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山之都.2

クウカクは、鴉天狗族の部落で育った大天狗族の人で、今はそこの長の補佐をしている人らしい。


門から幾つもの通路と階段を行く。

木の上を馬を引いてだが、何となくその光景が変な感じだ。街はやはり有翼人種の街ならではの作りで、止まり木がそこらにあり、今渡っているこの廊下も飛べないものが移動できるようにと設置されただけの存在が強調されている気もする程に歩く人がいない。


本当にオレ達だけ。


時たま上の方から翼の生えた子供たちが興味深そうに止まり木からこちらを伺い見ていた。

三人とも翼が違う。ここ山之都には天狗族以外にも手半鳥族ハルピュイアがいる。

形は少し違うものの、それでも仲良く暮らしているとか。


しばらく歩き、ようやく家が集まっているところへと辿り着いた。


「風車の数」


カラカラと音を立てて多くの風車のような物が回っている。それを眺めながら目的の家へと目指して歩いていると、羽ばたく音が近付いてきた。


「カリア!久し振りだなーおい!!」


上から声を掛けられ見上げると、水色が混じった白髪に、白い翼をはためかせたおっさんが大きな籠を抱えて飛んでいた。


「クウカク!!元気そうね!なんか怪我してるけど!」


良く見ればこの人も足やら腕やらに包帯が。


「ちょっと事情があってな。立ち話もなんだ!家でゆっくり話そう!みんなも来てくれ!」


一際大きく羽ばたくと、クウカクは先に飛んでいってしまった。包帯を巻いているが表情は明るい。ますます不思議だった。


クウカクの家へと着くと、クウカクの隣には青みの強い黒色の綺麗な女性が。あれがクウカクの奥さんか。翼は烏のようで、ちゃんとした鴉天狗のようだ。


「お待ちしておりました。どうぞ。駿馬たちはこちらで預からせて頂きます」


女性が駿馬四頭を引いて歩いていく。

灰馬め、オレに対してはよく噛みついてくるくせに女性にはそんな様子は全く無い。誰にでも噛み付くのも問題だから別にいいけど。


部屋に入り、机に案内される。


椅子の形が面白い。背もたれが丁度羽を避けるようにTの字型だ。クウカクがお茶を出し、お互い自己紹介を済ませた。


「本当にあなた方は運が良い」


クウカクが椅子に腰掛けながらそう切り出した。


「ここで何かあったのですか?」


「実は、つい最近、山の向こうから魔物の群れが現れて、乱闘状態になったんですよ」


「乱闘、もしかしてそれって悪魔とかいませんでした?」


「悪魔……は居なかったが、ああ、そうだ。エルトゥフの森でなんかエライもんはいたな。真っ赤の首が分かれた大きな蛇」


「ブフゥッ」


思わずお茶を吹き掛けた。


そうか、あの奥に見えた山はここだったのか。


「リューシュよ」


「リューシュね」


「リューシュさ」


「なんだ知り合いか?」


驚いた顔のクウカク。


「…………何て言う関係?敵?」


「敵じゃない?」


「カリアさんめっちゃ目ェ付けられてましたね」


「笑い事じゃ無かったんだけど」


ジトリとカリアがこちらを見る。

お互い死にかけましたもんね。


「その蛇の前に結構強いやつがいて、こっちも全力で応戦してたんだが、もうだめだと思ってるところに助けてくれた奴等がいて、その元凶を消してくれたんだ」


「元凶って?」


「なんか、世界の亀裂とか」


ガタンと音がなる。カリアが驚いた顔で立ち上がりかけて椅子が倒れていた。


「どうした?」


「クウカク、その亀裂の所へ行くことは出来ない?」


「できるが、行くか?」

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