名前詐欺
光に透かすと、ただの紫ではなく赤と青の模様が表層と深層で巧妙に混じりあって出来た色のようで、見る場所によって色を細かく変化させる。
「すげーなそれ。それも魔具とか神具とかってやつ?」
「さぁ?でもなんか凄く魅了され…、あ!」
そういえばとスマホを起動させる。もしかしたら更新しているかもしれない。
一覧表を見ると、確かに更新されていた。
【慈悲の恵み】
あれ?なんかいい感じの名前。
【効果・望んだモノを即死させる。使用できるのは一度きり、術者にも相応の副作用あり】
「………………そうでもなかった」
「なにが?……うっわー、名前詐欺じゃねーか。全然慈悲も恵みもねーわ」
「でもこれ神具なんだよなぁ…、しかもさ、使用回数一度切りで、術者にも相応のダメージ喰らうって、相討ち用かよ。ぜーってー使わない。できることなら持ちたくもない」
けど、これを野放しにするわけにもいかない。
危険すぎる。
「あれだ、これは危険なので世界から没収しよう。そうしよう」
使うものが出てこないように。
そう思って腕輪の穴に填めようとしたが、填まらない。大きさが違う?
もう一度やるが無理だった。
玉に拒否されてる?
かといって剥き出しでこんなのを持ってる訳にもいかないし。
「どうしよう」
すると、玉が突然ボヤけ、消えた。
「え!!!?」
「吃驚したー。なに?どうかしたば?」
「玉がなくなった!!」
「マジで?」
「あんな危険なの放置してたらまずい!探せ探せ!」
「お、おう!」
慌てて二人して部屋中探したが見付からなかった。
これ誰かが間違って使用したらオレのせいになる?
だが、まさかこんなところに無いよなと風呂場を探し、偶然鏡に映った物を見て、まさかと思いながらネックレスを取り出した。
ネックレスに元々付いていた玉の色が、紫になっていた。
「そこかよッッ!!!!!」
「ライハうるさい…」
キリコにぼそりと怒られつつ、見付かって良かったと心から安堵したのであった。