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エルトゥフの森での攻防.2

『アア!?あんなお魚どもと俺様を一緒にするんじゃねーよ!!!』


アウソの声が聞こえていたらしく、羊豚鬼が怒り始めた。

てか、魚?魚が炎を使うのか?


『電撃こそが最強だァ!!!』


バリバリと杖から電気が空気中に放たれる。


「来るよ!」


「はい!!」


杖の先が光り、またしても光の矢が放たれた。

あの光の矢が雷ならばオレには効かない。


キリコは周りの木々を利用して豚鬼へと特攻を掛け、オレは光の矢をギリギリで回避しながら正面から特攻。

光の矢には掠めてすらないが、近くを通過する際に、オレの体に小さい電気が接触した感覚がした。


これは避けても光の矢との距離が近かったら感電するな。


「矢は余裕を持って避けてください!!」


後ろの二人にそう言い残し、短剣を構えて攻撃を仕掛けた。


突き出した短剣を羊豚鬼が杖を使って弾き返す。その後ろからキリコが回転し、勢いを乗せた蹴りを放つ。


だが、この羊豚鬼、丸いフォルムをしている割りには動きが早い。上体を倒してキリコの蹴りを回避すると、そのまま蹄付きの足を空中にいるキリコに向かって放った。


だが、それと同時にオレも羊豚鬼に蹴りを放っていた。


『!?』


もろに頭に蹴りを食らった羊豚鬼が体制を崩して派手に転がる。


目の前にはオレと同じく蹴り抜いた体制で着地を果たしたキリコ。どうやら反撃されるの覚悟で更に蹴りを放っていたらしい。

どうりで纏威を発動してないのに羊豚鬼が吹っ飛ぶように転がっていったと思ったよ。


『グフッ、普通の人間にしてはいい蹴りをしてるじゃねーか』


たが、やはり悪魔は防御力が高いらしい。


普通の人間ならば今ので気絶くらいするだろう。狩人(ハンター)やるような人間は知らんけどな。


丸いフォルムを弾ませるようにして立ち上がった羊豚鬼が杖を構える。先端のイカのような部分から、装飾の紐のようなものがいくつもほどけて垂れ下がっていた。


『だけど、所詮は人間だ!武器なしでどれ程粘れるかな!?』


ドンと、杖の底を強く地面に叩き付けると、途端短剣を持っている手がビリビリと激しく振動した。


見てみると短剣の金属部分に電気がまとわり付いていた。


痺れは平気だが、この電気が通っている時の爪楊枝の先でなぞられているような感覚が気になる。

キリコは手が痛かったらしく、それをすぐさま羊豚鬼に投げ付けた。


その突然のキリコの行動に羊豚鬼が少し驚いたような顔をした。

恐らくそのまま武器を取り落とす様を予想したのだろうが、残念ながらキリコは攻撃に使えるものは最後まで使う人だ。


それを合わせてオレも駆け出し、短剣を仕舞うと黒刀に手を滑らせた。


その視界の端に見慣れた影。


アウソが槍を構えて、キリコの短剣に合わせて動いていた。


そういえばアウソの槍は海龍の骨と牙を使用して作られているんだったか。人間の武器が全部通電すると思うなよ。


「補佐する!」


「おーけー!!」


羊豚鬼に投げ付けられた短剣が、一瞬動きが鈍り回避が間に合わず思わず盾にした杖に突き刺さった。


『しまっ!!?』


杖に突き刺さった短剣を見て何故か慌てる羊豚鬼。これはチャンスだと、身体能力向上で一気に距離を縮めると、黒刀で杖を持つ腕に向かって振るった。


黒刀から伝わる衝撃。


杖が回転しながら飛んでいき、一拍置いてアウソの槍が羊豚鬼の胴を袈裟斬りにした。














ハズだった。


しかし、何故かアウソの槍は宙を薙いだ。


「え!?」


後ろからキリコの驚きの声。


「??」


思わず後ろを振り返るとキリコが何故かカリアが持っているはずの石の投げナイフを手にしたまま困惑の表情を浮かべていた。


そしてカリアの姿がない。

どこに行った?


「おいおい、待てよ本物はどれだ?」


「はい?」


隣のアウソがこちらに槍を構えて、よく分からないことを言いだした。

待てアウソなんでオレに槍を構えている。


(本物?)


「!」


ハッとして後ろを振り返ると羊豚鬼が匍匐前進で逃げ出そうとしていた。


こいつ、なんかしたのか。

何したんだ?何かの魔法か?


頭をフル回転させて可能性のある魔法を引っ張り出す。


オレに効かないとなると何かの混乱させるやつだろう。一瞬光彩魔法かと思ったが、サズの光彩魔法はオレにもちゃんと色が変わって見えたのでその可能性は捨てた。

多分幻覚系だろうと目星をつけアウソに覚えたてのハズデ手語で状況を伝え、キリコにも伝えようとしたところ、真っ直ぐ羊豚鬼の所へと歩き出していた。


どうにかして自力で本物を探り当てたらしい。


さてと、と、匍匐前進で逃げている羊豚鬼を捕まえようとしたら、なんと上からカリアが降ってきて羊豚鬼をクッション代わりと言わんばかりの勢いで踏みつけた。


『グヘエ!!!』


「あ、当たったわ」


「なんだ、師匠か」


上を見ると、枝が揺れている。

どうやら先程まで木の上にいたようだ。


カリアの手には何かが大量に握られていた。


白い碁石くらいの大きさの丸い板に目玉模様が書かれている。


「ウンディーネが何かあるって教えてくれたんよ。多分、この幻覚の原因ね」


上からウンディーネが形を変えながらやって来た。


カリアが握り潰すと、軽く耳鳴りがして、キリコが「戻った」と声を漏らした。


『くそっ!くそっくそっ!!殺す!!てめえら殺す!!人間め!!!』


カリアの足元でもがく羊豚鬼。

特にこれ以上攻撃する手段を持たないのか、ひっきりなしにこちらに目を向けて殺す殺すと連呼している。


顔を見合わす。


此所で逃がせばきっと後で厄介なことになるだろう。


短剣を取り出し、電力を出来るだけ強くして刃に纏わせた。


敵ではあるが、出来るだけ一瞬でしよう。


殺意の籠る目を見ながら、オレは羊豚鬼の胴に刃を滑らせた。

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