エルトゥフの森での攻防.15
悔しい。
必死に足を動かし森を駆ける。
ズキズキと火傷が疼くが、些細なことだ。それよりも悔しさが上回る。
あまりにも力の差がある。
ルツァにはそこそこ通じる強さが、悪魔相手だとこんなにも無力で弱い。
一つでも攻撃に当たれば大怪我になり、攻撃も効き目は薄い。
悔しい。
出来ることは少なく、歯痒い。
(力が欲しい)
仲間と肩を並べて戦えるほどの力が。
これほど、混ざり気の無い人の体に生まれたことを悔しく思ったことはない。
歯を食い縛りながらも前を見据え走る。
それでも、出来ることはある。
役目を全うするためにアウソはただ前を目指し走り続けた。
爆風によって吹っ飛ばされ、視界がぐるぐると回りながらも何とか途中で目に入った枝にしがみつき風が収まるのを待ちつつも前を見ると、広場に火口のようなものが出現していた。いや、あれはクレーターだ。
あちらに居たとき、何かの番組で見たやつとそっくりなクレーターに、先程まであのクレーター内に居たのだと思い、ゾッとした。
あれは無理だ。
死ぬ。
カリア達は何処だろうと探してみると、クレーター近くの木陰から顔を僅かに覗かせているのを見付けて、無事だったかと安心した。
『ふふ、ふははははははははっ!!!これは愉快だ!!まさかリュワンを仕留めるとはな!!人間にしてはやる方だ!!』
クレーターの中から声が聞こえる。
誰かいるのか?
しかし目を凝らしてみても、クレーター内が眩しくて見えない。辛うじて何かいるっていうのが分かるくらいだ。
その人物が無言で上半身だけ動かしている。
何をしているのか?
『おいこら!!出てこい!!せっかくこのリューシュ様がわざわざ出向いたんだぞ!!それともさっきの攻撃で全滅したか!?なんと人間は呆気ない!!』
探してたのか。
煽っているつもりなのだろう、声が芝居掛かっている。
出てこいと言われても、オレは今木のてっぺん近くにいるし、カリア達は既に移動したのか姿が見えない。
得たいの知れない相手はまず様子を見なければ。
「よいしょ」
いや、まずは此処から下りないとな。
そう思い、できるだけ音を立てずに下りた。




