華宝国
港で売られていた草を買い、灰馬達に食べさせる。船旅中はウトウトしながらも食事をしていたらしいが、そこまで大量には食べさせられないので、皆船を降りたらここで食事をさせる。
「さーてと、ここから急がなくて凄い楽ね」
と伸びをした。
「そうなんですか?」
「嵐が来る前に海を渡れたからね。運が悪いと半月足止め」
確かにあの海域を抜けるのはきついかもしれない。
「海遊人くらいね、渡れるのは」
「海龍は気紛れで起こすからなぁ」
「船旅の時だけ迷惑よね」
しかしそれ以外では必要なものらしい。
嵐で海がかき混ぜられて栄養が浅瀬にまで上がれば魚が大量に捕れるし、森では余分な枝や葉を落として肥料になるし、落ちた果実は動物の餌に、畑は嵐に負けないようにと強く、美味しくなるのだそうだ。
食べ物が比較的安く売られる此処で減った非常食を補充し、街を出る。
今日は馬を飛ばさずに引いて一緒に歩いて移動した。船酔い覚まし為なのと、馬の体力回復の為だ。さすがに三日間眠りっぱなしだと体力が落ちる。
「体がまだ揺れている感じがする」
地震でもないのに足元がグラグラ。
「体が海の上の生活に慣れ始めていた証拠さ。波の揺れに勝手に体が合わせてくれるから、陸地だと逆に揺れないから体が変な感じになる。知ってるか?海遊人は陸地で“陸酔い”するんだぜ!」
「そうなの!?てかそんなんあるの!?」
「あまりにもヤバイときは酒飲んで誤魔化してる」
「大変だな」
酒で酔いを誤魔化すとか初めて聞いた。
「ロッソの二国は酒を良く飲むけど、それは凍らせないようによ」
と、唐突にカリアが参加。
ロッソの二国、ウォルタリカとローデアはロシア的な気候らしく、水を凍らせない為にアルコール度数を高めに、そして体を凍らせないようにする為に飲むらしい。しかも詳しく聞くと一年の3/4が雪残っているとか、オレ絶対そんなところ住めない。
夕方近く、染という街で早めに休むことになった。マテラともルキオとも違う茶色の壁、コンクリートかとも思ったけどそれとも違う。なんだろうこれ。
慣れてきた門番とのやり取りを終え、宿で休んだ。明日は移動がてら狩りをする予定だ。
「肉まんだ」
朝御飯に出てきた物にオレは大いに感動した。形が少し違うけど、その色、感触、味はまさしく肉まん。
「ライハ知ってんの?」
「元いた所にも同じのあったんですよ」
「世界が違うのに同じものがあるなんて面白いわね」
肉まんに唐辛子の粉を付けて食べる。ああ、この味だ。やっぱり美味いなぁ。
「前俺がお前のことイスティジアっぽいって言った事あったやっし」
「いつ言ったっけ?」
「あれよ、シルカん時」
「ああー」
言ってたな、確かに。
「俺の目は正しかったな!」
ドヤ顔するアウソにオレは「そだな」としか返せなかった。