タイミングが悪かった
「カリアさん…」
まさか、カリアが倒れるなんて。
「師匠!」
キリコが駆けてきて、今だ名前を呼び続けているアウソの隣へ座ると、邪魔だと追い出した。
アウソは泣きそうな顔をしながらそこを退いた。
出来ることがない状態ではそこにいても邪魔なので退くしかないのは分かるが、なんだか可哀想だった。
もっとも、オレも出来ることがないので邪魔な存在だから少し離れたところで出来ることがないかを探しているが。
『カリア大丈夫か?』
ネコもフードから顔を出して不安そうにしている。
キリコは横になっていたカリアを仰向けに直し、傷跡を確かめる。見た目はただの切り傷に見えるが、出血が多い。
毒ではないと判断したキリコがすぐさま応急処置を施す。
「アウソ、何があったの?」
「水の中にいた時、なんとか悪魔をカリアさんと一緒に攻撃してたんだけど、何せ暗かったから攻撃を回避するのが遅れて悪魔の尾の刺で足に一発喰らっちまって…」
見ると、アウソの左脛に切り傷があり、そこから出血していた。まだ血が出てるけど、お前も手当てしないといけないんじゃないか?
「追撃してこようとした悪魔から逃すためにカリアさんが俺を蹴り飛ばして逃がしてくれたんさ。でも、やっぱり水の中だから上手く受け流せなくて腹に喰らった瞬間、水に雷が走って悪魔が悲鳴を上げて。…そういえばなんかカリアさんも小さい雷が走っていたような…」
「え!!?」
これまさかオレの雷が悪魔の尾を伝って感電した!?
血の気が下がっていく音がする。
「う…」
「!」
小さい呻き声が聞こえ、一斉にカリアを見る。
目を開けていた。
「あれ?悪魔は?」
「うわーん!!!カリアさーーーん!!!」
アウソが歓喜の声をあげ、キリコがホッとしたように息を吐く。
そしてオレは。
「すいませんでしたーーーーー!!!!!」
土下座をした。
事情を話すと、カリアは「そういうことか」と納得した。
「いや、謝らんくていいよ。これは完全にコッチの運が悪かっただけだから。それよりもみんな無事?怪我したんなら手当てしないとね」
しかも逆にみんなの怪我を労り始めた。
やばい、惚れるだろうが。
「いやー、にしても。こんな弱点があったとは…」
カリアがゆっくり起き、キリコに縫合された傷口を撫でながら言う。
「種族性もあって、皮膚が丈夫だから怪我もしにくいし治りやすいんだけど。まさか体内に直接攻撃を受けたら普通に効くとはね。これから気を付けよう」
なんだか弱点を見付けて嬉しそうにしていた。
「ん?そういやなんか忘れているような気がする」
気が抜けて、各々怪我の手当てをしていると、ふと悪魔の最後の言葉を思い出した。
ーー同胞の癖して人間の側にいるなんて!
あいつ、オレの方見て同胞とか言ってたな。
同胞ってことはあれか。オレを悪魔と間違えてるって事か。
立ち上がり、亀裂の近くまで行くと、口許に両手を添えて大きく息を吸った。
「オレは人間だあああああ!!!」
「何してんのお前」