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イヴァンはみた.1

イヴァンから見た主人公組

なんで俺が。


そう思いながら、イヴァンは目の前を歩く青年の背中を睨みながら後を付いていった。見たところ村人よりは冒険者寄りの格好をしているが、正直さっきの話で悪魔を撃退したなんて話は信じられない。


だいたい、火種蟲も悪魔も俺が生まれる前のもので、例えるならおとぎ話に出てくるような架空の生物のような認識だ。


それでもまだ現実と思えるのは、実際に魔物や恐ろしく強いルツァ種の魔物がいるからだ。冒険者や狩人ハンターはそういった害獣を狩って生計を立ててるが、正直根無し草のならず者くらいしかいない狩人にはいい印象を持っていない。

死亡率が高く、命を賭けにして生計を立てるなんて馬鹿馬鹿しい。


理由は、高ランク狩人ハンターならまだしも、大抵が低ランクで、森で小さい魔物を狩ってくるくらいだ。ごくたまに強い魔物を狩ってくるにしても、だいたいパーティの一人か二人が大怪我や死んでたりしている。割りに合わない。

それなのに狩人ハンターだからと酒屋で威張り散らしたり、突然腕比べを吹っ掛けてくる馬鹿しか見たことない。


高ランク狩人ハンターなんてものは、全体の約5~6%程。夢を見るのは勝手だが、だいたいがその世界の厳しさを我が身をもって知り挫折する奴ばかりだ。


恐らく目の前の青年も夢見てる奴の一人だろう。年齢的に狩人ハンターに成り立ての低ランク。仲間が高ランクで、それに便乗して手柄を自分のものと勘違いしているに違いない。そもそも話に出てきた悪魔の強さははっきり行って魔王幹部に近い位の強さだ。そんなものがすぐそばでどんぱちしていたとか、現実味が無さすぎる。


…いや、昨日地震は結構あったけど、決定的な証拠にはならない。


いや、待てよ。

こいつはさっき大金を軽く出してきたな。

普通90万カースなんて逆立ちしても気軽に出せるわけがない。


もしかして金持ちのボンボンか?


よく見てみると、身に付けてる装飾品はシンプルだが値打ちがありそうなものだ。

なるほど、金に物言わせて高ランク狩人ハンターを複数雇っているのか。それなら納得できる。じゃあ今回のチョスイナマコモドキは頭の固いエルトゥフに好印象を与えて何か取引するためとか。おっし、俺今日冴えてるぞ!


じゃあきっと馬車で来てるか。

なんだ、楽勝じゃねーか。

賃金倍だし、気楽に観光して、ちょちょいと助言して任せる。やべえ最高過ぎるだろ。ついてるわ。


それなら最低限の荷物じゃなくて、暇潰しの道具も持って来れば良かったな。


「キリコさーん!お待たせしました!」


青年が前方に向かって手を振った。


どれどれ。


イヴァンが視線を前に向けると、2頭の立派な駿馬を連れた美女がいた。エルトゥフの服装だが、耳は長くない。しかし、そんなことはどうでもいい。

ルビーの髪、切れ長の目にはエメラルドの瞳。スレンダーな体型の女性だ!!


「ライハ、遅いわよ。日がもうほとんど落ちちゃったじゃない」


「すみません。ちょっとごたついてしまって。その代わりにちゃんと手に入れて、しかも助っ人まで来てもらいました」


ライハと呼ばれた青年が謝る。

彼女にしてはこいつの腰が低い。さん付けだし。


待てよ。もしかしたら彼女、キリコが金持ちの娘か何かで、青年、ライハが従者とか?

あ、しっくり来たわ。これだ。


「え、助っ人?」


なにそれ、そう言いたげにキリコがこちらを見た。よーし、はじめが肝心だ。早速紳士対応へと切り替える。堅物だとか言われるがな、俺は損得勘定をきっちりしたい派なんだ。


「始めまして、レディー・キリコ。俺はイヴァンです。よろしくお願いいたします」


よし、決まった。


「あら、そう。よろしくね、イヴァン」


あれ?金持ちの娘にしては反応が違うな。

もっとこう、「始めまして、わたくしはキリコと申します」みたいな感じだと思ったが。

そういえば馬車もない。


首を捻った。

活発系の変わり者のお嬢様か?


「てか、ライハ。助っ人っていってもどうするのよ。駿馬は2頭しかいないのよ」


「えーと、二人乗りすれば良いかなと」


「急いでるのよ、速度が落ちるじゃない」


「レディー、俺は駿馬に乗れますよ」


「普通の駿馬ではどう頑張っても間に合わないわ」


はて?普通の駿馬とは?

そこでようやく駿馬を見ると目を見開いた。


なにこの駿馬。筋肉凄い。

てか、え?なんでこんな所に青毛がいるんだ?

性能が鰻登りで上昇するが、気象が荒く、隙を見て立場を逆転させてこようとする諸刃の剣とされる青毛の駿馬。え?このお嬢様これ乗りこなしてるの?


「仕方ない。あんた、責任持って二人乗りで頑張りなさい。アタシのじゃダメだけど、あんたの駿馬だったらきっといけるわ」


「えー、分かりましたよ」


ライハが青毛に近付き鼻面を撫でる。

おい、青毛は主人にすら牙を剥くんだぞ。咬まれたいのか?


しかし、予想に反して青毛は気持ち良さそうに目を細めていた。


「さっき全力で走らせたばかりで悪いんだけど。二人乗りでスピード落とさずにいけるか?」


ライハの問いに青毛は任せろと言わんばかりに鼻息を荒くし、尻尾を振った。え?お前のなの?


「イヴァンさん。悪いんですけど、オレ二人乗り初めてなので、しっかり掴まってて下さい。それとかなりの速度を出すので、揺れが酷くなります。酷だとは思いますが、着くまでは吐かないように頑張って下さい」


「はぁ」


何を大袈裟な。


馬酔いは子供の頃でもう慣れた。

駿馬を全力で走らせても揺れはたかが知れてる。

ま、いいか。


ついでだし、この従者の実力でも見るとしよう。

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