ネコ、出動
『葉っぱこっわ!』
「頑張れネコ!君ならできる!」
『危なかったら助けてよ!!』
恐る恐るネコが尖硬樹の葉や枝をすり抜けていく。やたらビクビクしながら進むが、あの悪魔の顔に突撃するよりも安全なはずだが。
「こういう時ネコ役に立つわね」
「最近あの子フードに入ってサボってたからね、調度いいんじゃないかしら」
「辛辣」
尖硬樹の檻の外で好き勝手言うオレ達の会話をネコが耳をこちらに向けて聞いている。
「ネコ、できる限り正確に描いて。イメージは送るから」
『うーい』
前、紙に書いて貰った魔方陣を見詰めながらネコにイメージを流し込む。ここ最近、ネコとの魔力融合で音や声を送ることができるなら、視界やイメージを送ることも出来るのではないかと駿馬に乗っている間こっそり修行していたのだ。
結果は大成功。
やはり融合期間が長かった為か、送られてくる情報はどれも鮮明で、実際に見たり聞いたりしているかのようだ。
これさえあれば、潜入捜査も楽々だろう。
「よ!」
穴から這い出た蛇を、ネコに襲い掛かる前に雷の矢で射止める。
オレの矢やキリコの矢にビクつきながらもネコは尾を使って完璧な魔方陣を描ききった。
そして対価の蛇の亡骸を設置し、ネコが魔力を流し込む所へと向かう。その際、オレはネコの魔力と完全融合し、ネコへと大量の魔力を流し込む。
どのくらい持っていかれるのか分からないが、少ないよりは多い方が良いだろうと、最低限の魔力だけ残して全部送った。
『せい!』
ペタン。
ネコの前足がターゲットマーカーに置かれると、融合箇所から大量の魔力が魔方陣に吸い取られる感覚を感じ、某有名掃除機並みの威力に足りるかとハラハラしたが、半分程で勢いが無くなり、亀裂は綺麗に塞がった。
『はふぅー、ただいまー』
「おかえり、お疲れさま」
めっちゃ撫ででやるとゴロゴロ喉を鳴らしてくれた。
それを聞いてオレも癒される。
ああ、アニマルセラピー万歳。
「次の亀裂は何処?」
カリアの問い掛けにキリコが癒され中のオレのポケットから勝手にスマホを取り出し操作。
そして地図に辿り着いた。
最近キリコは地図を見るからとスマホ貸せとねだるので、一回やり方を見せてやったら、いつのまにか使えるようになってきた。その内勝手に設定を変えられるかもしれない。
「ゲッ」
「?」
キリコが心底嫌そうな顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「エルトゥフの森…」
頭の中に監禁生活中不憫だったエルフに似た耳長の青年を思い出した。
そんなキリコをカリアが同情の眼差しで見詰めている。一体何があったのか。
「じゃあ、酒と石飾りを買っていかないといけんな」
アウソがブツブツと何が必要かを呟きながら指を折っている。
「交渉は任せた」
「任せてください」
「あ、あとライハ」
「はい?」
カリアがポンと肩に手を置き、真剣な顔をする。
「酷い目に遭いたくなかったらネコを隠して出来るだけ体の外に魔力を漏らすんじゃないよ、いい?」
そのマジなトーンの声に、オレとネコはただ黙って頷くくらいしかできなかった。