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INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~  作者: 古嶺こいし
第一章 ホールデンにて
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メライダ・タゴス

 それから更に2日が経ち、内出血も薬のおかげでほぼ治り体を捻っても痛むことはなくなった。


 城ではあの時の模擬戦の噂が広まっているのか、時たま兵士が肩を叩いて「さすが勇者様」とか「見直した」とか言ってくるようになった。

 どうやら模擬戦によってシンゴと戦ったことでオレの評価が多少は上がったらしい。嬉しいことだ。


 で、その中の一人の兵士が打ち合いをしたいと言ってきた。

 もちろんウロさんとの約束があるので断ったのだが、しつこいのなんの。一階から塔の上の方にあるオレの部屋にまでついてきて扉越しでも打ち合いの催促をしてくる。


 打ち合いなら他の勇者にしてもらいたいのに、その野郎は聞かない。何故だ!?


「と言うことなんですが、ウロさんどうすればいいですか?」


 仕方がないので解呪の時にウロに相談をすることにした。


「……うーん、そうですね。その兵士は髪の色が緑ではなかったですか?」

「あ、はいそうです。緑色でした」

「わかりました。恐らくその兵士はタゴスでしょう」

「有名なんですか?」

「別の意味でね」


 別の意味?

 なんだか嫌な予感がして背中を汗が伝う。別の意味ってなんだ。


「なんといいますか、気に入った奴にはとことん付いてくるので有名なんです。確かノノハラ様に付いて回っていた時にはしつこいと言われ真剣で斬られてましたね。三回ほど」


 脳裏にそのイメージが余裕で再生される。

 短期な女軍師も怖いが、斬られても付いてくるのを止めない変態に血の気が下がっていく。


「……………なんで、オレ?」

「模擬戦で何か彼に惹かれるものがあったのではないでしょうか?しかし、困りましたね…、素直に聞く方なら良かったのですが…」


 ウロが腕を組んで考え始めてしまった。

 そんなに面倒な奴なのか。


「仕方がありません。ウコヨを監視につけますので、許可します。ライハ様にとっても対人の訓練と思って思いっきり殴ってきてください」

「ウロさん最後怖いです」








 と言うことで。


「勇者様!お付き合い頂き感謝します!あ、オレはメライダ・タゴスって言います!よろしくお願いいたします!」


 ウロが去ると同時に襲来してきた兵士のタゴスに条件付きで打ち合い許可を貰ったことを伝えたら、さっそく打ち合いをしたいと訓練所へと連れてこられた。

 もちろん条件のひとつであるウコヨ同伴。


「オレはライハです。よろしくお願いします。タゴスさん」

「はい!ライハ様!」


 笑顔が眩しい青年。見た目は完全体育会系だ。

 歳はオレとそこまで差はないんじゃないのだろうかという見た目だった。そもそもここの兵士はオレと近い歳の人も居るため、その可能性も高い。

 年齢云々は後で聞けばいいか。


「ウコヨ、頼む」

「はいよ。打ち合い、始め!」







 カンカンと乾いた木がぶつかり合う音が周囲に響く。

 打ち出され、防ぎ、フェイントを掛け、回避される。

 打ち合いと言うよりもチャンバラに近い感じのそれは、ここ最近解呪によって溜まっていたストレス発散にはもってこいのものだった。

 もちろんタゴスが手加減してくれているのは感じているし、オレが下手くそだって言うこともタゴスは感じているのかもしれないが、タゴスはひたすらに楽しそうに木剣を振るっていた。


 楽しい。久しぶりに心から思った。気付いたら、笑顔になっていた。

 少しずつ打ち合いのスピードが上がるが、それすら楽しさに変わり、ますます打ち合いのスピードが上がっていく。

 体が熱くなり、目の前に迫る木剣がやたらのろく感じるようになってきた頃には、この打ち合いに夢中になっていた。

 速く、速く、もっと速く!


 弧を描いて迫ってきた木剣を跳ね上げるようにして弾き飛ばして相手の喉元に突き付けた。


「うっ…、参った…参りましたー…」


 相手、タゴスが両手を挙げて降参宣言をした。

 途端に辺りの景色が戻り、大量の汗が吹き出す。

 お互い激しく息は切れ、立っているのがやっとなほど疲れている。だけど、心地いい疲労だ。楽しかった。


「打ち合い、おわり。お互い、礼」


 ウコヨの号令により少しタゴスと距離をとって頭を下げる。


 すぐさまタゴスが駆け寄り肩を盛大に叩いた。バシンと良い音がして、かなり痛い。タゴスは素晴らしい程の笑顔を向けてくる。


「やっぱりオレの目に狂いはなかった!あんたやっぱり最高だよ!また打ち合わせに付き合ってくれないか?」


 何が最高だったのかはよくわからないが、凄く楽しかったから断る理由がない。オレも笑顔を返した。


「オレも楽しかったです。ありがとう、タゴスさん。またよろしくお願いします」


 手を差し出すと、すぐに握り返された。

 こうして、この世界で同性の友達が出来たのだった。


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