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痛み分け

イメージ的には水全体が明るくなり、オレ達は死なない程度に痺れると思っていた。

が、現実は違った。


「熱っ!!?」


雷を放出すると水がキラキラと光を放ち、突然白い蒸気の様なものと、黒い液体とに分かれた。黒い液体は重力に従って落ち、蒸気は熱を持っており、あっという間に霧散した。

まるで水風船を針で突いて破裂した時ような分離の仕方に、驚きと熱さとに慌てながらも地面に何とか着地できた。


「あつつつつつ!!!熱い!!熱い!!」


叫びながら手で服に染み込んだ熱湯を叩く。

そんなことで冷めるわけではないが、何かしないと熱くて痛い。


「げほっ!くそ悪魔め!!てめえマジぶっ殺す!!!」


後ろからキリコの怒気と怒りの声。


「カリアさーーーん!!!」


前方からはアウソの叫び声。

何が起きているのか分からない。何せ水蒸気のせいで視界は白一色、音でしか状況を把握できないから焦る。悪魔はどうなった?そしてカリアはどうした!?


『おのれえええええ!!!!』


「うわ!!!?」


突然白い視界から悪魔が飛び出して襲い掛かってきた。鬼のような凄まじい顔をして、火傷の跡のある腕を伸ばし、鋭い爪を突き立てようとしてきた。

背中の触手は残らず焦げ尻尾も途中から切断され、体中は火傷と細かい切り傷、殴られた跡。まさに満身創痍状態。


『貴様のせいだ!!!貴様のせいで私がこんな目にあっているんだ!!!』


とんでもない言い掛かりである。


咄嗟に黒刀で爪を防ぐが、一撃でも入れてやるとか思っているのか一歩も引かず。ギチギチと黒刀が鳴る。悪魔とは言え、女なのになんて力だとか思ったりしたけど、そういえばキリコもカリアも女だったと思い出した。


「ぐ、うーーーっ!!」


なんならこの状態で雷を出してやろうか。


そう考えたとき、視界の横から黒い物が悪魔の顔目掛けて飛び掛かった。

ネコだった。


『シャーーーーッ!!』


ネコは悪魔の顔に飛び移ると、そのまま顔に爪を立てて思い切り引っ掻いた。


『ぎゃああああああ!!!!』


悪魔の大絶叫。

分かる。ネコの爪って痛いよな。


ネコは再びこちらに飛び移り、悪魔は顔に両手を当てて叫んでいた。

オレが悪魔に同情しかけていたその時、激怒したキリコが現れた。手には短剣。それを悪魔目掛けて振り下ろす。


『!!』


すんでで気付いた悪魔が咄嗟に腕を盾にした。

深々と右腕に突き刺さる刃。

キリコは短剣を離し、その場で回転をすると蹴りを放った。


腹に喰らった蹴りによって転がる悪魔。


『くそっ!』


悪魔は腹を押さえて立ち上がり、駆け出した。

その一瞬、オレを睨み付ける。


『同胞の癖して人間の側にいるなんて!絶対に、赦さない…。いつか痛い目に遭わせてやるから!』


悪魔の姿が消えた。

まるで掻き消えたかのように。


急いで近くまでいくと地面が裂けていた。

その中は一切の光もなく真っ暗で、黒い光がパチパチと弾けながら立ち上っている。


反転の呪いが作用しているらしく、体の疲れが取れていく。とすると、ここら辺はカリア達には毒のはず。


「そういえば、カリアさん!」


アウソのあの焦ったような声。

薄まりつつある煙の中から、二つの影を見付けた。


「カリアさん!カリアさん!」


アウソが必死に呼び掛けるが、カリアは返答しない。


「!」


急いで側まで行くと、オレは驚きに目を見開いく。

カリアが腹から血を流し倒れていた。



挿絵(By みてみん)

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