迷宮へようこそ~一方その頃②~
しばらく歩くと、広い空間に出た。天井から樹の根っこのようなものが垂れ下がっている。
上を見回して、特に道っぽいものもなかったので、スマホで写真を撮ってから先を行くことにした。
本当にここに来てからスマホの風景フォルダが潤うな。
スライドしていって、訂正する。
ネコしかいない。
~カリアside~
「まーた、懐かしい所に吐き出されたね」
カリアの目の前には大量の高危険ランクの魔物達。
こちらを警戒するように取り囲んでいるが、もう少ししたら襲い掛かってくるだろう。
「しかもまた割けてるし」
カリアの視界の先には地面に大きな裂け目が入っていた。
あの中は闇だ。
地面はなく、猛毒にまみれている。
師匠はアレを世界の亀裂と呼んでおり、その奥には混沌の魔物達が住む世界があるのだと言っていた。
「さて、と。さっさと片付けて何とかしないとね」
カリアは取り囲む魔物達を見ながら指を鳴らし始めた。
~アウソside~
アウソは項垂れていた。
軽くても方向音痴持ちのアウソはもう出られないかもしれないと不安に苛まれていた。
実は以前洞窟で同じような目に遭って、カリアが来てくれなかったら餓死しているところだった。
そんな経験をしているので、今回もそうなるのではないかと不安で仕方ないが、ここで項垂れていてもどうにもならないことは明らかだ。
「これで良いか」
行き違いにならないようにアウソは岩壁に捌くくらいしか使わない短剣で岩壁に矢印を彫りながら道なりに進むことにした。
~ネコside~
『まーた見失っちゃったい』
ネコは異様に狭い空間に放り出されていた。
臭いは土と何かの植物の臭い。
ネコは鼻が良いので、こんな暗闇のなかでも臭いと髭さえあれば何とか動ける。
まぁ、後ろからやられたら終わりだけど。
それにしてもライハは一体何処へ行ったのか。
フードに爪を引っ掻けていたのに、砂の力が思った以上に強くて引き剥がされてしまった。
ライハは飼い主の癖に本当に世話が焼けるから、今回もネコが見付けだしてやらないといけないのかと、ちょっとため息を吐いた。
魔力の繋がる先を辿ると、どうも近くに居るようなのだが、いかんせんネコのいる場所が場所なだけに満足に動けない。
また道が凄く狭くなっていて、ネコは体の形を変えながら前進する。
『お?』
急に足元が土とは違う物に変わった。
感触からして繊維質の何か。
臭いを嗅いでみて、ようやくそれが樹の根っこだとわかった。
空気の臭いも少し変わってきている。
もしかしたら土の中から出られるかもしれない。
ネコは足元の根っこを辿りながら、空気の臭いが変わっている場所へと歩いていった。