迷宮へようこそ~事の始まり~
オレはまた余計なことを言ってしまった。
頭を抱えて座り込んだ。
目の前に広がるのは光る何かの植物たち。
と、岩壁。
ここにはオレ以外誰もいない。
ネコもいない。
何かを話すときは考えてからと思っていたのに、それでも口から滑り出したのはもう戻らない。
「あー……、オレのバカ…」
事の始まりは数時間前に遡る。
「迷宮?潜ったことあるよ」
カリアが甘辛く煮込まれた鶏肉を食べながらそう言った。
「俺はないけど」
「あんたが弟子入りする前よ、でも懐かしいわねー、あの頃はよく潜って遊んでいたわ」
「それを毎回探すこっちの身になって欲しかったよ」
「もう潜ってないじゃない」
思い出し疲れた表情を見せるカリア。
カリアがそんな顔するくらい迷宮に潜っていたのか。
「でもなんで急に遺跡とか迷宮の事を聞いたば?」
「登録書更新して貰ったときに、Cランクから潜ることが可能になりましたって説明されたんです」
「ああ、なるほど」
納得したアウソ。
ネコが肉を食べながら聞き耳を立てている。
ネコ的にも迷宮は興味を引かれるものがあるのか。そういえば、惑いの洞窟でスゲースゲー言ってたしな。
「なに?行ってみたいの?」
「いえ、ちょっとどんなところなのか聞いてみただけで」
「師匠、訪ねるってことは興味があるってことよ。近くにあったわよね、よく行った迷宮」
キリコのテンションが上がり始めた。
なんだか不味い予感がする。
アウソも不味いって顔をしていた。
「百聞は一見にしかずっていうね。晴れて皆高ランクハンターになった記念に行ってみるか!」
そうして馬を走らせ、首都の迷宮近くの街へとやって来た。
「最大日数はどのくらいで?」
「二週間」
「では、このくらいになります」
馬を預り屋に引き渡し、お金を払った。
依頼で洞窟巡りや迷宮に潜るときは駿馬をこういう預り屋に預かってもらうのが一般的である。
洞窟や迷宮では平均三日、長くても二週間程掛かる場合がある。
そんな長時間、駿馬を宿屋に預かってもらえないし、森に放置したら餓死したり、食われたり、下手したら盗まれる事もある。
そんな心配が無いのがこの預り屋。
ギルドと協同運営しているらしく、しっかり仕事をしてくれる。
そこからは徒歩で危険区息の森を通り、三時間ほど歩けば、目的の迷宮、ショウジョウ迷宮へと辿り着いた。
地面が裂けてる。
それはもうパックリと。
辺りの樹に注連縄の様な物がたくさん取り付けられていて、何なのかと訊ねたら結界を張っているのだという。
結界といっても魔物避けで、虫に効くハーブ的な効果しかない。
それでも洞窟内に魔物独自の生態系が出来上がって迷宮と化している所にとっては、よほどの事が無い限りはこれで十分らしい。
「さーて、こっからは魔物の世界だ。気を抜かないように!」
一際大きな樹に取り付けられている鎖と縄を使って、洞窟内へと降りていった。
また戦闘シーン増えます