。それが森を突き出すように生えてる。


(あそこからなら、高さもあるし見えるかな)


「よっ!」


枝から飛び降り、確認した杉木の方向へ走る。


普通に行っては遠回りになるので、身体能力向上で枝や止まり木を伝って進んでいく。途中、天狗達がそんな移動方法を取る人間が珍しいのか、不思議そうな顔や驚いた顔でこちらを見ていた。


「人間のにーちゃんどこ行くの?」


ここに来る時に見下ろしていた子供の天狗達が面白がって付いてきた。


「杉木だよ」


「大山主様のところに行くの?近道教えてあげるよ!」


「ついてきなよ」


「こっちこっち!」


子供天狗達が先導してくれている。

ありがたい。


子供達の案内のお陰で、杉木へと辿り着いた。

やっぱり杉はまっすぐ高く聳え立ってる。これ、登れるかなと思ったが、子供が更に手招きをしているので着いていくと、枝がちょうど登れそうな感じになっている所を見付けた。


普通なら登れないが、今は身体能力向上をしているので、ぎりぎり行けるだろう。


『登るの?』


「登る。上に着いたらオレを抱えて飛んで」


『あいかわらず無茶言う飼い主だわー』


呆れ返るネコ。


「すっげ!ネコ喋ってる!」


「ネコ喋るんだね!」


「喋るの鳥だけだと思ってた」


登る間子供達はずっと着いてきた。

パタパタと器用に翼を動かし、その場に留まったりと、天狗はとても飛行能力が優れているらしい。


「ねぇ、そういやにーちゃんは飛べないの?」


「バカだな。人間は天狗じゃないから飛べないんだよ」


「この前飛んでたの見たし!」


「人間が飛んでたのか?」


質問をすると、疑われていた方の子供が嬉しそうな顔をしていた。


「そう!なんかね!風の渦に乗るみたいに飛んでたんだよ!翼もないのに!」


「それは、凄いな」


ニックの魔法、オレは解除とか蔓のやつしか見たことなかったが、実はとても凄い魔術師なんだろうとは思ってたけど。

飛べるのか、あいつ。


「オレも飛んでみたいな」


鳥みたいに。


『ネコ使って飛べるぞ!!!』


なんか急に怒り出したネコが尻尾で激しく頭を叩いてきた。止めて、落ちるから止めて。


「ネコなのに飛べるの?」


『翼を生やせるんだぜ!』


「嘘だ~。ネコは翼無いんだよ」


『見せようか?それ!』


耳元で風が発生したと思ったら、目の前に黒い翼が現れた。え、今生やしたの?オレ見れないじゃん。


子供が「ほんとだ!!スゲー!!」と興奮している。


黙々と登りながらお預け状態オレ。

頂上までもう少しなのに、後ろ向いたら落ちるから見れなくて辛い。


その間、ネコと子供達はオレの事無視で飛び方の話で盛り上がっていた。

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