素材を集めよ!.10
明日はちょっと山登ってくるので、お休みしまーす。
アーリャが泣きながら肉を食べている。泣くほどに美味しかったか、よかったよかった。そんな様子を見ながら、ネコにもあげつつ食べる。やっぱり角兎は美味いな。噛めば噛むほど旨味が溢れ出す。
それにゆっくり食べられるのが良い。
普段は他の魔物がやって来るから、そそくさと焼いた肉をかじりながら逃げるように移動しないといけないけれど、黒の周りは魔物があまりいないから、のんびりできるのだ。
「わたし、始めて魔物を食べたのですけど、こんなに美味しいのですね」
「こんなに美味しいのはなかなかいないけど、角兎は普通のでも充分美味しいんよ」
「そうなのですか。もっと早く知れたら良かったなぁ」
カリアもアーリャもあまりにも美味し過ぎたのか敬語が抜けてるが、双方ともに肉に夢中で気付いていないらしい。
美味いものの前には国も種族も無いという諺がこの世界にはあるけど、まさしくそれだ。それにしてもこの肉、いつも塩と唐柿粉や胡椒での味付けばかりだけど、シチューとかにしたら絶対に美味いよな。
いつか作って食べよう。
「そういえば試験の結果とかはどんな感じなんすか?」
アウソが訊ねると、
「ええ、その事ですが」
アーリャはコホンと一つ咳払いをすると姿勢を正した。
「正直想像以上だったので、判断に困っています。合格なのは間違いありませんが、ランクを付けるのに、一度戻ってギルド長と相談をする必要があります」
「……ということは、更にCをすっ飛ばして上のランクを付けられる場合もある、と言うことですか?」
「相談次第ではそうなりますね」
「とすると、このリストの中のどれくらいが収集可能になりますか?」
「失礼します」
リストを取りだしアーリャに手渡す、しばらく眺めた後、カリアに返した。
「Cランクでも半分以上は手に入りますが、Bだと全て揃うだろうと思います。幸い、今その素材を採取する依頼がいくつか入っておりますので」
「へえ、それは良いことを聞いた。良い結果が聞けることを祈っています」
苦笑するアーリャ。
「それで、相談があるのですが。もし、もしの話ですが、B以上の高ランクパーティーになった暁には、うちのギルドに登録して活躍してみるというのは如何ですか?」
「申し訳ありません。私たちは訳ありで世界を巡っておりますので。ありがたい申し出ではありますが、断らさせて頂きます」
「ふふっ、言ってみただけです。気にしないでください。あ!でも既に高ランクの評価は間違いないのでパーティー名は考えておいて下さいね!見たところまだパーティー名は無いみたいですので」
パーティー名?
確かに、カリアのパーティーとは名乗ったことはあるが、パーティー名は聞いたことはない。そういえば、あちらにいたときに読んだ異世界やファンタジーもので出てくるパーティーにはパーティーの名前があった気がする。
胸元でパーティーの印が小さく音を立てた。
「それって、必ず必要なものなの?」
満腹になって、食後、サンゲン街で買った果実水を飲んでいたキリコが首を傾けながら訊ねた。今まで必要なかったし、何よりギルドハンターでもないのに必要なのか、という事らしい。オレもそれには同意した。
「はい。フリーハンターの方はあまりパーティーランクの事を気にされないから知る機会は無いかもしれませんが、名前を持つと言うことはそれだけでギルドからの承認されているという事になります。例えば、『業炎の剣』や『スーパーノヴァ』という名前に聞き覚えは?」
「あります。確か業炎の剣は8人のパーティーで、皆剣士で、魔法効果のある武器を使い攻撃力は凄まじいとか」
と、うちのパーティーの情報屋のアウソが答える。
皆赤い鎧に赤の装飾がされた武器を持っているから目立つらしい。噂によるとルツァ狩りのスペシャリストとかいってたな。
「スーパーノヴァはなんか名前は聞いたことあるんすけど、正体不明の大型パーティーとだけしか…」
正直何しているのか知らないけど、いくつかのグループに別れて世界中に散らばっているというのだけ知ってる。リーダーは確か冒険家のノーブル人だったかな。
「はい。そんな感じに名声が世界の何処にでも届き、このパーティーは世界中のギルドから実力の伴ったハンター達と認められてますって証拠になるんです。なので、ギルドを通してくれれば宿などもすぐに見付けることも出来るし、情報開示の幅も広がるんです」
宿は別に良いとして、情報開示はおいしい。
それなら名前を決めても良い気がするが。
「どうする?師匠」
うーんと腕を組み考えるカリア。しばらくそうして、ようやく顔を上げた。
「分かった。決めようか。ただし、変な名前になら無いように皆でよーーーーーっく話し合って決めるよ」
そうして、オレ達は村にもう安全だと報告し、証拠の毛皮を提出してからサンゲン街に着くまでの間、うんうん唸りながらパーティーの名前を考えるのであった。