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袖振り合うも何かの縁

今回は主人公勢の外側視点から始まります

クユーシーは困っていた。先程から精霊に必死に何かを訴えられているのだが、何せ精霊の言葉は集中しなければ聞き取れない上に、早口である。


「待って、待って。焦っているのは分かるけど、もっとゆっくり話してくれないとちゃんと聞き取ってあげれないよ」


そうクユーシーが話し掛けると、精霊はチカチカと点滅し、先程よりもゆっくりと話し始めた。


「…精霊と縁結びをした者が勘違いによって捕まっている?」


どういうことだろうか。

精霊と縁を結べるものは珍しい。精霊は気に入った相手じゃないと縁結びをしてくれない。それこそ力の強い者でもだ。


エルトゥフ族は自然崇拝、精霊と共に生きる者。エルトゥフ族でさえ精霊と縁を結ぶことができているのは長老とクユーシー合わせてたったの5人。声を聞けるものは7才までの子供以外では10人前後だ。


そんな貴重な人物ならば敬い、礼儀を尽くすはず。


それが勘違いによってにしても捕まるなどとはただ事ではない。


そしてこの精霊の焦り様。捕まっている人物は相当高位の精霊と縁結びをしているはずだ。


「わかった。すぐに行くよ」


クユーシーは仲間にここを離れることを伝えると精霊の後を追い掛けた。





長老の家へと着くと、何やら人だかりが出来ていた。クユーシーは近くの仲間に何があったのかと訊ねると、人間が竜の化身と悪魔を連れてやってきたのだという。


たまに来る人間なので、長老が竜の化身の方は許可をしたのだが、悪魔の方は長老も御付きの者も許可を出さずに揉めているらしい。


それを聞いてクユーシーは納得した。

こんな現状だ。悪魔を連れてきたとなれば敵が攻めてきたと思うだろう。現に今エルトゥフは悪魔との争いの最中なのだから。


「ですから、事情があってあんな魔力をしていますが、ちゃんと人間で害をなす人ではありません」


「信じられないな!あんな気配をさせておいて人間な訳がない!しかも少し近付いただけで悪寒が止まらなかったぞ!!」


御付きのクアブが顔を真っ赤にさせている。

クアブは頑固者だ。何よりもこの森を愛し、少しでも危険だと判断すれば譲らない。

長老も贈り物の酒と石飾りを見て考え込んでいたが、やはり悪魔で拒絶反応が出ている。


しかし、悪魔を連れ歩く人間とは。


一体どんな頭のおかしい奴なのだろうと、人間の方に視線を向けると、クユーシーの長い耳が上へと上がる。


聞き覚えのある声と気配。


それはドジをして拉致され奴隷になっていた時、マテラの牢屋で必死に皆を守ろうとしていた人間だった。


「クユーシー?」


仲間が名前を呼ぶが構わずに、クユーシーは小麦色の肌に明るい茶色の髪を持つ人間の前へと飛び出し、こう訊ねた。


「貴方、ひょっとしてアウソさんですか?」


その問いに人間は目を見開き、こちらを指差す。


「マテラの時のエルトゥフか!?」


「そうです!!あの時はお世話になりました!!」


感動の再会とばかりにアウソと握手した。

とするならば、きっともう一人の方もいるだろうと辺りを見回すが、いない。どうしたのだろう。


「そういえば、もう一方の黒髪のライハさんはどうしたんですか?」


「えっと、実はそのライハの事で揉めてて…」


「?」


どう言うことかと長老達を見ると、驚いた顔のまま固まっていた。









何とか長老達を説き伏せて牢屋に入れられているライハと竜の人を解放すべく向かったクユーシーだが、そこで衝撃的な光景を目にした。


「スカーー…」


寝ていた。二人とも。

とても牢屋に入れられてるとは思えないほどの爆睡っぷりである。


その光景に衝撃を受けていると、ウォルタリカ人の女性が苦笑いをした。


「あの子もだいぶ神経が図太くなってきたね」


「そりゃー、カリアさん達に鍛えられてますから」


何でもない事のように語る二人を見て、クユーシーは思った。

この人間達は只者ではない、と。

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